招待選手にはあの人も

 名称は「FunTrails Round 秩父&奥武蔵」で、11月16日(土)~17日(日)に埼玉県秩父市を拠点に開かれる。2015年に始まり、今年が第10回の記念大会。三つのカテゴリーに分かれており、FTR100MILE(162km)とFTR100K(105km)はともに、参加条件が20歳以上でレースの制限時間は32時間。FTR50K(54km)は高校生を除く18歳以上で、制限時間は12時間となっている。

 9月には東京・神田のスポーツショップで事前イベントが行われ、コース設計者でトレイルラン団体「FunTrails」の奥宮俊祐代表と一般ランナーとのトーク企画が繰り広げられた。奥宮代表は「わくわくすること」や「イメージトレーニング」といった心構えから、コースの攻略ポイントや装備、レース中の夜間対策など実践的なアドバイスを伝授。同時に地域の人たちや運営ボランティアへの配慮にも言及し、参加者と地元住民が一体となって楽しめる大会にするとの並々ならぬ意欲も示した。

 大会前日の11月15日(金)の17時からは「カーボローディングパーティ祭」と称される前夜祭が開催され、地元秩父の名産を用いつつ、翌日のレースのエネルギーに直結するような料理が振る舞われる予定。レース本番前から祝祭感に包まれそうだ。FTR50Kに招待選手として出場するタレントの井上咲楽さんは大会フェイスブックに「たくさんの方からFTR秩父は魅力的だよ〜!と教えていただいていたので、走らせていただけることになってとってもうれしいです」とのコメントを寄せた。

長距離競技に適した優れもの

 スポンサーの一つがDM三井製糖株式会社。「スプーン印」や「ばら印」の砂糖でおなじみだ。同社は大会に向けて、天然の糖質である「パラチノース」を提供する。これがトレイルランやマラソンなど持久系競技に適した優れもの。砂糖と同じくブドウ糖と果糖がつながった二糖類でエネルギー量も同じだが、体への吸収スピードが砂糖の約5分の1という特性を持っている。ランナーたちからは甘すぎず、おいしい糖質として親しまれている。奥宮代表は「パラチノースに出会ってからは、甘すぎずにエネルギー補給できて持続するというのがあり、腹持ちが良くなった。僕は本当に助かっている」と高評価。ビジネスや勉強の際にも効果を発揮しそうだ。

 さらに今回は、会場のお膝元となる秩父市や秩父郡の飲食店とのコラボレーションが実現し、パラチノース配合の限定メニューを展開。例えば、フランス菓子専門店ではレモネードソーダ、カジュアルフレンチレストランではレモンソーダやシフォンケーキが用意される。地元食材を生かしたメニューが売りの食堂ではラムネやおからバーに配合。ユズやカボスのホットドリンクを販売するキッチンカーも出店される。

 店舗によって提供期間は異なるが、スポーツの秋、行楽の秋に紅葉を眺めながらパラチノースの配合された飲食物を堪能。ランナーだけではなく、地元住民にもレース到来の雰囲気が伝わり、地域一体の機運醸成が期待される。

原点になったハセツネとは?

コース設計者でトレイルラン団体「FunTrails」の奥宮俊祐代表

 コースを設計し、大会運営にも携わる45歳の奥宮代表は熱心な活動で、トレイルランの世界で関心を呼んでいる。埼玉県三芳町出身。スポーツ系メディアの出演実績があり、トレイルランナーの先駆者の1人だ。中学から長距離を走り、東海大時代に箱根駅伝を目指したが出場を果たせなかった。25歳の時には心臓の違和感の原因が不整脈と判明。手術を受けて完全回復した。走る喜びを再認識していたタイミングで国内におけるトレイルランの草分け的な大会、日本山岳耐久レース(通称・ハセツネ)に参加し、競技にはまったという。

 大会通称の「ハセツネ」とは何を意味するのか。これは世界的な登山家で1991年にパキスタンのウルタル峰で遭難死した長谷川恒男(はせがわ・つねお)さんを指す。長谷川さんは世界で初めて欧州アルプス三大北壁のマッターホルン、アイガー、グランドジョラスの冬季単独登頂を成し遂げた。また南米大陸最高峰のアコンカグア南壁の冬季単独登頂に成功するなど、世界に名前をとどろかせた。日本山岳耐久レースの大会公式サイトによると、長谷川さんは生前、レースを主管する東京都山岳連盟に所属しており、数々の業績をたたえて「ハセツネCUP」が設けられた。

 奥宮代表は「ハセツネ」に初参加したときの心境をこう語った。「手術後、走るのってこんなに気持ちいいんだと思った」。地域活性化につながってみんなの楽しいを実現―。世界的クライマーの息吹を感じながら、秋の秩父を彩る魅力的な大会が待っている。


VictorySportsNews編集部