「1ミリ単位のセッティングでもスピードに違いが」

競輪選手になってからは、多くの気づきや発見を得られました。そういったひとつひとつの経験を経て、徐々にプロ意識が目覚めていったと思っています。
競技面で言えば、競輪を始めたばかりの頃は単純に脚力の勝負で、力いっぱいに漕げば早く進むだろうと考えていました。ですが、師匠や先輩たちからいろいろなことを教わるうちに、改めて道具の大切さについて気づかされたのです。高校時代に野球をやっているときも何となくは感じていましたが、道具をうまく使いこなすことが上達の道につながることを発見しました。たとえば、1ミリ単位のセッティングでもスピードに違いが出てきます。同時に、その道具に合わせて自身の体もうまく使いこなさなければなりません。自転車の乗り方やフォームでも違いが出てくることに気づいたのです。
野球に打ち込んでいた頃はひたすらバットを振ったり、トコトン走り込んだりと根性に頼ったような練習をがむしゃらにやっていました。競輪においても、そういった練習が生きることがあり必要なことだとは思います。ですが、そういった練習だけではなく、もっと論理的に取り組むようになりました。プロになって10年を経過した今でもそういった発見はあり、常にどうすれば勝てるかを追求している状態です。
自転車を始めた頃や競輪学校時代を振り返ると、当初はまだまだ根性に頼ってがむしゃらにやっていました。その後、師匠や周りの先輩たちからアドバイスをもらったりして気づき始めていきました。そのうち自分自身でも発見できるようになっていき考えながらさまざまなことを試していったのですが、乗れば乗っただけ新たな発見があって、ますます自転車にのめり込むようになりました。そういったトライ&エラーを繰り返してきたからこそ、今の地位を築けたのでしょう。

「運の貯金」勝つためにできることをすべて

また、プロになってからは自身の行いについて気をつけるようになりました。プロ選手としてみんなの手本となれるように、恥ずかしくない姿を見せなければならないということは当たり前なのですが、それ以上に運の貯金といったようなことを気にするようになりました。競輪は勝負事の世界で、勝敗ですべてが一変してしまいます。そういった紙一重の勝負事の世界で勝つために、普段の生活でも気を配るようになっていきました。たとえば、落ちているゴミを拾ったり、靴をそろえたりといったような本当に些細なことなのですが、そういった普段の行いを神様が見ていてレースの結果につながってくるのではないかと感じるようになったのです。そういったことを意識するようになったから、プロ選手としてプラスになるように生活しようと努められているのだと思います。
少し気にしすぎかなと感じるところもありますが、だからといって縁起を担ぐようなことはありません。そういった決まり事を作ったとき、それをできなかった場合は気になってしまいます。それで負けてしまうと引きずってしまい、逆効果になってしまうことが目に見えています。以前は大きいレースの前には神社に行ったりしていましたが、毎回毎回良い成績を残せるわけではありませんからね。一時的に縁起を担ぐようなことはあっても、それを長く続けないように自発的にどこかのタイミングでやめるようにしています。
ルーティンに関しても同じようにできなかったときを恐れて、基本的には作らないように心掛けています。ただ、レース発走直前の決めポーズだったり、周回中の動きだったりというのは、ある程度決まっていて見てもらえれば気づいてもらえるようなわかりやすいものです。個人的にはスイッチを入れるためにやっている行為といった意味合いが強いのですが、ファンのみなさんへのアピールにもなっているので、ぜひ見てもらいたいなと思っています。

(プロフィール)
郡司浩平(ぐんじ・こうへい)
1990年9月4日生まれ(31歳)、神奈川県出身。父は元競輪選手の郡司盛男。日本競輪学校(現:日本競輪選手養成所)を経て、2011年1月に99期生として川崎競輪場でデビューを果たす。ここまで獲得したG1タイトルは2020年11月小倉競輪祭、2021年2月全日本選抜競輪。最上位のランクであるS級S班として今年2年目を迎えている。株式会社チャリ・ロトとは2021年3月にスポンサー契約を結ぶ。

(協力)チャリロト パーフェクタナビ編集部
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VictorySportsNews編集部