興味が尽きないサポーティングカード

 世界戦に出場する4選手全員が全勝レコードの持ち主というだけでも興味がそそられるが、当日はこの2試合だけではない。世界戦以外の4試合のサポーティングカードがこれまたボリュームたっぷりなのだ。

 カードは次の通り。小林豪己(真正)−高田勇仁(ライオンズ)のWBOアジアパシフィック・ミニマム級タイトルマッチ。下町俊貴(グリーンツダ)−平野岬(三松スポーツ)の日本スーパーバンタム級タイトルマッチ。渡邊海(ライオンズ)−奈良井翼(RK蒲田)のライト級戦。佐々木尽(八王子中屋)−坂井祥紀(横浜光)のOPBF(東洋太平洋連盟)&WBOアジアパシフィック・ウェルター級タイトルマッチ。

 渡邊−奈良井戦のみノンタイトルマッチ(10回戦)だが、これは実質的な統一戦と言っていい。というのも、2人ともスーパーフェザー級の現役タイトルホルダーなのだ。WBOアジアパシフィック王者(渡邊)と日本王者(奈良井)が激突するという構図に変わりはない。

 世界タイトルのみならず地域タイトルも含め、時代が進むにつれて「王座」の数は多くなるばかり。JBC(日本ボクシングコミッション)もWBA(世界ボクシング協会)、WBC(世界ボクシング評議会)以外にIBF(国際ボクシング連盟)とWBOの世界王座統括団体を公認して10年以上が経つ。この間、WBOの地域限定タイトルであるWBOアジアパシフィック王座も認め、従来のOPBF王座と同格として扱われてきた。これに日本王座を加えた3タイトルが、世界に挑むまでの関門として一般的に認知されているわけだ。

価値あるノンタイトル戦

 タイトルが増えたぶんチャンピオンが増えるのは自然な流れである。その観点からも渡邊−奈良井の一戦はノンタイトルマッチとはいえ価値あるマッチメークと言える。地域王者たちに積極的な対戦を促し、勝ち残ったものが世界挑戦に前進するパターンこそ王道だからである。

 本来のスーパーフェザー級より1階級重いライト級(61キロ契約)での試合となるため、ルールにより負けたほうも自身のベルトは手元に残る。しかし奈良井が「勝ったほうが世界に近づける」と言い、渡邊も「まずこの試合に勝って、国内にはまだ強い選手がいるので、それに勝つ」と話すように、両者はこの試合の性格を強く意識している。タイトルがかかっていなくとも、誰もがこれをサバイバルマッチとして見るのは間違いのないところなのだ。

 チャンピオンの実績では日本チャンピオンの奈良井が上回る。今年4月、2度目の日本タイトル挑戦で時の王者原優奈(真正)からダウンを奪い、圧倒の5ラウンドTKO勝ち。8月には1位挑戦者の福井貫太(石田)を判定で退けて初防衛に成功した。ここまで14勝10KO2敗の戦績で、派手な倒しぶりを見せるが、フットワークと左ジャブを駆使した出入りのボクシングに定評がある。

 一方の渡邊は13勝7KO1敗1分。8月の王座決定戦で鈴木稔弘(志成)を開始89秒で衝撃のKOに下し戴冠したばかりで、まさに新進気鋭のチャンピオンだ。177センチの長身から繰り出す強打は折り紙付きだが、アマチュアで数多くの実績をおさめている鈴木を臆せず攻め、フィニッシュに持ち込んだ手際のよさも見事だった。

 奈良井が24歳、渡邊が22歳と若い両者の対決であることも興味深い。世界に駆け上がる瑞々しいホープ同士の一戦を存分に味わいたい。

 ちなみに同じリングで行われる小林−高田のWBOアジアパシフィック・ミニマム級戦も、挑戦者の高田は負けないまま日本王座を返上したばかり。これもチャンピオン対決に近い一戦とみることができる。昭和の名選手ライオン古山が興したライオンズジムはプロ選手が片手で数えられるほどの小規模ジムだが、看板選手2人を一挙に重要試合に送り出すのだから強気だ。


VictorySportsNews編集部