選手にとってもファンにとっても喜ばしいことであるが、第2戦の「明治安田生命レディスヨコハマタイヤゴルフトーナメント」と第3戦の「Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント」はすでに無観客開催を発表(2月17日時点)。その後の試合もギャラリーの入場には一定の制限が生じると思われる。やはり例年とは異なり、2020年シーズンに準じた状況がしばらく続くことになるだろう。そもそも2021年シーズンは2020年シーズンと統合されており、2020-21シーズンとして選手たちは長丁場を戦い抜くことになる。

開幕戦に向けた準備も普段と違った対応を余儀なくされている。例年だと国内ツアー開幕前に米女子ツアーが開幕し、2月第3週に「ホンダLPGAタイランド」(タイ)、2月第4週に「HSBC女子チャンピオンズ」(シンガポール)が開催される。これらの試合に出場する選手は、1月からトレーニング合宿を行って準備を整えるのが定番スケジュールだった。

それが今年は「ホンダLPGAタイランド」が5月第2週、「HSBC女子チャンピオンズ」が5月第1週にスケジュール変更となり、すべての選手が国内開幕戦に照準を合わせてトレーニング合宿を行っている。その合宿地に関しても、例年であれば温暖なハワイや外資系クラブメーカーの開発センターがある米国本土、東南アジアのタイやマレーシアなどを訪れる選手も多いが、今年はほぼすべての選手が国内合宿を選択している。

新型コロナウイルス感染者数の増加により1月7日から緊急事態宣言が再発令され、帰国後も14日間の自主隔離期間が必要なので、気軽に海外でトレーニング合宿を行える状況ではない。選手たちが国内合宿を選択するのは必然的な流れだが、例年は海外に分散していた合宿地が国内に集中すると、さまざまな問題が生じる。ある選手は合宿地の選定に際し、次のような心配を口にしていた。

「海外に比べて日本は芝の上からボールが打てる練習環境が少ないんです」

多くの選手がこの時期に海外で合宿を行う一番の理由は、ラウンド中だけでなくラウンド前後の練習でも芝の上からボールを打てる環境を求めているからだ。日本のゴルフ場の多くは、ラウンド中は芝の上からボールを打てても、ラウンド前後の練習ではマットの上からしかボールを打てない。

プロゴルファーがマットの上からボールを打たないかというと、荒天時は屋根つきの練習場に行ったりすることもある。でも、芝の上からボールが打てる環境があれば多少の雨でも気にせず練習する。そのほうが実戦に近い感覚でボールを打ち込めるからだ。マットの上だとクラブが手前から入ってもヘッドが滑ってクリーンヒットしたように感じるし、ボールにクリーンヒットしてからボールの先のターフを取る正しいスイング軌道を身につける上でも、芝の上からボールを打つ必要があるのだという。

ただ、芝の上からボールを打てる練習環境を国内の温暖な地域で探すとなると、その環境はさらに限られる。プロ野球の春季キャンプ地が沖縄と宮崎に集中しているように、2月に温暖な気候でゴルフの練習ができるのも沖縄と宮崎くらいしかない。当然、そのような施設には女子プロゴルファーだけでなく男子プロゴルファーも集中する。

そうなると、練習場の打席数に限りがある中、若手選手や実績の少ない選手はベテラン選手や実績のある選手の練習状況を見ながら対応せざるを得なくなる。その点を考慮し、それほど温暖でなくても構わないので、あまり混んでいないことを重視して合宿地を決めた選手も多かったようだ。

すべての選手が国内開幕戦に照準を合わせて合宿を行っていること。そして、ほぼすべての選手が国内で合宿を行っていること。この2つの要素が今年の開幕戦にどのような影響を及ぼすのだろうか。

女子ゴルフ開幕戦の過去10大会の優勝者

国内ツアーの開幕戦は1988年以来ずっと「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」だが、過去10大会の優勝者を見ると2016年のテレサ・ルーと2017年のアン ソンジュを除く8大会がツアー5勝目までの選手で、そのうち2人が初優勝。32回の歴史の中で9人の初優勝者を輩出している。一躍ヒロインが誕生する大会という印象を持っているファンが多いかもしれない。

だが、今年に関しては実績のある選手たちがそろって国内開幕戦に向けて準備を整えている。そう考えると、鈴木愛(16勝)、上田桃子(14勝)、有村智恵(14勝)、成田美寿々(13勝)といった実力者が初戦から存在感を示すかもしれない。

一方、賞金ランキング1位の笹生優花(2勝)、2位の古江彩佳(3勝)、3位の原英莉花(3勝)、4位の小祝さくら(2勝)といった選手たちが昨年の勢いを今年も持続する展開も考えられる。このような状況が誰にとって有利に働くか分からないが、出場するすべての選手がベストなコンディションでゴルフトーナメントの面白さを存分に伝える開幕戦になってほしい。

保井友秀

著者プロフィール 保井友秀

1974年生まれ。出版社勤務、ゴルフ雑誌編集部勤務を経て、2015年にフリーランスとして活動を始める。2015年から2018年までPGAツアー日本語版サイトの原稿執筆および編集を担当。その他、ゴルフ雑誌や経済誌などで連載記事を執筆している。