5月末現在での賞金ランキングは第9位

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加藤「まず今年ここまでを振り返って。南関東地区のトップ選手として、5月にはG1の前に大事な地元記念開催が2つ続くこともあったけど、疲れはこなかった?」

郡司「5月は平塚記念、川崎記念と続いて、日本選手権競輪でしたからね。終わった後は、さすがに疲れがきました」

加藤「それは精神的なもの? それとも肉体的な疲れ?」

郡司「精神的なものからくる、肉体的な疲れでした。負けられないですし、一戦、一戦が気を抜けなかったので、休まるところがなかったです」

加藤「最近のレースを見ていると、今の競輪界はまた一つ、周囲のレベルが上がってきている感じがするけど?」

郡司「本当ですね。若手の選手も多く出てきて、スピードがだんだん上がってきているように感じます。でも、それにしっかりと対応していかないといけない。レースを走るときは、より前の位置で組み立てていかないと、勝てなくなってきていると思っています」

加藤「自分は引退して、今は解説をやらせてもらっているけれど、最近のレースは郡司選手や松浦悠士選手が3年前くらいに掴んだものに、みんなが追いついてきたイメージがある」

郡司「そこまではまだ感じてはいないですけれど、間違いなく、追いかける立場より、追われる立場になってきたとは思います。そこに、脅威は感じていますね。若い自力選手が出てきて、その後ろにタテ脚のある選手が付く。そうすると、対応しきれなくなってきます。みんなヨコの動きよりも、タテの動きがついてきているので、難しく感じていますね」

加藤「今年ここまでは、どう評価している?」

郡司「1着も取れているし、相対的に悪くはないです。ただ、G1やG2になると決勝に乗れていない。そこを自分でどう評価するか、だと思います」

加藤「データを見ると、今年は41走して19勝している。郡司の走っているレベルのレースで、19勝はとんでもない数字。まだまだこれからだけど、賞金ランキングは9位で、これは意外に下だなという印象がある」

郡司「1着は要所で取れているとは思います。状態も悪くない感覚です。でも、上位と戦う時は少しのミスで負けてしまうことが多い。とくに今年はG1、G2が壁になっていますね。後半戦に入って、早く打開しないと手遅れになってしまうと思っています」

加藤「今年ももう折り返しだからね。ここまでを振り返る上で、良い感触があったレースはある?」

郡司「これというレースはないのですが、1月の和歌山記念は、自分なりに良く走れていたと思っています。若手の選手が増えてきて、3日目の準決勝では吉田有希君と対戦して、位置を取ってから捲ることができました。あの内容のレースがをできたことは、今後も崩したくないと思っています」

加藤「まさに郡司選手のストロングポイントはそこだよね。若手選手という言葉があったけれど、今の南関東地区の若手の自力選手はどう?」

郡司「なかなか一緒になることが無くて、まだ面識がない選手も多いですね。そもそも記念やG1だと出場する後輩自体が少ないです」

加藤「たしかに、郡司選手が一番前でガンガン戦うレースが、まだ多いよね。自分も経験があるけれど、自分が前を走った方が良いのかもしれないけど、同地区の後輩が『頑張らせてください!』と出てくれば、『頑張ってくれ』と任せられると思うけど、まだ南関東地区にはG1準決勝でそうなることが少ないかな」

郡司「もちろん、松井(宏佑)たちも頑張っていますけどね。他地区の若手がたくさん出てきていることに比べると、全体的な地区の差が埋まり切っていないように感じます」

加藤「眞杉匠や町田太我といった若手の先行選手に、郡司選手がずっと戦い続けなければいけない現状だよね」

郡司「そうですね。ただ、自分もそれ以上の力をつけないといけないとは思っています」

加藤「5月の全プロ記念競輪でも、早めに仕掛けた先行勝負を見せていたよね」

郡司「はい。相手の意表を突くことをやっていきたいと思っています。『きっと前に出させてくれるだろう』と思われるのではなく、『先行されるかもしれない』という部分を見せたいです。そういうレースをしていかないと、相手もやりやすくなっていくと思うので」

加藤「次を見据えたレースだね」

激しいレースの合間、オフの日の過ごし方

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加藤「今はトレーニングをどのようにしている?」

郡司「練習にに関しては、大きく変化していることはなく、やりたい練習ができています。あとはレースが続いて間隔が詰まっている時は、年齢的にも30歳を超えているので、身体のメンテナンスにも時間をかけてなくてはいけない。練習と休養、その兼ね合い。デビューして12年目になるので、経験もありますし、レースに合わせて、うまく調整もできるようになってきましたね」

