『Shadowverse』とはどんなeスポーツなのか?

 まずは『Shadowverse』について、簡単に解説をします。

 eスポーツのジャンルは、格闘ゲームやシューティングゲーム、デジタルカードゲーム、MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)など様々ですが、『Shadowverse』は、ジャンルとしてはデジタルカードゲームに位置します。漫画やゲームに詳しい方は『遊戯王』や『ポケモンカード』のような1対1の対戦型カードゲームを想像すると良いでしょう。

 プレイヤーは自分のオリジナルのデッキを用意して、対戦中はそれらのカードを使い、攻撃したり防御したりします。使えるカード(選択肢となるカード)はどのプレイヤーも同じため、カード自体の強さでは優劣はつきません。論理的思考力などの地頭の良さも必要ですが、準備と練習にどれだけの力を注ぎ込んだかが重要です。プレイヤーの知識量と思考力で勝負が決するゲームといえるでしょう。

ファンミーティングの会場

ファンミーティングの会場

 これがeスポーツのファンミーティング会場の風景です。

 別室では優勝賞金1,000万円を賭けた決勝トーナメントが開催されており、多くの観客で熱気に溢れていますが、こちらもそれ以上の大盛況です。

会場の若者たちから得られた意見

 ファンミーティングに来ていた方々に話を伺ったところ、様々な意見を聞くことができました。筆者が特にポイントだと感じた、3つの回答を紹介します。

ゲームをプレイしていない人も参加

Aさん「昔はプレイしていましたが、今はプレイしていません。選手の皆さんはとてもやさしいです。もう『Shadowverse』をやっていない自分に対しても、来てくれてありがとうって言ってくれます。それだけでうれしいです」

 実際、ファンミーティングに参加していた方々のほぼ全員が『Shadowverse』をプレイしていました。やはりスマホ1つで手軽にプレイできるのは大きな利点です。憧れの選手と同じようなプレイを体験できるのは、カードゲームのeスポーツの魅力といえるでしょう。

 ただ、Aさんの回答のように、過去にはプレイしていたが、今はプレイしておらず、ファンとして応援に徹している方もいました。

 今回のファンミーティングには、「ゲームをやっていない人たち」を排除するような排他的な雰囲気は一切なく、気軽に交流できるオープンな環境作りがされていました。この辺りは、野球やサッカーのイベントと同様であると感じました。

配信での選手の言葉に惹かれて

Bさん「NORTHEPTIONのリグゼ選手を応援しています。ずっと『Shadowverse』を頑張っている選手なんです。彼の動画とかも面白くて、『Shadowverse』に関する技術や豆知識をたくさん喋ってくれるんです。試合に出る時って隠しておきたい情報もあるし、試合が近づくにつれて追い詰められていくこともあるはずなのに。そういう中でも配信してくれる。負けても次は絶対負けないって言ってくれるし、そういうところがすごいなって尊敬しています」

 現代において、動画配信サービス(YouTubeやTwitchなど)での生配信活動は、eスポーツ選手にとっては、重要なプロ活動の1つです。彼らの配信活動は、収益を上げるのが目的というだけではなく、ファンとのエンゲージメントを高めることに繋がっています。

 Bさんの回答のように、生配信での発言は、事務所や所属チームが代弁しているわけでない、“選手自身の言葉”としてファンに届きます。配信を通して、選手とファンが直接繋がるのが、eスポーツの魅力の1つといえます。

 野球やサッカーなど、フィジカルスポーツの現役選手が自身のチャンネルで、自身の言葉を発信することは稀であるため、この点はeスポーツならではの文化なのかもしれません。

人間ドラマとしての楽しみ方

Cさん「全チームが好きなので、全チームのミーティングを回るつもりで来ました。1つのチームを応援するのもいいんですけど、私はプロ同士のライバル関係とか元チームメイト同士の対決とかが好きなんです。人間関係を追いかけるのが好きです。だから全員を推すようにしています」

 Cさんのように、友情やライバル関係など、人間関係に魅力を感じている方もいました。

 カードゲーム、格闘ゲーム、パズルゲームは、1対1の対戦ゲームなので、いわゆる“因縁の対決”といった、熱い展開になりやすいeスポーツといえます。フィジカルスポーツにおいては、卓球やテニス、格闘技でも同様でしょう。野球などのチームスポーツにおいても、エースのピッチャーと4番バッターの熱い対決には注目が集まります。

 また『Shadowverse』においては、様々な形式の大会が開かれているため、チーム内での選手同士の対決も見られます。最近はWBCで日本代表を優勝に導いた、大谷翔平選手とヌートバー選手がそれぞれの所属チームに戻って、直接対決したのも大きなニュースとなりました。eスポーツのファンの人たちは、こうした人間ドラマとしての魅力も感じているようです。

総括

 身も蓋もない結論になりますが、「eスポーツとフィジカルスポーツには、何も違いは無い」と取材を通して感じました。

 素晴らしいプレイ、素晴らしいメッセージ、これらはeスポーツであろうとフィジカルスポーツであろうと変わらず、ファンに勇気を与えます。

 また人間ドラマとしての側面も忘れてはなりません。
・一つのことに、一途に頑張る姿
・夢破れ、儚く散る姿
・それでも、前を向き、進んでいく姿

 これら3つの要素は「人が人を応援したくなる」原理原則として、いつの時代もどの分野でも、普遍的なものといえます。甲子園や春の選抜で得られる感動や興奮はeスポーツにもあるのです。


小川翔太

1987年生まれ。会社経営者。システムエンジニア→人材コンサルタントを経て(趣味のカードゲームで世界大会に出場したことをきっかけに脱サラ)2017年にメディア業界に飛び込む。5年に渡りeスポーツの取材を続け、これまで総勢100名以上のプロゲーマー&ゲーム関係者にインタビューしている。