そして、ファイナルラウンド(全国大会)はトーナメント創設以来、毎年宮城・石巻にあるセイホクパーク石巻(石巻市民球場)で開催されている。当球場は、2011年の東日本大震災時にアメリカ海軍の「トモダチ作戦」の拠点となり、特殊車両やヘリコプターなどで荒れ果ててしまったグラウンドをメジャーリーグベースボールとメジャーリーグベースボール選手会協力のもと再建された。本大会は、野球振興へ繋げる目的に加えて、東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方への継続的な復興支援の一環として開催されている。

セイホクパーク石巻(石巻市民球場)

 今大会で9回目を迎えたMLB CUP。今年は、地方予選から勝ち上がってきたリトルリーグ16チーム245名が集結し、7月26日からの3日間に渡ってファイナルラウンドが行われ、全国114チームの頂点を争った。

 大会期間中は、30℃近くの暑さに加え、降雨による中断を挟み、決して良い条件とはいえない中での試合になったが、最後まで諦めない全力プレーで戦い抜いた。そんな難しい状況での戦いとなった全国大会を勝ち抜き見事優勝を果たしたのは、神奈川連盟代表 横浜リーグ・青葉緑東。準々決勝の宮城リーグ・仙台東(東北連盟代表)戦では、0-8からの大逆転勝利でベスト4進出を決め、準決勝では、茨城リーグ・牛久(東関東連盟代表)に1点差の3−2と投手戦を制した。

 決勝戦は、選手11名で強豪に競り勝ってきた愛媛東リーグ・西条(四国連盟代表)と対決。初回から点の取り合いとなり、一進一退の攻防が繰り広げられた。5−4と1点差を追いかける4回に一挙4点を挙げ、そのまま逃げ切り神奈川勢として初めての栄冠に輝いた。西条も5回表にタイムリースリーベースヒットを含む3安打を放ち2点を返し、最後まで粘りをみせたが一歩届かなかった。

 優勝を果たした青葉緑東のキャプテン牧野くんは、「どんなに点差が開いてもベンチからたくさんの声をかけ、バッターが打ちやすい環境を作れるようにしていました。みんなが諦めずに戦い抜くことができたことが勝ちに繋がったのだと思います」と喜びを語った。

 さらに、本大会は、MLB Japanが主催していることもあって、少年野球大会のトーナメントでは珍しい「ホームランダービー」や元メジャーリーガーによる「野球教室」といったオリジナリティに溢れたプログラムが用意された。今年は、ニューヨーク・メッツやニューヨーク・ヤンキースなどで活躍した五十嵐亮太さん、オークランド・アスレチックス、サンフランシスコ・ジャイアンツでプレーした藪恵壹さんのお二人がゲストとして参加し、大会を盛り上げた。

ゲスト参加した元メジャーリーガー五十嵐亮太さん

 大会初日に行われたホームランダービーでは、各出場リーグの代表16名が本数を競い合い、出場選手最多の13本を放った城北リーグ・東練馬(東京連盟代表)の佐藤星亮くんが優勝を果たした。スイングを見守っていた五十嵐さんから「すごいね!」と思わず大絶賛のコメントが出るほどの豪快なホームランを連発した。

ホームランダービーを制した東練馬 佐藤星亮くん

 そして、トーメントと並行して行われた五十嵐さんによる野球教室は、レジェンドから直接指導を受けられる貴重な機会とあって、選手たちは1つでも多くの収穫を得ようと熱心に参加した。

五十嵐さんによる野球教室

 初めてのファイナルラウンドに参加した五十嵐さんは「勝ったチーム、敗れたチームはありますが、大会を通じて野球の楽しさを改めて感じてもらうことができた機会になったと思います。敗れてしまったチームは、今回の悔しさを忘れずに練習に励んでほしいです」とエールを送りました。

 MLB CUPは、2016年に創設されたばかりの大会ではあるが、昨年10月のドラフト会議にて、第1回大会に出場した山田脩也選手(当時、仙台広瀬リトルリーグ所属)が阪神タイガースから3位指名を受け、大会出場者初となるプロ野球選手が誕生した。今後も本大会に出場した選手からプロ野球選手、メジャーリーガーが誕生することを期待したい。

 現在、大谷翔平選手をはじめとする日本人メジャーリーガーがMLBの舞台で大活躍し、日本でもプロ野球に負けないくらいの盛り上がりをみせている。MLBが少年野球大会の主催をはじめとする日本国内での野球振興を行うことで、子どもの頃からメジャーリーグを身近に感じることができたり、メジャーリーガーに興味を持つ良いきっかけに繋がるだろう。来シーズンのメジャーリーグ開幕戦、ロサンゼルス・ドジャース対シカゴ・カブスの試合が東京ドームで行われることも発表された。今後もメジャーリーグ熱は高まっていくばかりだ。

AIG Presents MLB CUP 2024 ファイナルラウンド in ⽯巻 試合結果

優勝 :横浜リーグ・⻘葉緑東(神奈川連盟代表)
準優勝 :愛媛東リーグ・⻄条(四国連盟代表)
第3位 :茨城リーグ・⽜久(東関東連盟代表)
第3位 :埼⽟イーストリーグ・川⼝(北関東連盟代表)


VictorySportsNews編集部