2009年、サガン鳥栖でプロデビューし、プロ2年目に移籍した横浜FCでサイドバックに転身。その後、川崎フロンターレ、ヴァンフォーレ甲府、レノファ山口とプロ入り後5クラブを渡り歩いてきた、武岡優斗選手。幾度の大怪我を経験し、何度も引退を考えた、という彼は、これまでどのようなことを経験し、今何を考えているのか。Vol.2ではサポーターへの思いについて語った。

「サポーター全員が大事とは言えなかった」

―武岡選手にとってサポーターはどんな存在ですか？

武岡：ありがたい存在だなとは思います。ただ、僕が一年目でチームを移籍したっていう背景もあって、厳しいご意見をサポーターの方からいただいたりしていたので、サポーターすべての人を大事だなんて思えるようなプロ生活を送ってきていないですね。横浜FCにいた時とかは、2011年は怪我で1試合も出られなくて。その時はサポーターから結構ヤジを受けていましたね。例えば、負けた試合の後に知人と喋っていたときに、「ヘラヘラしてんじゃねーよ」みたいなことは言われたことがあります。その方の気持ちもわかるんですけど、サッカーやりたくてもやれないんだよっていう気持ちもこっちにあったので、なんとも言えない気持ちでしたね。そういったこともあって、試合中にサポーターと言い合ったこともあります。当時は26とかだったので、素直に受け入れられない部分もありました。もちろん暖かく見守ってくれているサポーターもいてくれたので、感謝する反面、見返してやろうっていう気持ちでやっていました。だからこそ、当時の自分を思い返すとサポーターのみなさんに感謝しているとは言えないですね。

―今はそういったマイナスの声に関してはどう受け止めていますか？

武岡：その人もお金を払って観にきてくれているし、厳しい声をあげる権利はあると思っているので、しょうがないなっていうふうに思っています。だからこそサポーターの方に感謝する気持ちは強くなりましたし、どこへ行っても応援してくれる人たちもいるので、昔とは気持ちが変わりましたね。

―サポーターの方の意見の受け止め方について、今の武岡さんから横浜FC時代の自分にアドバイスするなら、何を伝えますか？

武岡：当時は怪我もしていたので、もどかしい気持ちがあって、難しい時期だったと思います。だからこそ感謝の気持ちもあったんですけど、厳しい意見をうまく消化することが難しかったですね。まだまだ子供だったので、温かい意見にも目を向けながらもう少し大人な対応ができれば良かったんじゃないですかね。サポーターに対する考えが変わったのは、川崎に行ってからですね。

自分の背番号のユニフォームを来ているファンと交流イベント

―川崎へ行ってから何をきっかけに考え方が変わったのですか？

武岡：クラブの規模が圧倒的に大きかったのと、サポーターが作り出す雰囲気が凄かったですね。地域にも根付いていて、サポーターとの距離も近かったので、20代後半にしてサポーターの方に対する考えが変わっていきました。加えてチームとしてサポーターの方に対するコンテンツの出し方も素晴らしかったと思います。

―具体的にサポーターの方との距離の近さを実感したエピソードは？

武岡：ファン感謝デーですね。そもそも参加する人も多かったので、すごいなっていうふうに感じていました。怪我をして帰ってきた時は特にファンの暖かさをより感じられました。素直にそういうことは嬉しかったです。

―甲府にいるときに、自分の背番号のユニフォームを着てくれているサポーターの方とお写真を撮るイベントもやられたっていうお話を伺ったんですが。

武岡：元々川崎にいるときにやっていたんですけど、甲府に移籍した後に、チーム広報と話し合って始めましたね。ユニフォームって高いですし。何人もいる選手の中で、自分を選んでくれるっていうのは本当に嬉しくて。チームを応援してくれるサポーターの方と交流することはあっても、特に自分自身を応援してくれる方と交流する機会はなかったので、やってみました。どんな人が応援してくれているんだろうとかって、単純に気になりますし。

―最後に、移籍しても武岡さんのことを応援してくれている方々への思いを教えて下さい。

武岡：どこのクラブへ行っても、変わらないスタンスで僕に接してくれるのは、すごくありがたいですし、自分にとって救いだなと思っています。今のコロナの状況であったりとか、自分が怪我している時期は、物事をポジティブに考えられないので、特に助けてもらっているなと感じることが多いですね。そういう方々の声援が自分のパワーになっています。

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