すでに『リーグ・オブ・レジェンド』のジャパンリーグLJLでは無観客試合を行っており、モンストプロツアーファイナルも無観客試合でした。大阪府に新しく完成したeスポーツ専用施設REDEEのお披露目イベントとして予定されていたウェルプレイドフェスは延期と言う結果になりました。少なからず影響が出ていると言えるでしょう。

■興行としてのeスポーツイベント

 eスポーツイベントは、ここ1年くらいでようやく興行として成立しつつある状況で、音楽ライブやスポーツ、演劇などと比べると、興行やチケット収益による収入の比率が高くありません。また、音楽ライブや演劇などのように、会場で観戦すること自体に意味があるものではなく、インターネットにおける動画配信などである程度対応できるのもeスポーツの利点だと言えます。これはリアルスポーツでも同じですが、試合の内容だけを見たいのであれば、現場よりもテレビや動画配信の方がわかりやすいという側面があるからです。

 さらにeスポーツでは、有料チケットによる観戦を行っているイベントはまだ限られており、有料イベントだとしても、収益を目的としたものではないものもあります。例えば、モンストプロツアーでは、観戦するには有料チケットが必要ですが、観戦グッズによるリターンがあるので、チケット代を収益としてそれほど見込んではないと言えます。

 IPホルダーが運営しているeスポーツイベントの多くの場合は、eスポーツで扱われるゲームタイトルの販促として見られていることも多く、イベント自体に収益を考えていないところもあります。多くの人に周知してもらうと言う意味では、動画配信でもその役割を担えるわけです。
 とは言っても、最近は、IPホルダーから許諾を得て、運営会社によるeスポーツイベントを開催しているところもあります。

 例えば、LJLは運営を吉本興業が行っており、会場はヨシモト∞ホールを使用しています。チケット収入がなくなると大きな痛手になることは間違いありません。吉本興業の劇場の多くは現在休館しているので、無観客試合でも開催しているだけマシとの見方もありますが。
 どのみち、有料チケットでの観戦が根付きつつある現状において、無観客試合や大会の延期、中止は大きなマイナスであることは間違いありません。動画配信で対応できるのであれば、それで問題ないかと言うと、やはりそうではないと考えます。せっかく、IPホルダー以外の運営会社がイベントとして収益を上げ始めている最中、IPホルダーの大会だけしか成り立たないとなると、大会数も減りますし、健全なイベント興行がなりたたなくなる可能性もあります。

 そこでeスポーツの利点を活かした上で、イベント運営が成り立つ施策を考えていく必要があります。

■いかに動画配信でマネタイズするか

 ひとつの場所に大人数を集められない以上、動画配信に頼ることは変わらないですが、いかに動画配信によってマネタイズするかがキーポイントとなります。スポンサーによる広告を入れることはもちろん、ペイパービュー形式で有料動画として配信することも必要かもしれません。動画配信によって視聴料を徴収することは、他の動画でも行われてきていますが、いかにeスポーツイベントの配信で払って貰えるかが重要となります。
 会場での有料チケットがようやく実現し始めたばかりの現状で、単純に動画視聴を有料化するというのはかなり難しいと思われます。

 これまで日本人は、元々無料のものに料金を払いたがらないと言われていましたが、動画配信サイトの投げ銭(スーパーチャットやビッツ)、月額料金(サブスクリプション)をする人が多々現れているので、やり方によってはできなくもない事案ではないでしょうか。
 単純に視聴チケットとなると二の足を踏む人が出るかも知れませんが、大相撲の懸賞金のように、特定のチームや選手にスーパーチャットをすることで、その半分がチームや選手に行き渡り、半分は運営や納税順当金に充てられるようにするなど、応援するチームに援助することができるようになれば、ファンはチームを直接支援できるので、入場料金や視聴料金よりもお金を払いやすくなると思われます。
 このあたりは、まだ動画配信サイトのシステム的に可能になっておらず、イベント運営がどうこうできるレベルではありません。動画配信サイトが、オンライン配信のみの無観客試合でもマネタイズできるシステムを提案してくることが必要になります。

 モンストプロツアーでは、Googleの特別協賛により、Google Playで対戦の勝敗予想が行えました。勝敗予想が当たるとポイントが貰え、その大会で稼 いだ総ポイント数がベスト100以内に入るとGoogle Playポイントが貰えると言う仕組みです。
トーナメントなので、組み合わせが分かっているのは、1回戦目だけです。8チーム出場の場合は、最初の4試合の組み合わせしかわからないので、準決勝、決勝の勝敗予想をする場合は、リアルタイムで試合を観ていないと、参加しにくいわけです。最初に予想するだけして、試合終了後に結果を見るだけで済むtotoとは違い、試合を見続けると言う意味では良いシステムです。視聴者が多くなれば、それだけ広告の効果も大きくなりますし、視聴者としてみれば、試合を楽しみながら賞品やポイントを獲得できるチャンスとなり、どちらにも利点があるわけです。
 さらに、もらったポイントから、選手やチームに謝礼としてスーパーチャットやビッツができ、運営にも何割か還元されるようになれば、オンライン大会でも収益は得られるようになるはずです。

■スポーツ観戦ビジネスの転換

 スポーツ観戦はテレビの普及によって、ライブ観戦からテレビ中継がメインとなり、テレビ放映していないスポーツとしているスポーツの格差が大きくなっていました。2000年代に入りプロ野球を中心にスポーツ中継が激減すると、ライブ観戦が増え、観客動員数は右肩上がりになっています。
 そして今回の新型コロナウイルスの影響で、ライブ観戦ができなくなることの対策として、動画配信への転換がくる可能性はあります。ただ、現状では従来のテレビ放映のようにCMスポンサーによる収益を目指すのも難しく、ライブ観戦のようなチケット収益も難しくなります。

 動画配信ならではの新たなエコシステムが構築できるかどうかで、今後のスポーツ観戦ビジネス市場の縮小拡大に関わってくるのではないでしょうか。

岡安 学

著者プロフィール 岡安 学