スタジアムに虚しく響き渡ったネイマールコール。怪我明けで大阪では出場せず

　昨年の熱狂再びー。昨年のジャパンツアーは、リオネル・メッシ、キリアン・エムバペ、ネイマールと世界的名手３選手のいるPSGに、日本のファンは興奮した。しかし1年後、再び来日したPSGは、今のところ昨年の熱狂とはほど遠い状況となっている。

　メッシが退団し、エムバペが直前で来日取りやめになったPSGに、大阪に集まった観客の反応は正直だった。試合会場のヤンマースタジアム長居には空席が目立った。今ツアーの目玉であるかのように、ネイマールがツアーポスターの中央に配されていた。しかし、ネイマールはベンチ入りしたものの最後まで出場することはなかった。そして、2試合とも後半の途中に、スタジアムの客席から何度も「ネイマール！ネイマール！」の大合唱が響いた。

　それでも大阪のサッカーファンはPSGの来日を楽しんでいた。7月24日夜に行われた有料の公開練習では、指定席3500円、小中高生1500円とまだ手頃なこともあって、2230人のファンが集まった。大阪での2試合ではプレーしていないネイマールだが、この時の公開練習ではシュートやフリーキックなど、全てのトレーニングメニューをこなしている。また、ネイマールはサッカー少年少女たちからの声援にも応えていた。練習を見た子供たちに感想を聞くと、やはり一様に「ネイマールが見られて良かった」と喜んでいた。

第1戦を盛り上げてくれたのはロナウドだった

　大阪での第1戦、アル･ナスル戦では、相手チームにクリスティアーノ・ロナウドがいることもあって、PSG対ロナウドという構図で注目の試合となった。今回来日したPSGには、ブラジル代表マルキーニョスや、イタリア代表ヴェラッティにドンナルンマ、スペイン代表アセンシオ、フランス代表リュカ・エルナンデスと、錚々たるメンバーをそろえているが、フィールド上にエムバペ、ネイマールがいないチームは、攻撃に迫力と魅力が欠けていた。

　代わりに盛り上げてくれたのが、ロナウドだった。38歳にもかかわらず、打点の高いヘディングシュートを見せるだけで、大阪のファンはどよめいた。そして、得点こそ決められなかったが、右サイドからのクロスボールに対して、オーバーヘッドキックを試み、スタジアムに足を運んだファン・サポーターを沸かせた。しかし、平日開催とはいえ観客は2万5432人で、ゴール裏エリア以外、高額チケットエリアでの空席が大きく目立ってしまった。

　さらに残念だったのが、選手の声をほぼ拾えなかったこと。試合後の会見が当日になって取りやめになり、ミックスゾーンにはPSGが選手たちを通させず、辛うじてPSG側が対応許可したポルトガル代表ダニーロ・ペレイラのみ取材を受け、「日本の観客は礼儀正しく、温かく、素晴らしいサポートもしてくれた」と感謝の弁を伸べていた。

　また、ミックスゾーンで雑談していた今ツアーのアンバサダーを務める、パトリック・エムボマ氏がいたので、選手たちの代わりと思って、コメントをお願いしたところ、快く対応してくれた。PSG、ガンバ大阪等で活躍した元カメルーン代表は、苦笑いしながら「ファンの皆さんがネイマールコールしていた気持ちはよくわかる。怪我から回復していないから難しかったのかもしれない。私もネイマールが出てくるのを楽しみにしたけど、次の機会こそ…」と話した。

第2戦の主役はセレッソ大阪・香川真司

　第2戦セレッソ大阪戦は、地元チームのホームスタジアムの試合だけあって、PSGのジャパンツアーというよりはセレッソのホームゲームといった趣に。ゴール裏に陣取ったセレッソサポーターがチャントで盛り上げていた。PSGは、サポーターの後押しを受けたセレッソ大阪に大苦戦。ヒューゴ・エキティケやヴィティーニャといった期待の若手がゴールしたものの、ゴール前の迫力には欠けていた。選手たちは要所で魅せてくれていたが、高額チケットに見合うだけの内容ではなかった。この試合でも一番盛り上げてくれたのは、PSGの対戦相手側。元日本代表のエースであり、現在はセレッソの中盤に君臨する香川真司が、右足でカーブをかけた美しいゴールを決め、それが決勝点となり、PSGは2対3で敗れた。結果的に大阪の地元ファンが大喜びする展開ではあったが、PSGにとってはふがいない試合を連続して見せる羽目になった。

　この日の試合後もPSGは試合後会見を行わなかった。ミックスゾーンも再び全選手が通らず、唯一、PSG側が「この選手ならいいよ」と出してきたのが、先制点をアシストする活躍を見せたザイール＝エメリだった。17歳の新鋭は緊張した面持ちで「相手はシーズン中、こちらはまだシーズン前という難しい試合だった。暑さも湿度もあってきつかった。（香川はどう思った？）すごく良い選手だね」と日本の報道陣の質問に答えた。ただ、期待の選手とはいえ、フランスメディアの記者に尋ねると「将来性のある選手ではあるが、まだそこまで重要な選手ではない」と教えてくれた。PSG側がなぜ日本で取材対応する選手に彼を選んだのか、理解に苦しむ人選ではあった。

　また、この試合でもネイマールはベンチ入りしたものの、出場することはなく、再びネイマールコールが試合中に発生していた。そして、入場者数は3万2430人と、第1戦に比べて多くの観客が集まったが、それでもメインスタンドやバックスタンドの空席が目立っていた。

　何人かの観客に試合後、感想を聞いたところ「ネイマールが見たかったけど、第1戦のこともあったし、特に出場は期待してなかった」という声が意外と多かった。また、PSGのファン仲間で、それぞれ東京、埼玉から来ていた男性2人女性1人の3人組に感想を聞くと、「エムバペ、ネイマールが出ていないことは全く気にしていませんでした。逆にPSGの期待の若手選手のプレーが見られて良かった」と満足していた。コアなファンは意外にも満足していたが、やはり会場内で声を聞く限り、チケットの高さを嘆く声が大半ではあった。

PSGの大阪での活動は残念な結果に…

　大阪でのPSGでの活動で気になったのが、直接ファンと触れ合う場もほぼ無かったところだ。東京では7月30日、31日とサッカークリニック、公開練習が行われ、またナイキのイベントとそれなりに交流の場はあった。しかし、大阪では実質24日の公開練習のみ。

　実際のところ、PSGの大阪滞在時に選手と交流できるチャンスが一番あったのが、滞在先のホテルだった。どこから知ったのか、多くのファンがホテルに集結。バス移動の前後を狙ってサインをお願いし、一部のファンたちはサインをもらうことが出来ていた。PSGはせっかく1週間も大阪滞在をしているのだから、オープンな場でのイベント等をもう少し開催して、ファンたちとの交流をすればよかったのではないか。

　日本でふがいない試合を見せているPSG。インテル・ミラノ戦こそ観衆を納得させるだけの試合を提供できるのか。そして、ネイマールは出場してくれるのか。昨日の公開練習では軽快にプレーしていたこともあったので、出場の期待がかかる。PSGジャパンツアー、最後くらいは綺麗に締めて欲しいものだ。第4戦「PSG vsインテル」のキックオフは本日19時。今夏に来日した海外クラブのラストマッチを飾る豪華対戦に期待したい。