―団体メンバーの特徴、強みは?団体メンバー4選手が今回初出場です。演技への影響は?
米田:一人ひとりの選手のレベルが非常に高いと思います。橋本大輝選手は、Dスコアが高いですね。これまでの成長のスピードがとてつもなく早い。昨年から「リ・ジョンソン」「ロペスハーフ」「棒下ひねり」「前方ダブルハーフ」「カッシーナコールマン」などを取り入れ全体としてのDスコアは非常に期待できると思います。今回団体メンバーのキャプテンの萱和磨選手は、とても念入りに演技を仕上げる印象です。心配性の一面が競技者として強みを発揮していると思います。安定して力を発揮できる選手ですね。
一方で谷川航選手は萱選手と対照的で、本番に合わせるタイプ。爆発力が高い。安定して力を発揮するタイプではないが、爆発すると世界のトップに躍り出るポテンシャルがある。
北園丈琉選手は、今回一番若い選手としてチームに勢いをつけてくれると思います。“日本団体を金メダルに導くような演技”“人の記憶に残るような演技”を期待しています。
―北園選手は全日本選手権で靱帯損傷と剥離骨折という怪我からの復活で非常に注目されています。
米田:実は僕は全日本が終わった時点で「もう難しいか…」と思いました。しかし、ドクターから「丈琉くん、現時点であれだけ動けているなら、間に合うかもしれません」と連絡が来て、そこから「高気圧酸素治療」と「衝撃波治療」をおこないました。
そこから清風高校の梅本監督の指導のもと奇跡の復活。全日本種目別選手権での演技は圧倒的でした。その勢いをそのままオリンピックに向けてもらえると、とても期待できると思います。
―メダルは期待できるのでしょうか?
米田:メダルは大いに期待できると思います。大事なのはミスをしないということです。1点のミス(落下、転倒)が順位をひっくり返すことになります。特にあん馬は落下の危険性がもっとも高い種目です。あん馬を通しきることが非常にポイントだと思います。そして、予選トップ通過ですね。最終種目で日本が最終演技国となるので、演技構成の変更など展開を考えやすい。
普段の練習でやっていることをオリンピック本番で出せば金メダルが見えると思いますので、期待したいですね。
今回の団体のメンバーには二連覇がかかりますが「金メダル取らないといけない、結果を出さないといけない」よりも、「金メダル取りたい!」という気持ちのほうが強いと思う。その純粋な気持ちの方が力を発揮すると思っています。
―日本にとってライバルは?
米田:中国は強いですね。誰が注目っていうことでもなく、全員のレベルが高い。特にリンチャオパンはミスをしない中国の柱となるであろう選手です。そしてゾウジンヤンの平行棒は驚異です。この選手だけで平行棒で1点日本を上回ります。
―経験豊富な内村選手がチームにいるメリットはありますか?また内村選手の種目別はどうみていらっしゃいますか。
米田:合宿中も内村選手が積極的にチームメンバーに声をかけている場面が多くありました。後輩にとってはとても心強いメッセージだと思いますし、内村選手と同じ時間を過ごすことができることが何よりも財産になると思います。特に、予選では平行棒スタートで内村選手は2つ目で鉄棒を終えます。その後はおそらくチームについて選手たちの力になると思います。
一方競技としての内村選手は大会ごとに完成度が高まっていると感じます。特に代名詞であるブレットシュナイダーは、見るたびに進化し、完成度は高いですね。キャッチするところがとてもスムーズになりました。自分の演技をすれば金メダル獲得できると思います。
―東京オリンピックで日本体操界に期待することは?
米田:Beyond 1964。1964年(昭39)の東京オリンピック、金メダル5つ、 銀メダル4つを獲得し、「体操ニッポン」を世界に知らしめた大会を超えるような『人々の心に響く演技』を期待しています。
体操歴代最強メンバーで挑む東京オリンピック 栄光の架け橋はかけられるか?
「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ」ー。2004年、アテネオリンピックの体操団体の決勝。冨田洋之の鉄棒でピタリと止まる着地とその名実況は歴代オリンピックの中でも象徴的なシーンとして未だに語り継がれている。体操男子団体はオリンピックで最も注目される種目と言ってもいいだろう。体操男子団体は今回の東京オリンピックでは過去最強のメンバーで戦うことになる、そう語るのは当時アテネオリンピックの体操団体でキャプテンをつとめた米田功氏だ。米田氏に今回のメンバー、そして東京オリンピックでの体操への期待を聞いた。
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