寺地(19勝11KO1敗)は2017年5月に無敗で獲得したWBC王座を8連続防衛。昨年9月、矢吹正道(緑)に10回TKO負けで一時手放したものの、半年後のダイレクトリマッチで3回KO勝ちし奪還した。矢吹に敗れるまでは具志堅用高の日本記録V13を目指していたが、これは叶わず、王座に返り咲いてからは他団体王者との統一戦に目標を絞っている。

 京口(16勝11KO無敗)はデビュー8戦目でミニマム級王者となり、2018年の暮れにヘッキー・ブドラー(南アフリカ)を破ってWBAライトフライ級スーパー王座を奪取。タイトルはアメリカ、メキシコの試合も含めて4度防衛中だ。

次のステップは?

 予想は拮抗している。どちらもチャンピオンである上に、キャリアで脂ののった時期であるのだからそれも当然。さらに同じリングではWBO(世界ボクシング機構)のライトフライ級タイトルマッチも行われる(ジョナサン・ゴンサレス対岩田翔吉)。メジャー4団体のうち3つのベルトが同じ日に同じ会場で争われるのである。井上尚弥しかり、昨今は4団体王座統一がトレンドとなっており、今回のダブル世界戦の勝者同士で3団体統一戦へ――というストーリーも描ける。

 9月14日に都内で催された発表会見で寺地はさっそく、「同じ会場にベルト3つがそろうことはなかなかない。勝った者同士がまた次の統一戦に進みやすくなる」と言ったものだ。

 ところで、寺地が4王座統一への野望を隠さなかったのに対し、京口は特別な関心を示さなかった。「(寺地との)統一戦をクリアすれば、また新しい景色が見えてくると思う。上の階級も視野に入れていますし」とややそっけない。

潤沢なファイトマネー

 並立する日本人チャンピオン同士、ファンに望まれる対戦であることは承知しているが、今回の試合を受けた最大の理由は「ファイトマネー」とキッパリ言ったのだ。

「今までで一番大きな金額ですのでありがたい」

 京口はそう明かした。ここ2試合を海外の市場で戦ってきたチャンピオンらしい発言だった。国外で防衛戦を行ってきた京口は「これぞボクシング」という雰囲気を気に入り、海外志向を強めている。円安のため日本でやるよりも稼げることもあるだろう。それでも今回は「統一戦の舞台に見合った金額」(京口)と、チャンピオン自身その気になる報酬だというのだ。

 京口、寺地ともに統一戦のファイトマネーは明らかにされていないが、過去にはこのライトフライ級から100万ドル・ファイターが出たこともあるのである。かつて(現在も)、本場米国のリングは「軽量級に冷たい」と言われたものだが、その常識を覆した試合がある。

歴史的一戦のファイトマネーは

 1993年3月のWBC・IBF世界ライトフライ級王座統一戦がそれ。IBF王者マイケル・カーバハル(米)がWBCのウンベルト“チキータ”ゴンサレス(メキシコ)に大逆転の7ラウンドKO勝ちした一戦だ。

 試合はスリリングな倒し合いとなり、2度のダウンをはね返したカーバハルが強豪ゴンサレスを7回に起死回生の左フックでひっくり返した。この年のリングマガジン“年間最高試合”にも選ばれたエキサイティングなファイトとなった。

 具志堅をはじめ、張正九、柳明佑ら東洋から名王者を輩出しながら、当時「米国で見捨てられた階級」とまで言われたライトフライ級に全米のファンの目を向けさせた功績は大きい。カーバハル-ゴンサレスは第1戦がそれぞれ35万ドル、30万ドルのファイトマネーだったが、翌年のリマッチでは統一王者カーバハルが100万ドルを手にした。

 いまから30年も前の話だが、軽量級の記念碑的な名勝負である。今度の寺地-京口の統一戦にも大いに期待したいものだ。


VictorySportsNews編集部