人生をかけたオーディションが中止。いきなり閉ざされたダンサーの道

ー一度ダンスの道から離れられて、もう一度高校生のときにダンスの道に戻ってきたというお話を前回うかがいましたが、今回はそこからdip BATTLESの一員になるまでについてお聞きかせください。

KENSEI:元々は大学に進学したいなと思っていて。なんなら小学校のときから、公務員になりたいなという思いがあったんですよね。(笑)定時に帰れて、安定していて、老後も年金とかがあって、安定していそうだなと。あとは親からもやっぱりそういうところを勧められたりしていたので。

ただ、同じダンススタジオに通っていた大学生が、その後社会人になって「もっとダンスやりたいんだけど、時間がなくてできないんだよね」みたいなことを言っていたりとかして。そういう姿をみて、自分自身は違う道に挑戦したくなったというか。周囲への反発っていう部分もあったとは思うんですけど、ダンスの道で生きていこうという風に考えるようになりました。

ーそうはいってもなかなかダンスでご飯を食べていくとなると、なかなか大変なのかなと思うのですが。

KENSEI:ちょうどその当時、LDHさんが過去最大級のオーディションを開催するということになって。高校の先生にも進路選択のときに、そのオーディションを受けて、ダンサーとして生きていくと伝えていました。

ただ、ちょうどコロナ禍になってしまい、オーディション自体が中止になってしまって。その後は地元で少しバイトをしながら暮らしていたんですが、コロナが少し落ち着いたタイミングで上京することにしました。

ー東京ではインストラクターだったりの伝手などはあったりしたんですか?

KENSEI:いや、まったくあてはなくて。(笑)東京に友達が一人だけいたので、そこに居候させてもらって、バイトしたりしてましたね。しかも最初は東京があつすぎて、一ヶ月間外に出られなかったんですよね(笑)。

ーそこからDリーグに出会われたわけですね。

KENSEI:最初は正直Dリーグがどういうものかあんまりわかっていなくて。ただdip BATTLESでデビューする前に、一度他のチームにSPダンサーとして出させてもらう機会があったんです。

そこで楽しかったっていうのもありましたし、そのときに「もっとできることがあるな、もっといい作品を作れるな」と自分自身思ったんですよね。チーム外の立場だからこそ、見える部分もあって。作品作りの部分でも、もっと良い作品ができるだろうと思って、「全部変えよう」とか伝えたりして(笑)。メンバーとああでもないこうでもないと議論して、作品を作り上げることができました。そのラウンドでは二位だったんですけど、そこで手応えを感じる部分はありました。

※2020-21シーズンの採点ルールは現在とは異なっており、ラウンド毎に順位が出る形式

ベストスキル賞を獲得するなど、飛躍の2022-23シーズン

ーそこからdip BATTLESに加入されるにいたった経緯を教えてください。

KENSEI:当時、サブディレクターだったTOSHIさんのことをすごく自分自身尊敬していて、そのTOSHIさんからお声掛けいただいたので、加入してみようと決意しましたね。

ー21-22シーズンから加入されて、1年目のシーズンはどういったシーズンでしたか?

KENSEI:まだ初年度のチームだったので、まだまだチームの土台を作っていく、というシーズンでしたね。いろんなスタイルの選手がいるということもあって、チームとしてまとまっていくのには時間がかかるだろうなとは思っていましたし。

ーそして22-23シーズンでは、MVDを獲得されたり、ベストスキル賞を獲得されたりと、結果もついてきたシーズンなのかなと思うのですが。

KENSEI:正直、まだ21-22シーズン同様、自分ではまだそんなに期待していないシーズンではあったんですよね(笑)。ただ、他のチームで取り入れていない要素をうまく取り入れることで結果が出たのかなという手応えはありました。白目を剥くような、ストリートっぽいスタイルを取り入れたチームが他にはなかったので、そういう部分のトライがうまくいったのかなと。

ーあとは最終戦、初のスイープ勝ちをおさめられた際に、ステージ上で涙を浮かべられていたのが印象的でした。

KENSEI:それまで、オーディエンスの票だけは絶対に取れなくて。会心の出来だった時も、5-1でオーディエンスは取れなかったんですよね。もう半分オーディエンスに関しては諦めていたというか。そんな中で、最終戦、チャンピオンシップにはもう出られない状況だったんですけど、対戦相手に元々dip BATTLESにいたKarim(現LIFULL ALT-RHYTHM所属)がいて。仲が良いということもあって、絶対に負けたくないなと思っている中でスイープで勝てて。なおかつ、Karimも泣いているのが見えて、自分も涙を堪えきれずっていう感じでしたね。

※Dリーグはジャッジによる採点5項目と、オーディエンスによる採点の1項目の合計6項目で点数を競う形式


KEISEI プロフィール
6歳からダンスをはじめ、dance studio sugarhillに通いながらP→★から教えを受ける。7歳になったころからダンスバトルに出場し「avex セブン&アイ ダンスコンテスト」で全国優勝するなど、全国的なダンスシーンで活躍中のPOPPINGを得意とするダンサー。

2021年から「dip BATTLES」の選手として活動。選手としてMVD(22-23シーズンROUND2)やベストスキル賞(昨シーズン)を獲得するなど、輝かしい成績を残し、23-24 SEASONからD.LEAGUE 史上最年少となる21歳という若さで、ディレクター兼選手に就任し、チームを牽引する、今シーズン注目のダンサーである。


dip BATTLES
ディップ株式会社が運営し、2021-22シーズンからD.LEAGUEに参戦しているプロダンスチーム。「新時代をつくる」をシーズンスローガンに掲げ、2022-23シーズンにMVD2回、ベストスキル賞を受賞したKENSEIがDリーグ史上最年少ディレクターとしてチームを牽引する。


山田浩平

東京大学在学中にスポーツメディアを立ち上げ、株式会社VICTORY代表取締役に就任。 様々な事業会社で、スポーツを中心としたエンタメ領域の新規事業の立ち上げやサービスのリブランディングなどに従事。