これまでの日本代表にはJリーグ発足後、松永成立、川口能活、楢崎正剛、川島永嗣ら絶対的な守護神が存在した。W杯には6大会連続で出場しているが、そのピッチに立ったGKは、わずかに3人だけ。初出場となった1998年フランス大会が川口、日韓共催の02年が楢崎、06年ドイツ大会では再び川口がポジションを奪い返した。10年南アフリカ大会では、川島が岡田武史監督に抜てきされ、昨夏のロシア大会まで3大会連続で日本のゴールマウスを任されてきた。

森保新体制となって実施された試合数は19で、出場したGKは権田修一、シュミット・ダニエル、東口順昭、大迫敬介、川島の5人だ。出場試合数を見ると、アジア・カップを主に守った権田が最多の8、シュミットが5、東口が3で続き、先の南米選手権で招集された川島が2、大迫敬が1となっている。

30歳の権田は、FC東京でプロのキャリアをスタートさせ10年に代表デビュー。以降、西野朗監督を除いてザッケローニ、ハリルホジッチら歴代監督の下、ほぼ毎年のように招集されてきたが、川島らの影に隠れ、キャップ数は今年のアジア・カップまで3試合と少なく、長く控えGKとして過ごしてきた。途中には、オーバートレーニング症候群も克服。準優勝したアジア・カップでは7試合のうち6試合を守ったが、足元の技術で不安を露呈した。GKからボールをつなぐことを求める森保監督のサッカーで、失点につながりかねないミスを多発。この大会後に、2度目の欧州挑戦となるポルトガルのポルティモネンセに移籍したが、代表での出番はまだ訪れていない。

米国人の父と日本人の母を持つシュミットは、身長197センチとこれまでの日本のGKと比べて、スケールが違う。16年に行われた日本代表候補のGK合宿では、当時J2の松本所属ながら、ハリルホジッチ監督に長身と将来性を買われて呼ばれた経歴を持ち、昨年11月に代表デビューを果たした27歳だ。当然、空中戦を得意とするほか、フィールドプレーヤーの経験もあって、足元の技術は高い。自らも課題に挙げるのがシュート対応だ。正しいポジションを取り続け、判断力がさらに備われば、長身はより生きる。3月からの親善試合では3試合続けて先発を任され、いずれも無失点。この7月にはベガルタ仙台からシントトロイデン(ベルギー)への移籍が決まった。「(ファンが)いずれ一番見たい選手になれるように、頑張りたい」と、野心も出てきた。

ガンバ大阪の東口も11年から代表の常連となっているが、キャップ数は8で権田と同様に出番には恵まれてこなかった。ガンバ大阪のジュニアユースでは、本田圭佑、家長昭博らと同期の33歳。ユース昇格はかなわず、進学した福井工業大ではサッカー部が解散してしまい、新潟経営大に転入してプロ入りを果たした苦労人だ。ガンバ大阪が14年に、J1、ナビスコ・カップ、天皇杯の国内3冠を遂げた際の立役者でもある。シュート対応に定評があり、至近距離のシュートに対しても素早い反応を見せるのが強みだ。

19歳の大迫敬は、将来が楽しみな新鋭。6月の南米選手権では、初戦のチリ戦で、川口、楢崎、川島も成し得なかった10代での代表デビューを果たす。高校3年でサンフレッチェ広島とプロ契約を結んだが、昨季までの出場はゼロ。ところが、今年2月に正GKだった林の負傷により、アジア・チャンピオンズリーグのプレーオフでプロデビューすると、J1でも開幕戦を任されて定位置を確保。わずか半年足らずで一気に日本代表まで登り詰めた。優しい語り口とは対照的に、ピッチに入れば物おじしない堂々としたプレーを見せる。積極的にクロスボールに出るなど守備範囲が広く、攻撃の起点となる抜群のキックの精度も持つ。「上の選手を蹴落とすじゃないですけど、そういう人達に危機感を与えられるようにしたい」との若者らしい心意気もいい。

川島の実績に関しては、もはや説明するまでもないだろう。昨夏のW杯ロシア大会以来、1年ぶりの復帰戦となった南米選手権のウルグアイ戦では、健在ぶりを示す好セーブを連発。「常に準備しているだけ。試合でも練習でも変わらない」との言葉通り、この1年所属チームでほぼ出番がなかったとは思えないさすがの活躍で、互いに準々決勝進出の懸かったエクアドルとの一戦でも、森保監督は大迫敬でなく川島を選んだ。この2試合で、キャップ数は90に到達したものの、もう36歳。3年後の年齢を考えると、4大会連続の出場が懸かるカタール大会は厳しいと考えるのが現実的だろう。

少し話はそれるが、世界に目を向けると、ブラジルのアリソンはエデルソンとのハイレベルな争いから定位置を確保して大きく飛躍。W杯ロシア大会で全試合に出場し、優勝した先の南米選手権では、ペルーとの決勝でPKにより喫した1失点のみという抜群の安定感を見せた。18年7月には、約95億円とも言われる移籍金でローマからリバプールへ加入。W杯後は、アリソンだけでなく、アリサバラガ(スペイン)、クルトワ(ベルギー)といった名手が高額で動くなど、近年はGKの価値が世界的に上がっている。日本のGKがこうした中に割って入る日は、いつか来るだろうか。

さて、日本の話に戻そう。森保監督が就任してから呼んできた中心的な3人を見ると、権田、東口とも厳しいW杯予選のほとんどをベンチで過ごしてきており、シュミットにとっては初めての経験になる。一つしかポジションのないGKには、場数を踏むことが何よりも必要。緊迫した試合でもまれることで、ぐっと成長する。大迫敬を加えたこの4人から、川島の後継者となる日本の正GKか現れるのか。それとも、川島がまだ君臨し続けるのか、あるいは新たな新星が登場するのか。今後も続くポジション争いから、目が離せない。


VictorySportsNews編集部