オリンピック出場とリーグ活性化は別問題?

その後、川淵三郎氏を代表とする「JAPAN 2024 TASKFORCE」が発足、2016年9月にはBリーグ開幕と一気にタイムスケジュールが進みました。この間、半ばとばっちりのような形で出場停止処分を受けた女子バスケットボール日本代表が、2015年に行われたアジア選手権で2連覇を達成し、3大会ぶりとなるオリンピック出場権を獲得するなど、Bリーグの成功は、五輪出場権、日本代表の活性化とセットで語られてきました。

「プレイヤーズファースト」を掲げて、20年の停滞をぶち破った日本バスケットボール界ですが、横浜DeNAベイスターズ前社長である池田純氏は、国際試合、日本代表の活躍とBリーグ人気の定着と発展は別問題だと指摘します。

「開催国で迎える東京オリンピックに、バスケットボールの日本代表が出場できるのか? 特に1976年のモントリオール以来オリンピック出場を果たせていない男子代表がどうなるのかに注目が集まっています。たしかにオリンピック出場でバスケットボールという競技自体が盛り上がるとは思います。しかし、この問題とBリーグのこれからは分けて考えるべき問題だと思います」

 オリンピックのバスケットボール競技には“開催国枠”がありません。そのため、バスケットボール日本代表が、「自力で予選を勝ち抜き出場権を得ることができるのか?」「出場権を逃してしまったら、せっかく盛り上がったバスケットボール人気に水を差す結果にならないか?」と、注目が集まっているのです。

 しかし、世界の主要な競技を見ても、ナショナルチーム同士で争われる国際試合と、クラブが戦う国内リーグの人気は必ずしもイコールではありません。

「野球で考えてもらうとわかりやすいと思うのですが、日本のプロ野球は、侍ジャパンで国際試合にプロ選手が参加する以前から独自に盛り上がってきた歴史があります。国際試合とリーグは別物と考えた方がいいのではないでしょうか」

 サッカーでも、クラブ文化独自に根付き、ワールドカップ以上のバリューを生み出しているのはみなさんご存知の通りです。バスケットボール全体の注目度を上げるためには、オリンピックに代表される国際試合、日本代表の活躍は不可欠としながらも、池田氏は、「目的を明確にする」ことの大切さを強調します。

「要は目的を明確にすればいいと思うんです。オリンピックはオリンピックで活躍できるように日本代表が出場できるように頑張る。Bリーグを盛り上がるための努力や仕掛けはそれとは別次元のところでしっかりやる。『代表チームが勝てないから』とか『リーグ人気がいまいちだから』とか、後から言い訳をできないようにするためにも、ここは明確に分けて考えるべきではないでしょうか」

リーグビジネス成功のための3要素

事実、スポーツ大国アメリカでは、ナショナルチームの活躍いかんに関わらず、リーグはリーグでその人気を保ち、さらに盛り上げる方法を実践しています。

「MLSが誕生した当初、アメリカでサッカーって最初は大丈夫なの? と誰もが思ったはずです。アメリカ代表がW杯でもめぼしい活躍ができているわけではありませんでしたから。それが、デビッド・ベッカムがやってきて、素晴らしいサッカー場が広がって、各チームが地域密着を進めた結果、いまではアメリカのサッカー場は熱気に溢れています。サッカーのイメージがなかったアメリカですらサッカーの国に変わっていくんですよ」

・スター選手が生まれること
・アリーナ、スタジアムが素晴らしいものになること
・地域としっかり密着すること
 池田氏はこの3つが、リーグビジネス成功に必要な3要素だと言います。
「この3つを大きくすれば、リーグスポーツビジネスはかなり成功する確率が高くなります」
アメリカと日本は違う、Bリーグが独自アリーナを持つのは難しいという声もありますが、できない理由を挙げて思考停止するのではなく、できる方法を考えて実行することが大切だと池田氏は語ります。

「持てないじゃなくて、持てばいいという考えが大切ですよね。現実問題、3000人から5000人収容のアリーナを、Bリーグチームが行政の力を借りずいますぐ作るというのは現実的ではないかもしれません。でも、プロ野球の球団がそうしたように、指定管理も自分たちで抑えて、アリーナを良いものに成長させていく。個々にお金をかける発想になっていく。Jリーグもやがてそうなると思いますし、そうすることでリーグビジネス成功の3要素が徐々に満たされていくと思います」

二年目を迎えるBリーグが大切にしなければいけないのは、「オリンピックとは関係なくBリーグ自体をみんなが楽しめる文化にする」こと。そのためには、リーグビジネスの3要素の整備が必要不可欠。種蒔きのための大切な時期なのは間違いありません。

※この記事は文化放送「The News Masters TOKYO」(月~金 AM7:00~9:00)での池田純さんの発言を元に再構成したものです※

文化放送「The News Masters TOKYO」

VictorySportsNews編集部