「コレでCSでコロっと負けたら」。関西方面からは阪神の優勝直後から、CS不要論もささやかれてきた。
CSとは2004年にパ・リーグでプレーオフとして始まった。優勝したソフトバンクが負けるなど、短期決戦ならではの盛り上がりを見せたこともあり、2007年からセ・リーグでも導入された。名前は公募され、クライマックスシリーズと決まった。
導入の目的ははっきりいって、消化試合を減らすため。CS以前は優勝は1チームで、リーグ優勝が決定した後は消化試合になる。ファンの関心はタイトル争いなどに絞られて、順位への興味が半減する。3位のチームにもまだまだ希望が持てる形にしておけば、4位以下のチームも巻き込んでもうひと盛り上がりが期待できる。実際、プロ野球の観客動員は右肩上がりで、今季は史上最多の2704万286人を集めた。CS効果が人気を下支えしているといえる。
しかしながら、セパ6球団のリーグで半分の3位まで出場の可能性があるというのは、レギュレーションとしてはいかがなものだろう。30球団ある米大リーグは、プレーオフに出場できるのはナショナル、アメリカン2リーグ6地区の優勝球団と優勝以外の球団の勝率1、2位が出場できるため、12球団にチャンスがある。近年拡大されたとはいえ、30分の12で日本よりも門戸が狭い。たとえ借金を抱えていても3位に入ればCS出場の権利がある日本の制度設計は、勝者への配慮が足らないといえないか。
とはいえ、よくファンから声が上がる、「ゲーム差に応じてアドバンテージを2勝に増やす」とか、「勝率5割以下のチームは出場権利を喪失する」などの意見は現実的ではない。大リーグは1勝のアドバンテージがないことを考えると、1勝を先に与えられていることは決して小さなハンディではないからだ。借金チームはCS出場資格なしの声もよく上がるが、リーグ戦の結果によってプレーオフの日程が変化するのも興業的に難しい。
一番の問題点は1位チームが2位-3位の勝ち上がりチームを待つ時間が長く、試合勘を失ってしまうということだろう。勝ち上がってきたチームは勢いもある。宮崎で開催されるフェニックスリーグに参加したり、社会人チームと練習試合をしたり、各球団工夫しているが、暑さが和らぎ、スポーツ観戦にぴったりの季節に空白が生じるのは実にもったいない。そう考えると、思い切って3位チームを出場できないようにすればいいのではないか。
いろんな声があるが、球界周辺で広がっているのが、上位2球団進出セパたすき掛け方式だ。セの優勝チームとパの2位、パの優勝チームとセの2位が対戦する。勝ち上がったチームが日本シリーズを戦う。今年で言えば阪神ー日本ハム、ソフトバンクーDeNAが対戦し、勝ち上がれば阪神―DeNA、ソフトバンク―日本ハムのようにセ同士、パ同士の顔合わせになる可能性もある。新鮮味が出るし、クライマックスシリーズは新たなステージというブランディングもできる。同一リーグに負けることもないので、リーグチャンピオンシップの価値が失われることもない。
そもそも3位チームのCS進出は営業的なメリットは薄い。1位は本拠地で最大6試合、2位は本拠地で最大3試合開催でき、放映権、グッズ、飲食なども含めて大きな収益を見込めるが、3位チームは移動費など経費の持ち出しが多い。招待する形のホーム球団から一定の費用は支給されることがレギュレーションで定められているが、球団への収入はなく、勝てば勝つほど経費が膨らんでいく仕組みになっていることはあまり知られていない。
プレーオフに出場するチームすべてに日本一になるチャンスがあり、必ずしもリーグ勝者が日本シリーズに進めるわけではないのがCSの面白みではあるが、日程的な不公平感などが横たわり、なんだかすっきりしないのが現行のCSといえる。過渡期にあるのは間違いない。独走Vの阪神がよもやの敗退を喫するとCS改造の議論が進むことになりそうだ。
阪神CS敗退なら改造論必至!? 勝者への配慮が足らない制度設計に限界も
プロ野球のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージが本日から開幕する。セ・リーグはダントツで優勝を決めた阪神タイガースがファーストステージを勝ち上がってきた横浜DeNAベイスターズと対戦する。史上最速の9月7日にリーグ優勝を決め、この時点で2位に17・0ゲーム差をつけた歴史的独走Vだったが、アドバンテージは1勝のみ。
