議論が巻き起こっている今こそ「変革のチャンス」

 競輪界がさらに発展するために、今の課題を聞かれて、強いて挙げるとすると、まずルールのわかりにくさになると思います。これに関しては、競輪だけに言えることではなく他の競技にもそういうところはあるでしょう。たとえば、斜行に関しては内外線間の4倍「程度」の幅というルールになっています。そのほかにも、押圧差し込みといって、自ら一方的に他の選手を押圧し、外帯線内側の前走する選手の内側に差し込む行為ですが、それに関しても「瞬時のときは除く」となっています。
 やはり、選手はギリギリを攻めるので、さらに明確でわかりやすいルールが望まれます。観客のみなさんも同様で、ルールがわかりやすくなったほうが判定にも納得してもらえるのではないでしょうか。
 個人的にはもっと整合性が取れると良いなと思っています。たとえば、誘導員早期追い抜きという失格と相手を落車させるという失格があります。相手を落車させる失格のほうが相手を負傷させる恐れがある危険な行為で、罰則はあっせんが1カ月程度止まります。それに対して誘導員早期追い抜きは斡旋停止が4カ月になります。
 そういったルールについて声を挙げる選手もいて、以前に比べると徐々に変わってきてはいます。ですが、選手ひとりの声だけではなかなか大きな変化は得られません。これについては業界が一丸となって取り組むべきなので、コミュケーションを取って同じ方向へ向かって進み解決していければ良いですね。
 また、この問題が最近になってピックアップされるのは、新規観客の増加とSNSの発展に起因すると考察しています。最近になって失格が増えたというわけではありません。ですが、最近は新しい観客が増えてきていて、それに比例してルールなどに疑問に思う人も増えたと思います。そういった疑問点や問題点を誰でも見られるSNSに投稿することで、それらが目立つようになってきました。だからこそ、わかりやすさが求められると思いますし、今が変革のチャンスになっているのではないでしょうか。

競技シーンから選手の内面がわかるのが、競輪独特の面白さ

 ルールに関連するところで、レース展開も初めての方には難しく映ります。特に、ライン戦についてよく聞かれ、競輪を楽しんでもらうための壁になっていると感じることもあります。ですが、僕ら選手たちからすると、ライン戦でないと面白味に欠けるとは思っています。
ライン戦の面白味をひと言で伝えると、個の力では勝てない相手にでも勝てるというところです。単純に自転車で走るスピードだけでいうと、おそらく僕はS級になれるかなれないかぐらいで、うまくいってもS級2班くらいでS級1班は厳しいくらいだと思います。東京五輪にも出場した脇本雄太選手や新田祐大選手らには、単純なスピードを競うようなレースではどう足掻いても勝てないくらい差があります。ですが、ライン戦になると、どれだけスピードに差があっても必ず勝機は見えてきます。それが選手にとっても観客にとっても面白味を感じられるところですね。
 個人的には、そういったところをどう伝えていくかをよく考えています。僕は幸いにしてメディアに出る機会も多いですし、個人のコラムもあります。そういったところで、レースに対する考え方をなるべく表に出すようにしています。それを通して僕の考え方を理解してもらい、車券を買ってもらうのが理想です。ですが、やはり初めて競輪を見る人がそこまで考えて車券を買うのは難しいことかもしれないですね。
 また、個人的な見解ですけど、そういったレース戦略など選手の考え方への理解が深まると、選手自身の性格、その人間関係が見えてきます。わかりやすい例を挙げると、番手の選手が誰になるかで仕掛けどころを変える選手は結構いて、それには練習仲間や師匠の影響が出ることもあります。僕は基本的に仕掛けどころは変えませんが、そういったことから選手の内面がわかるのは、競輪独特の面白さと言えるのかもしれません。

(協力)チャリロト パーフェクタナビ編集部
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チャリロト「パーフェクタナビ」では、競輪・オートレース・自転車競技の最新情報を毎日発信。競輪選手やオートレース選手のコラムも数多く連載中。
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VictorySportsNews編集部