まず1人目は、ミキハウス(八尾市)に今年新加入した元巨人・桜井俊貴投手。現役引退を決め、一度はユニホームを脱いだ右腕だったが、今年同社で現役復帰を果たした。

 桜井は立命館大から2015年にドラフト1位で巨人へ入団。プロ初勝利を挙げた2019年は自己最多となる8勝をマーク。2021年以降は中継ぎとして腕を振るも、翌2022年のオフに戦力外通告を受けた。同年11月に行われた12球団合同トライアウトに参加するも、他球団からのオファーはなく現役引退を表明。翌2023年からは巨人のスカウトに就任した。しかし、同年の12月に社会人野球・ミキハウスで現役を復帰することを表明。同社のHPによる発表によると、「桜井選手の母校の立命館大学硬式野球部OB会の会長であり、ミキハウス野球部の前身である「ミキハウスREDS」でも監督を務めた藤岡重樹さまのご紹介がありました」と復帰の経緯が説明されている。スカウトとして、ミキハウスの試合を視察することもあった桜井は現役復帰を表明した翌月、2024年1月からチームに合流。同社のHPを通じ、「感謝の気持ちを忘れず、全力プレーでチームに貢献していきます。ご声援のほど、よろしくお願いいたします」と決意を新たにし、もう一度ユニホームをまとった。

 1年ほど現役を離れていたが、都市対抗出場をかけた近畿地区2次予選では4試合に登板。そのうち2試合で先発マウンドを託され、いずれも完投勝ちを挙げてチームを勝利に導いた。日本製鉄瀬戸内(姫路市)との第2代表決定戦では4点リードの9回からマウンドへ。相手打線に得点を与えず、大学時代に登板経験のあるわかさスタジアムで胴上げ投手に。ブランクを感じさせない活躍を見せ、チームの4年連続5回目の都市対抗出場に大きく貢献した。都市対抗野球が開催される場所は、かつて所属していた巨人の本拠地・東京ドーム。2年ぶりのマウンドでどんな投球を見せてくれるのか。目が離せない。


 2人目は、三菱重工West(神戸市・高砂市)に今年から加入した元阪神・北條史也内野手。光星学院高から2012年ドラフト2位で阪神入団。通算455試合に出場し、打率.255、18本塁打。昨年は1軍出場がなく、オフに戦力外通告を宣告された。それでも現役続行を希望。今年、オリックス・辻垣高良投手、前年度までは三菱重工Eastに所属していた元巨人・山下航汰外野手らとともに新加入。4月に行われたJABA岡山大会からスタメン出場を果たすなど、存在感を発揮した。

 都市対抗出場をかけた近畿地区2次予選では全4試合に二塁手として先発出場し、毎試合安打をマークするなど、11打数4安打4打点、打率3割6分4厘の成績を残して打棒をけん引。日本製鉄瀬戸内との第3代表決定戦では値千金のタイムリー二塁打を放つなど、1安打2打点の活躍。北條のバットで打線も厚みを増し、チームは4年連続40回目の都市対抗出場を決めた。その後行われたJABA北海道大会でも出場全4試合で「H」ランプをともすなど、打率3割5分7厘をマーク。本大会でも持ち前の打棒を披露し、チームの勝利に貢献してみせる。


 3人目はヤマハ(浜松市)に所属する元DeNA・網谷圭将外野手。千葉英和高を経て、2015年の育成ドラフト1位でDeNAに捕手として入団。内野も守ることができ、イースタン・リーグの公式戦では4番を務めることもあったが、支配下登録を勝ち取ることはできず。2018年オフに戦力外通告を受け、1軍公式戦出場のないままNPBを去った。

 翌2019年にヤマハ硬式野球部に内野手として入部。1年目から頭角を現し、チームとしては3年ぶりとなる都市対抗出場に貢献。本戦でも、全2試合で6打数3安打と元NPB戦士としての意地を全国の舞台で見せつけた。2020年からは外野手として、打線をけん引。昨年は東海地区2次予選から都市対抗までの全10試合で4番を任され、JR東日本東北(仙台市)との2回戦では、本大会では自身初となる本塁打を放った。トヨタ自動車との決勝は2-4で敗れて優勝こそ逃したものの、全5試合で19打数8安打、4打点、1本塁打の活躍。打率4割2分1厘と圧巻の成績を残し、優秀選手(外野手)に選出され、久慈賞(敢闘賞)にも輝いた。

 昨冬はDeNAに所属していた2016年以来、7年ぶりに「2023アジアウインターベースボールリーグ」にJABA選抜として参加。全チーム最多の27安打、打率4割4分3厘もプロを含めた日本人選手の中ではトップの成績を残した。2023年度のベストナイン(外野手)を受賞するなど、充実の1年となった。社会人野球6年目を迎えた今季は4月上旬に行われたJABA静岡大会で打率4割をマークし、最高殊勲選手賞を受賞。4月下旬に開催されたJABA京都大会では全5試合に出場し、3本塁打を記録。驚異の打率5割2分4厘の数字を残し、首位打者賞と敢闘賞に輝いた。両大会ともに決勝で敗れ、準優勝に終わっていたが5月に行われたJABA東北大会は見事、決勝でバイタルネットを下して優勝。網谷は打率5割と圧巻の成績で2大会連続首位打者に輝くなど、チームの日本選手権出場権獲得に大きく貢献した。チームは、東海地区2次予選を無傷の4連勝で勝ち抜き、第1代表として6年連続45回目の都市対抗出場を決めた。念願の黒獅子旗獲得へ、今大会も網谷のバットに期待がかかる。


 紹介した3選手のほかにも、MLBでも活躍した経歴を持つENEOS(横浜市)の田澤純一投手、三菱重工East(横浜市)に所属する元中日・武田健吾外野手、昨年ヤクルトから戦力外通告を受けて、今年から東邦ガス(名古屋市)に新加入した吉田大喜投手、昨年楽天から戦力外通告を受けて、今年から明治安田(東京都)に所属する和田恋外野手らも、都市対抗出場を決めている。本大会は本日7月19日に開幕。企業の名を背負う社会人野球に活躍の場を移した元プロ野球選手が全国の舞台に集い、どんな姿を見せるのか。注目したい。


VictorySportsNews編集部