ウッズは1997年4月の「マスターズ」を皮切りに、1990年代後半から2000年代後半にメジャー勝利を一気に積み上げ、ニクラウスの記録を抜くのは時間の問題と見られていた。ところが、2008年6月の「全米オープン」を最後にメジャー勝利からは遠ざかっていた。

その間、2008年のヒザの手術、2009年の不倫スキャンダル、2014年以降の度重なる腰の手術など、さまざまな苦難がウッズを襲った。

しかし、2018年9月の「ツアー選手権」で5年ぶりの復活優勝を遂げた後、2019年4月の「マスターズ」で11年ぶりのメジャー勝利を挙げたのだから、ニクラウスの記録更新への期待が再び高まってくることは間違いない。

ウッズが次に出場するメジャーは、スケジュール変更で5月16~19日に移動した「全米プロゴルフ選手権」。そして6月13~16日の「全米オープン」、7月18~21日の「全英オープン」と続く。もはや体調に何の不安もないように見えるウッズは、いずれも万全の状態で出場してくるだろう。

そして、「全米プロゴルフ選手権」開催コースのベスページステートパーク・ブラックコースと、「全米オープン」開催コースのペブルビーチゴルフリンクスで、ウッズは過去にメジャーを勝ったことがある。

ベスページで勝ったのは2002年6月の「全米オープン」。ウッズは2位に3打差をつけ、通算3アンダーでメジャー8勝目を挙げた。ペブルビーチで勝ったのは2000年6月の「全米オープン」。このときは何と2位に15打差をつける通算12アンダーでの圧勝劇だった。

過去の戦績を考えると、ウッズが「マスターズ」に続いて「全米プロゴルフ選手権」でもメジャーを連勝する可能性は十分にある。ウッズは2000年の「全米オープン」から2001年の「マスターズ」でメジャー4連勝を達成し、2002年の「マスターズ」と「全米オープン」、2006年の「全英オープン」と「全米プロゴルフ選手権」でもメジャーを連勝している。

【参考】タイガー・ウッズのプロ転向後の戦歴

ただ、ウッズが簡単にメジャーを連勝できるほど、今のPGAツアーは選手層が薄いわけでもない。「全米プロゴルフ選手権」では、次世代のエースであるメジャー3勝のジョーダン・スピースがキャリアグランドスラムを狙う。

「全米オープン」では、ウッズとともにPGAツアーの人気を担ってきたメジャー5勝のフィル・ミケルソンが、同じくキャリアグランドスラムに強い意欲を示す。

「全英オープン」は今年、メジャー4勝のロリー・マキロイの地元である北アイルランドのロイヤルポートラッシュゴルフクラブで68年ぶりに開催される。キャリアグランドスラムを狙った「マスターズ」では通算5アンダー21位タイに終わったマキロイだが、自国開催の「全英オープン」には相当な意気込みがあるだろう。

ウッズがメジャーを連勝するか、それともライバル選手たちが阻止するか、2019年のメジャー戦線は例年以上に盛り上がること必至だ。

【参考】PGAツアー通算勝利数ランキング

また、ウッズは「マスターズ」勝利でPGAツアー通算81勝目に到達した。サム・スニードが持つ最多勝利記録(82勝)の2019年中の記録更新が現実味を帯びてきた。そこで、ウッズの2018年のスケジュールを元に、2019年の出場試合を推測してみよう。

ウッズが2018年5月以降に出場したのは12試合。「ウェルズファーゴ選手権」、「プレーヤーズ選手権」、「メモリアル・トーナメント」、「全米オープン」、「クイッケン・ローンズ・ナショナル」、「全英オープン」、「WGC-ブリヂストン招待」、「全米プロゴルフ選手権」の8試合でレギュラーシーズンを終え、プレーオフ第1戦「ノーザントラスト」、第2戦「デル・テクノロジーズ選手権」、第3戦「BMW選手権」、最終戦「ツアー選手権」の4試合を戦い、「ツアー選手権」で復活優勝を遂げた。

だが、2019年は「ウェルズファーゴ選手権」をスキップ。また、「プレーヤーズ選手権」は日程が変更になり、3月に出場済み(30位タイ)。さらに、プレーオフシリーズも4試合制から3試合制に変更になったので、昨年よりも出場試合数が減ると思われる。

おそらく2019年5月以降の出場試合は、「全米プロゴルフ選手権」(5月16~19日)、「メモリアル・トーナメント」(5月30日~6月2日)、「全米オープン」(6月13~16日)、「全英オープン」(7月18~21日)、「WGC-フェデックス・セントジュード招待」(7月25~28日)、プレーオフ第1戦「ノーザントラスト」(8月8~11日)、第2戦「BMW選手権」(8月15~18日)、最終戦「ツアー選手権」(8月22~25日)の8試合がほぼ確定で、「全米オープン」と「全英オープン」の間にもう1試合出るかどうかといったところだろう。

その中で1勝すればスニードの記録に並び、2勝すればPGAツアー最多勝利記録を更新することになる。

そして、2019-2020シーズンのスケジュールはまだ発表されていないが、ウッズは日本開催の「ZOZO CHAMPIONSHIP」(10月24~27日)への出場を表明している。この試合がPGAツアー最多勝利記録達成試合になる可能性もありそうだ。

タイガー・ウッズの復活による、「ZOZO CHAMPIONSHIP」そして東京五輪への期待

2019年の「マスターズ」は、タイガー・ウッズの劇的な復活優勝で世界中が熱狂した。ウッズは2018年9月の「ツアー選手権」で5年ぶりの勝利を挙げていたとはいえ、メジャー優勝は2008年6月の「全米オープン」以来、10年以上遠ざかっており、本命視されていたわけではなかった。

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保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。