里崎監督の考える「プロスピA」の魅力

── 自身が監督をつとめるスピリーグ第3節、お疲れさまでした。里崎監督自身もプロスピAをかなり熱心にやられているという印象を持ってまして、どういったところにプロスピAの魅力を感じているのでしょうか?

ここまでインターネット社会になってくると、会ったこともないプレイヤーと対戦できることこそが本当のリアリティを生むわけじゃないですか。

従来の野球ゲームは、既存のソフトの中で、コンピューターと戦うだけでしたよね。

プロスピAは全国のユーザーと戦えるわけじゃないですか。しかも「競い合いながら」というのが、多くの人のモチベーションに繋がっている。

プロスピAに限らず、今のインターネットゲームがほぼそうじゃないですか。別にプロスピAじゃなくても。

遊びっていうところの広がりが出てるところなんじゃないですか。その、もうインターネット社会になって。


── 何かシステム面で「ここがよくできている」であったり、面白いなと感じた部分はありますか。

一番は選手の姿にリアリティがあるという点ですね。

フォロースルーとか、フォームが忠実で良いし、それを多くのユーザーは喜んでるんじゃないですか。

「若年層の野球離れ」は国策の問題

── ここからはプロスピAが実際の野球シーンに及ぼす影響についても伺いたく。世間では「若年層の野球離れ」という話もありますが、まずこちらについてご見解を伺いたく。

まず「若年層の野球離れ」については、当たり前というか別にびっくりするようなことでもない。

少子化で人口が減って、スポーツが多様化してるのに「野球人口めっちゃ増えてんぞ」というのは起こり得ない。

これは国策の問題であって、別に野球界がどうすることでもないんですよ。


── もう、おっしゃる通りなので、このままこの質問を続けるべきか迷っているのですが、最近は「プロスピA」などの野球ゲームを若い子たちが遊んでくれています。これが多少は野球人気に繋がるというのはありますか。

野球人気というのは「する人」もいるし「見る人」もいる。それに携わる人もいるわけですよ。

(リアルにせよ、アプリにせよ)全員がプレーするわけじゃないんです。

現状のプロ野球も観客動員数は増えているので「人気である」といえるわけじゃないですか。人気かどうかは競技人口に比例しないんですよ。


── 答えづらい質問になってしまいますが。もし、里崎さんの視点で「野球が盛り上がってる or 盛り下がってる」を見極める指標のようなものがあるのであれば、何かお伺いできればと思っていたのですが。

「何をもって人気なのか」というのがないから分からないですね。だからもう大げさに言うと「プロ野球12球団」があり続ければ、人気が維持できているってことなんじゃないかな。

なので、プロ野球の球団数が減ったときは「野球の人気がなくなったんだな」ってことなんじゃないですか。

里崎流「失敗」と「成功」論

── 現役時代での挑戦、後悔などのエピソードの中で、今後のスピリーグ監督の活動で活かせると考えていることをお聞きできればと思っているのですが。

僕は自分の人生で後悔したことは1つもないですね。

みんな「あのとき○○しておけば良かった」と言うんです。

でもそれは、今の知識があるから言えるわけであって、その時に持っている知識で選択したことが全てなんだから、それ以外の選択はできようがないんです。

だから「あのとき○○しておけば良かった」と考えるだけ無駄。

「1歳の頃からステーキ食っておけば良かった。そうしたら、もっと体が大きくなっていたかも」と後悔しているようなものなんです。


── 普段から後悔をしている人たちは、どのようなマインドになるべきなのでしょうか。

僕は反省はするけど、後悔はしないんです。

もし失敗があったとしても、それについて正しく反省して、失敗を活かして成功したら、その失敗も成功体験の一部になるんです。

「未来にどうするか」という「過去の反省はする」のですが、悔やんだことは一度も無いです。

前提として、失敗なんかしない方がいいじゃないですか。失敗してしまった場合、仕方なくそれを成長の糧にして、成功に繋げていくだけであって、基本的には自分の思惑通りに進む方が絶対にいい。

例えば、車を運転していて、事故をせずに一生を過ごしたほうが良くないですか。「1回、事故をしたほうが、事故の大変さが分かるぞ!」とか誰も言わないじゃないですか。


── 最近、ビジネスシーンでは「失敗していないのは、挑戦していないからだ」という格言のような言葉を耳にしますが。

ビジネスシーンにおいても、挑戦し続けた上で、全てを成功させている人もいるはずですよ。

「10億円を借りて事業に挑戦や!成功して100憶円になった!また別の事業や!気づいたら1兆円規模や!ノーミスや!」

これも挑戦しているじゃないですか。

それは「失敗」ですらない、プロセスが間違っている

── なるほど。成功者バイアスの逆といいますか。失敗を美談にしている人たちの声が大きくなりすぎているだけなのかもしれませんね。

そうそうそう。失敗談が無い成功者って、書籍化の話が来ても、書くことがないから書けない。「人生とんとん拍子でいきました!」では本にならない。

それは本人がラッキーだった可能性もあるけど、能力が高かったからというのもある。大事な局面での、選択を間違えなかったんじゃないかな。

例えば、井上尚弥氏が「挑戦していないか?」というと挑戦している。でも負けてないんですよ。


── こういった質問をしておきながら、里崎さんが大きな失敗をしているイメージがあるわけではないのですが、ご自身の中で記憶に残っている失敗経験はあるのでしょうか。

野球なんて失敗の連続じゃないですか。だって3割しか打てない選手たちが1軍にいるんですから。打席に立っても7割は失敗していることになる。

でも、それって当たり前のことだから失敗とは言わないじゃないですか。

優勝するチームでも勝率は6割程度なんですよ。

だから、そもそも「失敗とは何ぞや?」という話でもある。
どれぐらいが失敗だと思いますか。


── 一般的には「試験に落ちた」や「合格の基準値に達しなかった」などが挙げられる気がします。

それについては、失敗ではなく、そもそもプロセス(取り組み方)が間違っていると思いますね。

ちゃんと「やるべきことをやりましたか?」という。

富士山に登ったことない人が、エベレストに登っているみたいなもの。「そもそも無理やろ?」っていう。


── 「無謀な挑戦は挑戦とはいわない」という言葉もありますが、まさにそういうことをおっしゃっているんですね。

そうそうそう(笑)。


── スピリーグに関する話を伺いに来たのですが、思わぬ「人生で大事なこと」を教えていただきました。里崎さんありがとうございました!


小川翔太

1987年生まれ。会社経営者。システムエンジニア→人材コンサルタントを経て(趣味のカードゲームで世界大会に出場したことをきっかけに脱サラ)2017年にメディア業界に飛び込む。5年に渡りeスポーツの取材を続け、これまで総勢100名以上のプロゲーマー&ゲーム関係者にインタビューしている。