加藤「練習のルーティーンは?」

郡司「今は、基本的にバンクに入って練習。あとはウエイトトレーニングです。バンクと自転車以外のトレーニングが半々くらいですね」

加藤「そこに、オフの日は入れる?」

郡司「はい。最近は、前よりもオフが少なくなりました。前はガッツリ練習して、疲れ切って、もう練習できないから1日休むという感覚でした。でも、今それをやると、2、3日ダメになってしまうので(笑)。練習の量を減らしても、練習の回数は増やすようにしています。オフ日は少なくなりますが、身体は楽になっていますね」

加藤「完全に休みの日は、何をする?」

郡司「レースの間隔があくことが、前もって分かっている時は、リフレッシュします。最近は、キャンプに行っています!」

加藤「みんなでキャンプ? それともソロキャンプ!?」

郡司「あっせん(出場予定レース)がうまく合えば、選手みんなで。特に、堀内(俊介)や出澤(拓也)とは、よく行きますね」

加藤「では、キャンプグッズもそろえたんだ!」

郡司「初めてキャンプに行くと決めた時に、一通りそろえました。しっかりと準備して、行ってみたら、楽しかったですね。G1が終わって、一息つく時間があれば、また行きたいです」

ここがホーム戦の気持ちで、しっかりと臨みたい

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加藤「では、ここからは高松宮記念杯(※1)について。まず、開催の印象は?

郡司「高松宮記念杯は、初めてG1の決勝に乗った開催(2016年6月)です。まだ優勝経験はないですけどね」

加藤「勝ち上がりは、東西の地区に分かれて戦うけど、感じることは?」

郡司「もちろん、同地区同士が、別ライン(※2)で戦うこともあるので、複雑ではありますが、面白いと思うし、自分は楽しみの方が大きいです」

加藤「開催される岸和田バンクのイメージは?」

郡司「昨年の高松宮記念杯も岸和田競輪場でしたが、途中欠場してしまいました。だから相性が良いという感じはしないのですが、レースを見ていると、よいタイムが出ているので、そういうバンクは嫌いではないです。バンク的にも走りやすいと思います」

加藤「開催までのスケジュールも決まっている?」

郡司「期間があいている時に、強めの負荷をかけた練習もしたいと思っています。タイムは良くも悪くも変わっていないですが、日々の調子の良し悪しをすごく感じるようになってきているので、常に良い状態で走れるように取り組んでいるところです」

加藤「最後に、高松宮記念杯への意気込みを聞かせてもらえれば」

郡司「今年に入ってG1は、いまいちパッとしない成績が続いています。自分の中でも喝を入れて、ここが地元戦だと言うくらい、しっかりとした気持ちで、いい状態のまま、頑張りたいと思います」

◆高松宮記念杯競輪・特集
加藤慎平氏と西日本地区代表として古性優作選手の対談は、チャリ・ロト「パーフェクタナビ」にて公開中。
https://www.chariloto.com/perfectanavi/

(※1)高松宮記念杯競輪
競輪の最高峰グレードであるG1レースの1つ。今年は大阪の岸和田競輪場を舞台に、S級選手108名が、6月16日から19日まで4日間の日程で優勝を争う。決勝までは東日本地区、西日本地区に分かれてレースが行われるのが最大の特徴。

(※2)ライン…競輪は同県や同地区の選手同士で「ライン」を組んで、レース中は連携しながら勝利を目指します。



(加藤慎平プロフィール)
1978年5月18日生まれ(44歳)、岐阜県出身。2005年12月に全日本選抜、KEIRINグランプリを制覇し競輪界の頂点に立った。この時の月額獲得賞金1億3千万円は競輪界レコード記録。2018年12月に現役引退後は様々な分野でマルチに活躍している。YouTubeチャンネル「ペーちゃんねる」にて配信中。

(郡司浩平プロフィール)
1990年9月4日生まれ(31歳)、神奈川県出身。父は元競輪選手の郡司盛男。2011年1月に99期生として川崎競輪場でデビューを果たす。ここまで獲得したG1タイトルは2020年11月小倉競輪祭、2021年2月全日本選抜競輪。最上位のランクであるS級S班として今年3年目を迎えている。株式会社チャリ・ロトと2021年3月にスポンサー契約を結ぶ。


(編集)チャリ・ロト パーフェクタナビ編集部
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チャリ・ロト「パーフェクタナビ」では、競輪・オートレース・自転車競技の最新情報を毎日発信。競輪選手やオートレース選手のコラムも数多く連載中。


VictorySportsNews編集部