東京都は休業を要請する運動施設として、体育館、水泳場、ボウリング場、スポーツクラブなどを挙げた。ゴルフ練習場も当初、休業要請施設と見られていたが、東京都総合防災部は「屋外のゴルフ練習場は要請の対象には当たらない」という見解を示した。

これにより、屋外のゴルフ練習場は感染拡大を防止するため3つの密(密閉、密集、密接)を避けて営業を行っている施設が多い。

ゴルフ場も屋外施設のため休業要請の対象にはなっておらず、多くのゴルフ場が感染予防対策を施して営業を行っている。

ゴルフ場運営大手のアコーディア・ゴルフは、宮城県、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、岐阜県、大阪府、兵庫県、山口県、福岡県、大分県などのゴルフ場で、原則としてレストラン、ロッカー、浴室を利用しないスループレー営業を行っているという。

PGMグループも感染予防対策として「スループレーとハーフ休憩を設けたプレーの選択制」、「レストランの営業時間短縮(ランチのみの営業)」、「お客様主催のコンペにおけるパーティの受付中止」、「浴室利用の制限(シャワーのみ利用可能)」、「アーリーバード(日の出スタート)、ナイタープレーの営業中止」を実施している。

これらの営業スタイル変更により、通常であれば春のコンペシーズンが始まる時期だが、コンペの受け入れは行われておらず、友人・知人とのプライベートラウンドが主体となっているようだ。

ただ、プライベートなラウンドであっても、PGMグループは推奨する行動スタイルとして、「お客様同士の間隔は2メートル以上の距離確保」、「カート利用はできるだけ密接を避ける」、「ピンは抜かずにワングリップOKのプレーをお勧め」、「バンカーレーキは使用せず、足で簡単に均していただくことをお勧め」などとしている。

ゴルフ場は屋外の広大な敷地に展開しており、密閉と密集は避けることができる。あとは密接さえ避ければ安全にプレーできるということだろう。

■ゴルフ場やゴルフ練習場には行きたいが・・悩めるゴルファー

緊急事態宣言によって不要不急の外出自粛が求められている状況ではあるが、外出を控えることによって運動不足になり、メンタルヘルスにも害が及ぶ可能性が懸念されており、感染のリスクがない環境での運動は行っても問題ないとされている。

したがって、休業要請の対象になっていないゴルフ場やゴルフ練習場に行き、運動不足解消のための運動を行うことも、基本的には何の問題もないはずだ。

ただ、現実問題として今はゴルフ場やゴルフ練習場に行きづらいというゴルファーの声も聞こえてくる。ある経営者は次のように語る。

「都道府県の最高責任者が外出自粛を要請し、会社もそれに協力する形でテレワークなどを認めているわけですから、それにもかかわらず会社の責任者が週末にゴルフをやるというのはまずいと思っています」

週末のゴルフ場に足を運ぶゴルファーの中には、会社の経営に携わるポジションに就いている人も多い。ゴルフ場に行ったことを内緒にしようと思っても、今の季節はゴルフにうってつけの晴天であればあるほど、グローブをはめた手だけが白くなり、日焼け止めを塗っても隠し切れない。白い手を見られたら、白い目を向けられる可能性があるというのだ。

また、一緒にラウンドする相手は、プライベートな友人・知人であっても別の会社には勤めている会社員なのだ。

どれだけ入念な感染予防対策を施しても、ゴルフ場で新型コロナウイルスに感染するリスクはゼロとは言えない。2月に茨城県のゴルフ場を利用したゴルファーが新型コロナウイルスに感染していたことが判明したり、3月に山口県のゴルフ場で一緒にプレーした知人同士の感染が確認されたりしている。

万が一、自分が新型コロナウイルスに感染した場合、同伴プレーヤーは濃厚接触者と判断される可能性が高い。そうなると、濃厚接触者は14日間の自宅待機と健康状態観察を余儀なくされる。そのリスクまで承知してゴルフに誘える友人・知人はそれほど多くない。したがって、緊急事態措置の実施期間となっている5月6日まではゴルフを自粛しようという流れになっている。

ゴルフ場には行けなくても、せめてゴルフ練習場でボールを打ちたいところだが、こちらも東京都内では別の問題が生じている。

東京五輪の開催にともなって明治神宮外苑ゴルフ練習場(新宿区)が1月1日から営業を休止したことに加え、都内屈指の打席数を誇るロッテ葛西ゴルフ(江戸川区)が2月29日から臨時休業。メトログリーン東陽町(江東区)やスイング碑文谷(目黒区)といった人気施設も一時休業しているため、営業している施設が非常に混んでいるという。

そんなわけで、運動不足解消やコロナ疲れのストレスを発散するため週末にゴルフ場やゴルフ練習場に行きたいが、我慢しながら悩ましい時間を過ごしているゴルファーが増えているようだ。


保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。