2次予選は、4連敗からの8連勝。まさに奇跡のような成績でのワールドカップ出場となった日本代表。予選突破翌朝の各スポーツ紙は1面で大きく取り上げていたが、日本国内での盛り上がりは、いまひとつというのが正直なところだろう。

「スポーツファンなら八村塁選手や渡邊雄太選手など本場アメリカで活躍する選手の名前は耳にしたことがある人も多いと思います。今回の予選で活躍したBリーグの選手を日本のバスケットファン以外の一般の人がどれだけ知るようになっていくかが分かり易いベンチマークですね」

たしかにBリーグも頑張っているが、ファン層の広がりや、個々の選手の一般社会における認知度はまだまだと言わざるをえない。

「バスケットボールの競技人口は世界ナンバー1。サッカーよりも上です。しかし、とある調査によれば、日本では11位。一方、高校生のバスケの競技人口はもはや野球をしのぐ1位、2位なんです。東京オリンピックまでの2年間でこの世界との差をどのくらい埋めて社会現象化するほどの流れがつくれるか、世代を超えた国民的メジャースポーツになる礎をつくれるか。個人的にはバスケの日本での発展が楽しみですし、注目しています」

日本のサッカー界は、かつてワールドカップ出場が夢といわれ、現在のようにヨーロッパリーグでプレーする選手が何人も出てくるということは、想像すらできない時代もあった。しかしJリーグが発足し、ワールドカップへの出場を重ねることで、人気が定着していった。バスケットボールも同じような道を進むことができるのだろうか?

「最大のポイントになるのは、バスケファンを超えた一般社会、地域社会、日本中の一般生活者との“最大の接点”となりうる魅力的なアリーナを作れるかということになると思います。野球のメジャーリーグのチームは日本で開幕戦を行うことはありますが、さいたまスーパーアリーナでプレシーズンマッチを行うことはあっても、Bリーグの本拠地のアリーナでNBAのチームが試合をすることは現状はありません」

もちろん何度もオファーして、日本でのNBA興行を企画して模索した経緯もあるだろうが、成立しないのはNBAの試合をするに足るアリーナ、NBAが試合をしたいと思えるアリーナがないから、という話は業界でもよく耳にする話。さいたまスーパーアリーナは、バスケットボールを軸にしたアリーナではない。さらには、Bリーグのホームアリーナの平均収容人数は約4500人。一方NBAは約2万人。Bリーグの本拠地で、お客さんを最高に楽しませることのできる、非日常感溢れる空間づくりができるアリーナは、日本にはまだない。

「1万人規模のアリーナが増えないと観客動員も頭打ちにならざるをえず、現在のBリーグの年間売り上げ15億円の壁を超えて、それ以上に大きなコストを要する夢のアリーナへの設計フェーズからの主体的関与を含めて、人気を高めていくための投資にも、限界があるでしょう」

現在のBリーグのアリーナは、ほとんどが地域の体育館というのが実情。観客が楽しめるような施設になっているとはいえない。いま各地でアリーナ建設計画が持ち上がっている。しかし、自治体にまかせていたら、大きな体育館ができるだけではないだろうか。どうにかして民間が絡もう、自治体も民間の力を活用しようという動きがあるが、とはいえ、主体は官、自治体であることが多くの実態。主導権が官にある以上、地域住民への配慮も大きくなり、その根本の思想が体育館型になってしまう。

「ちゃんとファンが喜ぶアリーナをつくりたいなら、Bリーグのチームが主体的にやれるといいですよね。競技運営、要するに体育館としての機能整備は当然ですが、お客さんが喜ぶアリーナをどうつくるのか?というのが、体育館からアリーナへの抜本的転換の基本ですから。音響、照明、座席、物販や飲食のサービスなど、こだわるべきところはたくさんあります。NBAのアリーナは、ファンでなくても気分が上がり、非日常感が醸し出されるような仕掛けがたくさんあります。さらにはどう地域密着まで、公共的側面までバランスよく考えていけるか、結果きちんと“経営を成立させる”はプロスポーツの組織に必須の思想です」

バスケットボール界にとっては、人気獲得の千載一遇の好機。10年後、20年後にあの奇跡のワールドカップ出場があったから日本のバスケットボールが盛り上がったといえるような日がくることを祈る。



[初代横浜DeNAベイスターズ社長・池田純のスポーツ経営学]
<了>

取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部