同社は2018年7月設立。岐阜県内にフィットネスクラブを3店舗同時にオープンしたのを皮切りに、愛知県、三重県、静岡県、長野県、福井県などにも出店エリアを広げ、2019年12月には出店数40店舗を突破。2020年は新型コロナウイルスが流行し、多くのフィットネスクラブが苦戦を強いられる中、同社は利用者の安全性を高めるシステムを導入しながら奈良県、群馬県、富山県、石川県などにも初出店。2021年1月現在、12都道府県66店舗を運営しており、中部・関西圏ではじわじわと勢力を拡大した新興フィットネスだ。
一方、「Fit&GO」は2018年2月にファミリーマートの2階を利用した新規事業として1号店の大田長原店(東京都大田区)がオープン。その後、2019年に関内店(神奈川県横浜市)、仲六郷第一京浜店(東京都大田区)、福生駅前店(東京都福生市)、ポンテポルタ千住店(東京都足立区)がオープンし、5店舗まで増やしたが、新型コロナウイルスの流行によりグループレッスンの中止や臨時休業を余儀なくされた。営業再開後も退会や休会が相次ぎ、コロナ禍でも拡大を続けるフィットイージーに事業譲渡することを選択した。
事業開始のタイミングでは澤田前社長自らPRするなどファミリーマートにとっても新しいビジネスモデルの一つだったことは記憶に新しい。
「Fit&GO」の全5店舗は2月末日まで営業した後、店舗を改装して3月上旬にフィットイージーへとリニューアルオープンする。リニューアル後は既存の会員もフィットイージーが提供するさまざまなサービスを受けることができるようになる。同社はこの事業譲受を皮切りに全国展開を実施し、2022年までに全国200店舗の開業に向けて計画を進めているという。
新型コロナウイルスの流行によって室内の密閉空間での活動が敬遠されるようになり、昨年からフィットネスクラブ離れが進んでいると言われている。ファミリーマートがフィットネスクラブ事業を譲渡するのも、退会者数の増加や利用者数の減少により、事業の選択と集中という観点から決断したと見られる。
そんな中、フィットイージーはなぜコロナ禍でも店舗数と会員数を増やすことができたのか。それは入会から施設利用まで一貫して非接触型のシステムで利用者の安心・安全を確保しているからだ。入会は店頭での対面受付なしで、WEBのみで完結するスマート入会システムを導入。店舗への入館は独自開発の顔認証での入館システム「顔パス認証」と、感染症対策として顔パス認証と連動した熱感知システムを採用している。店舗内ではスタジオ導入店舗が一斉に行えるオンラインレッスンを実施。また、フィットネスを習慣づけするためクラウドでの自己管理機能サービスも提供している。これらのシステムにより利用者が安心してトレーニングに取り組める環境を整えているという。
また、スポーツジムが最も混雑する時間帯は19時~24時だが、この時間帯はコンビニエンスストアやコインランドリーの駐車場利用者数が少なくなるので、駐車場の効率化も含めてスポーツジムにとって最適な出店方法だという。コインランドリーとフィットイージーはいずれも人件費を使わないビジネスモデルのため、施設管理や清掃業務をコンビニエンスストアのスタッフが総合的に行うことも考えられる。
スポーツジムの利用者が最も多いのは19~24時だが、それ以外の時間帯も一定して利用者がいるので、複合施設にも幅広い時間帯で活気が生まれ、双方にメリットがある。同社は今後3年で全国に150店の出店を計画。そのうちの半数を複合施設にするつもりだという。
首都圏のフィットネスクラブは出勤前や出勤後に汗を流す利用者をターゲットにしたターミナル駅などに大型店舗を構える企業が業界を牽引してきた。しかし新型コロナウイルスの流行によりテレワークが推奨されるようになり、オフィスに出勤せず仕事時間もプライベート時間も自宅周辺で過ごす人が増えた。この生活スタイルがしばらく続くことになれば、都市部のフィットネスクラブを退会して自宅周辺の郊外型のフィットネスクラブに通う流れが加速するだろう。
「フィットネス業界は新型コロナウイルスによる一時的な停滞はあるにせよ、今後も高成長する市場」だと同社代表取締役社長の國江仙嗣氏は見ている。コロナ禍でも店舗数と収益を伸ばしてきたフィットイージーが東京進出を足がかりにどんな新風を吹き込むのか楽しみだ。