日本シリーズが終わると、プロ野球は一段落。各球団は、来季に向けたチーム編成が本格化する。FAで大物選手を獲得する球団、トレードで新戦力を補充する球団、外国人選手の動向を追う球団。そんなオフシーズンの話題のなかでもファンの興味をそそるのが、各選手の年俸交渉。FA選手がどのくらいの額で移籍するのか、活躍した選手がいくら上がるのか、あるいは期待はずれだった選手がいくら下がるのか。選手の“価値”がリアルに反映される年俸から、ファンは目が離せない。

しかし一方で、なぜプロ野球選手は年俸を公開されなければならないのか? と疑問に思う声があるのも事実。東京スポーツの記事によれば、それを嫌がっている選手も少なくないというのだが……。

「私もベイスターズの社長になったとき、最初に驚いたのはこの年俸が公開されるということでした。いちおうスポーツ紙などに載る数字は推定ということになっていますが、かなり正確です(笑)。もちろん自分の給料が公開されるわけですし、上がったときだけならともかく、下がったときも報道されますから、気分がよくない選手もいるでしょう。ただ“人事とお金の話”は興味ある人が多いというのも事実です。お金というわかりやすいモノサシで、社会との接点を持つのは、プロ野球の情報接触機会として考えれば、大きいだと思います。活躍すれば、普通のビジネスマンでは考えられないような高年俸をもらえる夢のある仕事です。あえてさらけだす仕組みがあるのもプロ野球が夢の世界ということを社会に知ってもらうためでもあるのでしょう」

球場では見ることのない選手の素顔が垣間見えるのも年俸交渉の楽しみ。メジャーに行く前の福留孝介(当時中日)は、“銭闘士”として数々の名言を残してきた。「年俸が上がらないから車が買えない」「井端が1回ゴネて3000万円上がるのはおかしい」「言葉がでません。あぜんとしたかな」。もっとも有名なのが2007年に発した「誠意は言葉ではなく金額」という言葉。この福留に負けない名言が生まれたのは、2010年。当時ソフトバンクのエースだった杉内俊哉が言い放った言葉だ。「携帯電話会社と同じ。新規加入の人には優しくて既存の人はそのまま」。2012年、大幅減俸となった細山田武史(元横浜)は、「これから食事は松屋か吉野家にする」と悲壮感たっぷりの言葉を残した。

「日本以上に個人情報に厳しいアメリカでもメジャーリーガーの年俸は公開されます。それが選手を見る基準にもなりますし、エンタテインメントとしての要素も持っている。日本の企業でも1000万円以上の社員の年俸を社内公開するところがあるそうですが、見合った仕事を求められる環境にもなりますし、若い人にとってはモチベーションにつながる部分があるとも聞きます。そういう企業があってもいいんじゃないでしょうか。日本だとお金の話をすると『あいつは金に汚い』と言う人たちがいますが、仕事をするうえではすごく大切なこと。プロ野球選手に限らず、もっとオープンに報酬について語り合ってもいいと思います」

選手にとって悲喜こもごもの年俸交渉だが、それもプロ野球選手の仕事の一部。がんばってたくさん稼いで、多くの人に夢を与えてほしいものだ。



[初代横浜DeNAベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>

取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部