なぜ、池田氏は“ストロングスタイル”で戦い続けるのか。その理由を尋ねると、思いがけない答えが返ってきた。

 「戦うのは嫌いです」

連載第1回では、実業家の堀江貴文氏が「戦い方の教科書」と本著を言い表していることを紹介したばかり。前提が覆されかねない言葉だが、実はそこには深い意味がある。

「私は別に何に対しても、かみついているわけではないんです。以前、あるイベントで『池田さんは、いくつも役職を辞めていますよね』と言われたこともあります。それを聞いて、全く本質を突いていない指摘だなと思ったものです。私が何かを辞めるときは、決断に至る共通した3つの理由があります。1つ目は、最初の約束と違うとき。2つ目は、『変えたいんです』と相手が自ら頼んできたにも関わらず、実は本当は変わりたくないとき。3つ目は、保身や忖度で同じ方向を見られなくなったとき。そういう時は、私の“役割”を全うできない肩書きだけの名誉職は不要ですし、自分自身にとっても時間の無駄なので、結論、世間をお騒がせするだけになるのできっぱり辞めることにしています」

ラグビー、大学スポーツなど、本著にはベイスターズの球団社長を退任した後の2年半で、池田氏が経験してきた「ファクト(事実)」が描かれている。「私はもめたいわけでも、戦いたいわけでもありません。戦えば疲れるし、嫌われるし、傷つくし、孤独になる。“戦うヤツ”みたいに思われるのは心外です。確かに昔から喧嘩っ早いところはありますけど(笑)、怒るのは理不尽な時だけ。戦わざるを得ない理由がある時だけです。損もしますけど、仕方ない。戦えば、すべての真実を知ることができる」。その言葉の意味は、例えば「内規での処分」という内向きな保身、忖度に絶望し、日本ラグビー協会特任理事の職を辞した『スクール・ウォーズ事件』の例を本著で読めば、多くの人が納得するだろう。

「処分したことにして、隠そうとする。やり方がずるいんです。『力を貸してください』と頼まれたから引き受けたのに、しがらみ、保身の中で私の既成概念を超えた発想力や発信力に恐れをなし、段々と自分の立場が危うくなると、最初に言っていたこととすっかり変わってしまう。本当に『変わる』ということを理解していないのでしょう。覚悟が足りないんです。波風が立って、自分に影響が出てくると逃げ出してしまう。少なくとも私が関わったスポーツ界では、延々とその繰り返しでした。だったら私を呼ばなければいいのに、と思ってしまいます」

しかし、池田氏はそんな権力争いの世界で戦うために“ストロングスタイル”を取りたいわけではなく「目標のため、変わるために戦う」ことを何よりの是と考えている。実際、ベイスターズでは絶対に不可能と言われた本拠地・横浜スタジアムの友好的TOB(株式公開買付)による球団と球場の一体運営を実現するため、父親と息子以上に歳の離れた”ハマスタのドン“こと横浜スタジアム元社長の鶴岡博氏(故人)と辛抱強く信頼関係を築き、横浜市など行政との話し合いを進めるなど、長期的な視野を持った“調整”で結果を出してきた実績もある。

「実は“調整”は得意なんですよ。しっかりと根回しして、時間をかけて調整することで改革、変革ができるなら、それも厭いません。目的があるなら、それはうまくやります。仕事ですから。そういう時に、協調性を重んじたり、波風立てないようにしたりは、当然できます。目標のため、社会に意味のあることを為すためなら何でもします。しかし、戦う相手が“外”ではなく“中”なことがこの2年半、スポーツ界ではあまりにも多かった。そのための一つのスタイルが“ストロングスタイル”ということです」

一方で、ベイスターズでも“ストロングスタイル”でいくべき時は、迷いなくその姿勢を貫いた。「言わないと変わらないのも事実です。言うべきことを言って初めて組織に危機感が生まれるものです」。最近、ディズニーランドを訪れたという池田氏は、エンターテインメントのトップに君臨しながら常に演出などが変わり続ける姿勢に感銘を受けたという。その“生みの親”ウォルト・ディズニーも「ディズニーランドが完成することはない。世の中に想像力がある限り進化し続けるだろう」と、現状に満足しないことの重要性を説いている。

「私は、変えるためだけに戦います。戦うべき時に戦わない人間は最低だと思うし、戦うことは駄目という風潮には辟易します。体制になびいて、うまくやる。波風を立てない。そればかりでは、すごく陰気臭い社会になってしまいますよ」

日本のスポーツ界、さらには日本の行く末を本気で憂う池田氏。そこに、この男が“ストロングスタイル”で戦う理由がある。

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横浜ストロングスタイル制作秘話。第一回「タイトルに込めた思い」

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VictorySportsNews編集部