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サッカーとは、戦術を「無効化」するスポーツである。五百蔵容×結城康平対談(3)

「ポジショナルプレー」「抽象化」をテーマにした前回・前々回の対談が大きな反響を頂戴した、五百蔵容(いほろい・ただし)さんと結城康平(ゆうき・こうへい)さんの対談。3回目となる今回のテーマは、「サッカーと戦術」です。サッカーより先にラグビーに触れた五百蔵さんにとって、サッカーとは「戦術で決まらない要素が多すぎるスポーツ」であるとのこと。どういうことなのでしょうか? さっそくご覧ください。(語り手:五百蔵容・結城康平 編集:澤山大輔[VICTORY編集部])

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コメント(5)

  • 45
    中野崇

    株式会社JARTA international 代表取締役/スポーツトレーナー 2017/10/20 22:12

    サッカーを「戦術で決まらない要素が多すぎるスポーツ」と位置づけ、「だからこそ戦術が重要になる」という考え方の元に話が展開される非常に面白い記事だと感じました。
    サッカーの不確定要素を見出し、不確定要素が多いからこそ戦術の構築によって確定できる範囲をできる限り増やそうとしてきた歴史がよく分かる。
    また、ラグビーなど他の競技と関連付けながら戦術の意義を分析している視点の重要性をこの記事によってより明確に確認できました。

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  • 9
    サワヤマ

    2017/10/19 12:49

    五百蔵さん @500zoo 結城康平さん @yuukikouheiさん対談、3回目です。ラグビーやバスケと比較し、サッカーがどれほど「戦術を無効化する」要素が強い競技か? 仮想フィールドだけでなくそれ以外の領域もポイントになるという上でみると、戦術史の発展がより味わい深く感じられると思います。

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  • 5
    ぱこぱこ・へめす

    サッカーブロガー 2017/10/20 14:09

    サッカーは“ミスのスポーツ”と評されることが多い。ミスとエラーの違いは興味深いが一旦置いておいて、足を使ってプレーする点やピッチがかなり広い点、少ない得点で勝敗が決する点などが不確定性(randomness)を生む。『サッカーマティクス』の著者である応用数学のDavid Sumputer教授は、得点の2/3はランダムであると述べている。すなわち、1試合で3点が入った場合、1点は強い(順位が高い)チームへ、後の2点はランダムに割り当てられる。この割合が有効であるかはわからないが、数学教授であるから何かしらのエビデンスがあると思う。多分簡単なポアソン分布を使ってプログラミングすれば、このような割合が出るだろう。

    ポアソン分布について簡単に補足すると、あまり頻繁に起こらない、独立した事象の回数に関する確率分布である。90分間で得点が決まりやすい特定の時間帯はないので独立と見なすことにするのだが、11tegen11のxGモデルによると、得点が入るとビハインドのチームが前掛かりになるためxGが高くなる(シュートが入りやすくなる)し、心理学でも何かしら興味深い研究があるのではないかと推測する。なおポアソン分布の例は、サッカーの得点や、馬から落ちて死んだ人数などである。ホームとアウェイそれぞれの1試合平均の得点と失点を使い、何千回や何万回とシュミレーションすれば、試合の勝敗予想やシーズン優勝予想などができる。賭けにおいて、最も基礎的かつ重要な手法だ。

    サッカーが不確定性の高いスポーツであるのに対して、素人なのでわからないが、ラグビーは不確定性が低いらしい。だからこそ2年前のワールドカップの凄みは格別である。また、バスケットボールも手で行うスポーツなのでサッカーほどランダムではないのではないだろうか。

    アリゴ・サッキの4-4-2のゾーンディフェンスとプレッシングにより、再現性が持ち込まれたことは興味深い。トレーニングの観点で考えれば、初期は守備について選択肢を複数共有しながら再現性を持ってプレーできるようになった。またその発展として、トランジションにおける再現性の問題に取り組まれている。カオスな状況をどのように組織しコントロールするのかが、最高峰の試合で勝敗の決するポイントとなる。

    さて、ポジショナルプレーの話が広がる中でバスケットボールやフットサルの用語であるゾーンアタックという言葉が見られた。もちろん定義をすり合わせなければならないが、個人的には局面の分類として考えるべきだと思う。そもそもトランジションの区切り目はどこなのか。これは各自の解釈に任せられている状況である。ネガティブトランジションでは、まずは攻撃を遅らせてバランスを整え、下がりながら、守備ブロックを組織し、定位置守備に移行する。反対にポジティブトランジションでは、カウンターアタック、速攻を狙い、定位置攻撃の局面へ移る。すなわち、DFライン、中盤の順に混沌度を認知することで局面を正しく理解できる。なお、トラッキングデータを用いて定性的かつ自動的に混沌度(DFやMFの部分混沌度)を測定し、トランジションと定位置局面を分けることも可能ではないかと思っている。

    ピルロのレジスタ化やボアテングなど、キック精度の高さは常に飛び道具として重宝されてきた。特に3シーズン目前半のペップバイエルンは、シャビ・アロンソやボアテングのロングフィードとドウグラス・コスタのアイソレーションによる質的優位で圧倒的な支配を見せた。コンテのイタリア代表もそうだが、良いポジショニングと結びつけば相手にとって非常に厄介な問題となる。

    ゾーンディフェンスやハイプレッシングが主流になる中で、もともとのサッキの4-4-2ではなく、4-3-3や4-2-3-1が多く使われているのは、中盤が間延びする時間帯がある中で、中盤を2枚の横並びでは耐えきれなく、枚数を増やして2列にしたいという考えもある。また、RBライプチヒの4-2-2-2や、アトレティコ・マドリーは中央圧縮という形で答えを提示している。

    最後の、“ポジショナルプレーはオープンフィールドとコンパクトフィールドの両方をあらかじめ含む原理原則となっている”という文言が面白い。マヌエル・リージョの「近いスペースでボールを回すことで、逆サイドの選手をフリーにすることがポジショナルプレーの原理だ」という言葉が示唆する通り、オープンとコンパクトを含むどころか、意図的にそのようなフィールドを作り出すと表現しても過言ではないだろう。

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