だが、実際にはそんなことない。30代や40代でゴルフを始めても、シングルハンディに到達しているゴルファーはたくさんいる。ゴルフは老若男女が楽しめるスポーツだから、何歳から始めてもいいし、努力次第でいくらでも上達できる可能性はある。

 ただ、多くのアマチュアゴルファーをインタビュー取材してきた経験によると、ゴルフはできるだけ若いうちに始めたほうがいいのではないかという気がする。その理由は、30~40代でゴルフを始めた人は必ずと言っていいほど「もっと早くから始めておけばよかった」というセリフを口にするからだ。

 昭和生まれの男性ゴルファーで、社会人になってからゴルフを始めた人のほとんどは、次の2パターンに大別できる。
①新卒で入社した会社の先輩や上司の勧めで、20代で始めた
②会社で課長や部長になり、仕事のつき合いで必要になったので30~40代で始めた

 これは世代による傾向もあり、入社時期が1970年代~1980年代前半の人は、プレー代が比較的安かったので20代からゴルフを始めやすかった。一方、入社時期が1980年代後半~1990年代前半の人は、プレー代が高くて予約も取りづらかったので20代ではゴルフを始めることができず、30~40代になってから始めるのが主流だった。いずれにしても、この時代のサラリーマンにとってゴルフはビジネスツールの一つであり、いずれかのタイミングでゴルフを始めるのは必須条件だった。

「もっと早くから始めておけば・・・」

 そして、30~40代でゴルフを始めた人は「どうしてもっと早くから始めておかなかったのか」と自身の判断ミスを嘆くことが多かった。体力や運動能力が全盛期に比べて明らかに低下しているので、「全盛期にゴルフを始めておけば、もう少し上達したのではないか」という思いに駆られるようだ。

 また、彼らがよく口にするセリフがもう1つある。「最初に習っておけばよかった」である。多くの男性ゴルファーはレッスンを受けずに我流でゴルフを始めるので、「最初にレッスンを受けておけば、もう少しマシなスイングになったのではないか」と後悔する。

 もっと早くから始めておけば、最初に習っておけば、もう少し上達したかどうかはわからないが、30~40代でゴルフを始める人が不利だと感じる点がいくつかある。最も大きなデメリットが体の柔軟性だ。

 ゴルフのスイング理論は幼少期から学生時代にかけてゴルフに取り組んできた人が教える側に回り、動作解析や研究を重ね、新たな理論を構築していることが多い。したがって、体の可動域に関しても10代や20代の柔軟性を有していることを前提に「こうやって体を動かすべき」と提唱している。

 30~40代でゴルフを始めた人が彼らの理論どおりに体を動かせないと、「体が硬いですね」という答えが返ってくる。彼らは技術指導者なので、体の硬さを改善するにはフィジカルの専門家に相談してくれということになる。

 昨今はゴルフの上達に技術だけでなくフィジカルの柔軟性が欠かせないことが広く知られるようになり、フィジカルコーチとテクニカルコーチが連携してゴルフの指導を行うスクールも増えてきた。でも、その数は限られている。一部の人は体の硬さによって可動域が制限され、それによってコンパクトで再現性の高いスイングが身につくケースもあるが、それもひと握りである。

 そう考えると、20代でゴルフに興味があるのであれば、できるだけ早くインターネットで調べ、初心者応援プログラムや無料体験レッスンなどゴルフに触れる機会を見つけ出してほしい。今はゴルフ業界もゴルファー減少に悩んでいるので、喜んで相談に乗ってくれるはずだ。

未来に対する投資

 ただ、ゴルフに興味があり、実際に始めてみたいと思っても、20代の若者にとってネックになるのがお金だ。「ゴルフには興味があるけど、お金がない」という若者は多い。でも、そういう若者にこそゴルフを始めてほしい。なぜなら、ゴルフを始めることによってお金の使い方や稼ぎ方の発想が大きく変わる可能性があるからだ。

 ゴルフのプレー代は以前より安くなったとはいえ、今でも平日5000円~1万円前後、土日になると1万5000円~2万円近い料金がかかる。ゴルフクラブをフルセットそろえようとすると、中古でも10万円くらいかかる。20代の収入でそんな金額は出せないという。

 でも、ゴルフをしている人が最初から金銭的な余裕があったかというと、そんなことはない。むしろゴルフを始めたことによって人脈や視野が広がり、それをビジネスに生かしている人のほうが多い。そもそも、20代の収入だけでやりくりするにはゴルフはお金がかかり過ぎる。そうではなく、未来に対する投資という発想でゴルフを始めてほしい。

 ゴルフというスポーツは多くの経営者やマネジメント層に好まれている。それにはいったいどんな理由があるのか知るために、投資金額と投資期間を決めてゴルフを始めるといった考えで取り組んでみたら、いつの間にか一生続ける大事な趣味になるかもしれない。

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保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。