日本を代表する卓球選手として4回のオリンピックに出場。現役引退後も卓球界の発展に尽力し、初のプロリーグとなるTリーグを創設。初代チェアマンとしてリーグを引っ張ってきた松下浩二氏が同職を退任。2018年の立ち上げからわずか2年での退任にスポーツ業界でも驚きの声があがった。なぜこのタイミングだったのか?これから何を目指すのか?旧知の池田氏が松下氏にインタビューを行った。


池田 最初にTリーグの構想を聞いたときは、正直「卓球でプロなんて成立するのかな」と思いました。でも松下さんはゼロから始めて、それを実現した。リーグの運営も順調のようですが、2年でチェアマン退任したのはどうしてなんですか?

松下 立ち上げまで8年かかって、そこから2年。完全燃焼したという感じですね。もちろんやり残したことはあります。リーグとしては12チームが理想ですが、いまは8チームしかありません。でもそれは後進の方々にがんばって増やしていただきたいなと思っています。僕もアンバサダーとして外部から協力していくつもりです。

池田 私のなかでは、Tリーグ=松下さんというイメージ。松下さんだから協力するという人、スポンサーも多かったのではないでしょうか。

松下 ありがたいことに僕の夢に「お前が言うなら」と乗ってくれた方は確かに多かったと思います。でもそれはリーグとしては一過性のもので、本質的ではない。あえて自分が離れることでそういう本質が整っていけばいいと思っています。

池田 新しい星野一朗チェアマンは、日本卓球協会の専務理事の方です。プロリーグと“協会”、いわゆるプロとアマでは目指す場所が異なり、利害関係がバッティングすることも多いと思いますが……。

松下 プロだからできること、アマチュアだからできないことなど、双方のメリット、デメリットはあると思います。でもそれを乗り越えていいシナジーを生み出し、新しい日本の卓球を築ければいいなと思っています。日本卓球協会には35万人の登録会員がいますし、トップ選手の育成なども共存共栄でやっていければいいですよね。心配なのは、プロとしてビジネスがうまくやれるかどうかという点ですね。でも一度やってみて、ダメならまた考え直せばいい。そういうふうに僕は考えています。

池田 松下さんはこれから先、どんな展望を持っているんですか?

松下 日本のスポーツビジネスをもっと盛り上げることができればなと思っています。現在日本のスポーツは、5〜6兆円の産業だと言われています。これはアメリカの10分の1。卓球に限らず、まだまだ手つかずのところが多い。会社をいくつか立ち上げて、スポーツで頑張れば稼げるということを証明したいですね。そうすればもっとスポーツ界が盛り上がっていくと思います。

池田 私はTリーグと組んでアリーナビジネスを一緒にやりたかったんですよ。松下さんに相談に行こうと思っていたら辞めてしまった(笑)。

松下 アリーナビジネスは可能性がありますよね。たとえば、ショッピングモールとか新しい駅とかにアリーナを作る。規模は小さくていいと思うんです。駅を降りた人が卓球とかバスケットとかバレーを観戦して、レストランでご飯を食べて、ショッピングして帰る。そういう環境ができたら面白いだろうなと。

池田 日本だとまず映画館ですよね。確かに映画館は集客効果があると思いますが、アリーナもかなり人を集めますからね。現に海外にはショッピングモールとアリーナがセットになっている場所も多い。

松下 駅開発とかと一緒にできればいいですよね。電車を降りたら1分でアリーナ(笑)。そうやってスポーツを身近なものにしていきたいですね。

池田 卓球だとやり残したことはありますか?

松下 これは夢みたいな話ですが、“卓球の聖地”と呼ばれるような場所を作れたらいいですね。国技館=相撲、花園=ラグビーのような場所があると、選手のモチベーションにつながると思うんです。どこがいいのかまだわかりませんけど、そういう場所を作りたいかな。


現在52歳の松下氏は、「60歳まで走り続けたい。まだまだやりたいことがたくさんある」と語る。その衰えることのないパワー、エネルギーでこれからの日本のスポーツをまだまだ盛り上げてくれそうだ。




取材協力:文化放送

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VictorySportsNews編集部