ゲストに中国料理の名店「Wakiya-笑美茶樓」の脇屋友詞オーナーシェフ、生産者との繋がりと信頼関係のもとでこだわりの商品を展開する「AKOMEYA TOKYO」の山本浩丈代表取締役社長を招き、中田氏はその活動や取り組みに込めた思いなどを語った。

「手応えがあるかといわれると、まだできていないと毎回感じる。こればかりは、自身も勉強しなきゃいけない」

 招待した番組のリスナー20人を前に中田氏は今、抱いている思いを率直に口にした。2019年4月にスタートし、高い質や志を持つ日本全国の食や伝統工芸、その生産者を紹介してきた同番組。中田氏が実際に訪れ、現場で収録した生産者の“生の声”を届けるというラジオとしては異色の内容がメインとなっており、この日までで22都道府県の話題を届けてきた。「毎回外で収録してというのは無茶な話で、J-WAVEの方からは何度も『スタジオ収録を多くしてください』と言われています」と中田氏は笑いながら舞台裏を明かす。

 その中で「悩ましい」と打ち明けたのが、冒頭の言葉だ。「行けば行くほど、より多くの人を紹介したいと思うし、自分がメインではなくて、そこで僕が出会う生産者をより多くの人に知ってもらいたい。それによって、少しでも皆さんの生活が豊かになる糧になればと思っています」と、番組や「にほんもの」のサイトなどに込めた思いを説明。「一方で、自分が一番学んでいってしまうので、どんどん専門性のある話にいってしまう。それがより多くの人に伝わる形で表現ができているのか」と、常に表現の仕方や伝え方を試行錯誤しているのだという。

 中田氏は2006年のサッカーW杯ドイツ大会限りで現役を引退。その後に、日本全国2,000カ所以上を旅する中で、日本文化の価値に対する世界の関心が高まっていることを感じたと同時に、「日本について何も知らないのでは」との思いに行き着いたという。そして始めたのが、「日本を知る旅」。10年以上の歳月をかけて47都道府県全てを巡り、そこで出会った多くの農家や工芸家、日本酒蔵など、ものづくりの生産者をはじめとする「にほん」の「ほんもの」を伝える「にほんもの」プロジェクトをスタートさせた。

NIHONMONO 公式サイトにほんものストア

 その中で取り組むのが公式サイトやオンラインショップであり、このJ-WAVEの番組「TDK VOICES FROM NIHONMONO」。中田氏は「最初は個人の興味で旅を始めて、記録として写真を撮ったりしていたのですが、数を重ねるごとに非常に面白く、自分の生活がすごく変わってきた。毎日食べるし、飲むし、物を使うけど、それはなんとなくの行動だったんですよね。だけど、やっぱり生産者の人の背景とか、どのようにそれが出来上がったのか、その意味が分かってくると、普段の生活の幸福感が非常に上がったんです。それを感じた時に、これって個人だけじゃなく、もっと多くの人に知ってもらいたいと思い、伝えるということをしなきゃいけないということで、ラジオだったり、WEBだったりを始めた。さらに、伝えるだけでは十分ではないので、より多くの人にシェアしたいと思いオンラインサイトを始めたんです。その結果として、産業が良くなったり、そこに住む人たちが幸せになったりすることで自然もより良くなる」と、その経緯を説明。だからこそ「やっぱり、伝えるということに意味があるように感じています」と強調する。

 そんな中で、また新たな取り組みも行われる。公開収録にゲスト出演した山本社長率いるAKOMEYA TOKYOと「にほんもの」の初コラボが実現。旗艦店の「AKOMEYA TOKYO in la kagū」(住所:東京都新宿区矢来町67番地)に2月26日から3月22日まで約1カ月間の期間限定で「NIHONMONOコーナー」が設けられ、既に多くの人で賑わっている。2013年4月に銀座の店舗から始まったAKOMEYA TOKYOは、東京を中心にした12の店舗とオンラインショップを展開するライフスタイルショップで、「食のカタリスト(英語で「触媒」の意味)として生産者の思いを伝えていくこと」の重要性を掲げる山本社長が「お会いするのを楽しみにしていた」というほど中田氏の思いに共鳴。今回の初コラボに至った。同コーナーでは、「にほんもの」で紹介されてきた全国各地の逸品が並び、実際に手に取って確認、購入ができる貴重な場になっている。

 また、公開収録に参加した脇屋オーナーシェフは、番組でも紹介し、今回のコラボ店舗にも並んでいる長崎・南島原市の「高橋謙作製麺」の手延べ中華麺を使った特製スープによる料理を振る舞い、リスナーを喜ばせた。これも、中田氏が「高橋謙作製麺」の手延べ中華麺に感動し、その素晴らしさを伝えるため「脇屋さんに投げたら面白くなるのではと思い、無茶振りさせていただいた」と実現したもの。脇屋シェフをはじめ、「にほんもの」プロジェクトには多くのシェフも共感して参加・協力しており、中田氏を中心に“にほんものの輪”は確実に広がっていることが、こうしたところにも表れている。

収録では、「高橋謙作製麺」の手延べ中華麺が脇屋シェフによる特製スープで会場のリスナーに振る舞われた

 「こうやって本当の意味で体験できる場所っていうのは徐々に回数を増やしていきたいし、実際にここに生産者がいるような機会を増やしていきたいなと思います。単純に情報を伝えて販売するだけではなく、広い形で同じ思いを持つ仲間として大きなグループになっていくと良いと思うし、そういった『にほんもの』でありたいなと思います」と中田氏。その根底にあるのは、多くの人の生活を豊かにする糧をシェアしたいという切なる思い。そのための表現方法に日々、中田氏は思いを巡らせている。

番組概要

TDK VOICES FROM NIHONMONO

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:TDK VOICES FROM NIHONMONO
放送日時:毎週日曜12:00~12:54
出演者:中田英寿、笹木かおり

番組サイト番組公式Instagram(番組ハッシュタグ: #にほんもの)

VictorySportsNews編集部