12戦目の「リビエラマヤオープン」(5月22~25日、メキシコ・エル・カマレオンゴルフクラブ)では岩井千怜選手が初勝利をつかみ取り、20戦目の「AIG女子オープン(全英女子オープン)」(7月31日~8月3日、ウェールズ/ロイヤル・ポースコール・ゴルフ・クラブ)は山下美夢有選手が参戦初年度でメジャータイトルを奪取。続く21戦目の「ザ・スタンダード ポートクラシック」(8月14~17日、米国/エッジウォーターカントリークラブ)は岩井明愛選手が双子による同一年度のツアー優勝という歴史的快挙を達成した。
一方で、PGAツアー(米国男子プロゴルフツアー)も今年はイキのいい日本人選手がこぞって参戦した。
ツアー参戦2年目で初優勝を狙う久常涼選手を筆頭に、DPワールドツアー(欧州ツアー)でトップ10に入ってPGAツアーの出場権を獲得した星野陸也選手、コーンフェリーツアー(下部ツアー)からPGAツアーに昇格した大西魁斗選手、最終予選会で出場権をもぎ取った金谷拓実選手が世界最高峰の舞台に乗り込んできた。
2014年からPGAツアーで戦っている松山英樹選手を目標に、どの選手も準備万端でシーズンに臨んだはずだった。だが結果は今のところ惨敗だ。
松山選手が開幕戦の「ザ・セントリー」(1月2~5日、米国/プランテーションコースatカパルア)でツアー11勝目を挙げたのに対し、久常選手は24試合に出場して最高順位は4位タイ(バルスパー選手権)。星野選手は17試合に出場して最高順位は26位タイ(コラレスプンタカナ選手権)。大西選手は20試合に出場して最高順位は18位タイ(コラレスプンタカナ選手権)。金谷選手は23試合に出場して最高順位は5位タイ(ザ・CJカップ バイロン・ネルソン)。善戦はしているものの、勝利には手が届いていない(9月29日時点)。
女子選手はLPGAツアーで次々と勝つのに、男子選手はどうしてPGAツアーで勝てないのだろうか。小平智選手が優勝した2018年4月の「RBCヘリテージ」(米国/ハーバータウンゴルフリンクス)以来、松山選手以外の優勝者が1人も誕生していないのはいったいどうしてなのか。
その答えはもしかしたら、10月9~12日に日本で開催されるPGAツアー「ベイカレントクラシック Presented by レクサス」(神奈川県/橫浜カントリークラブ)で見つかるかもしれない。
同大会の前身は2019~2024年に開催された「ZOZOチャンピオンシップ」(千葉県/アコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブ)である。コロナ禍で米国開催となった2020年を除く5大会が日本で開催されたが、優勝争いに加わった日本人は松山選手ただ1人だった。2019年大会2位、2021年大会優勝、2022年大会40位タイ、2023年大会51位タイ、2024年大会46位タイ。2022年以降は上位に進出できなかったが、優勝1回、2位1回は開催国のエースとして十分な成績である。
それ以外の日本人選手の成績はどうだったかというと、トップ10に入った選手が総勢5人。2021年大会の金谷選手(通算5アンダー7位タイ)、2023年大会の石川遼選手(通算7アンダー4位タイ)、平田憲聖選手(通算6アンダー6位タイ)、久常選手(通算6アンダー6位タイ)、2024年大会の杉浦悠太選手(通算13アンダー6位タイ)。ただ、順位こそトップ10以内だが、優勝者とは7打差以上離れている。
地元開催で有利な条件がそろっているはずなのに、優勝争いに加われなかったのは、実力が違いすぎるということもあるが、PGAツアー仕様のコースセッティングに対応できなかったことも理由の一つだろう。
「ZOZOチャンピオンシップ」を現地で観戦して一番驚いたのは、10番ホールのティーイングエリアが通常営業の練習グリーンの上に設置されていたことだった。日本人の感覚であれば、いくら試合のためとはいえそこまでやる必要があるのかと思うが、PGAツアーの担当者は世界最高峰のクオリティーに仕上げるためには何でもやる。
今年の「ベイカレントクラシック Presented by レクサス」も、日本のレギュラーツアーとはセッティングをガラリと変える。横浜カントリークラブは2023~2024年に「横浜ミナト Championship ~Fujiki Centennial~」を開催しているが、フィニッシングホールだった18番パー3を今回は16番ホールとして使用する。そして10番ホールと11番ホールで使用した2ホールを大規模改修し、17番パー4(439ヤード)と18番パー4(475ヤード)に変更。優勝争いのクライマックスにふさわしいセッティングに造り替えた。
PGAツアーの担当者の目から見ると、昨年の日本ツアーのセッティングは物足りなく映り、PGAツアーにふさわしいセッティングにするには大規模改修が必要だったわけだ。ヤーデージ自体は7207ヤード(パー71)から7315ヤード(パー71)と距離がそれほど伸びたわけではないが、ホール構成の変更によってゲームの流れは大きく変わるはずだ。
ちなみに2024年の優勝者は米澤蓮選手で、優勝スコアは通算22アンダー。2023年の優勝者は中島啓太選手で、優勝スコアは通算13アンダーだった。それがPGAツアー仕様のセッティングになると、優勝スコアはどのくらいになり、どんな選手が上位に並ぶのだろうか。今大会でも松山選手が孤軍奮闘するような試合展開になれば、日本ツアーでいくら腕を磨いてもPGAツアーで勝てる力は身につかないことがハッキリする。
女子ツアーは2013年に中期経営計画を策定し、「世界で勝つ!」をスローガンにツアー強化策に取り組んできた。ところが男子ツアーは2013年に賞金王に輝いた松山選手を出場義務試合数で縛ろうとしてソッポを向かれた。このあたりから女子ツアーと男子ツアーの格差が広がりはじめ、「世界で勝てる女子ツアー」と「世界で勝てるかどうかは個人任せの男子ツアー」という構図ができ上がってしまった。この構図を打ち破るには、男子ツアーも組織一丸となって、世界で勝てる選手の育成に本腰を入れる必要があるだろう。
海外で女子選手がビッグタイトル続出も、男子選手はどうしてPGAツアーで勝てないのか
2025年のLPGAツアー(米国女子プロゴルフツアー)は、昨年に引き続き日本人選手が大躍進を遂げている。2024年に日本ツアーで8勝を挙げ、鳴り物入りで参戦した竹田麗央選手が5戦目の「ブルーベイLPGA」(3月6~9日、中国/ジャンレイク・ブルーベイゴルフクラブ)で幸先よく勝利を挙げると、9戦目の「シェブロン選手権」(4月24~27日、米国/ザ・クラブatカールトン・ウッズ)では参戦2年目の西郷真央選手がLPGAツアー初優勝とメジャータイトルを同時に手にした。
