25年のベイスターズは110本塁打、510得点、長打率.368がリーグ1位、打率.247がリーグ2位(1位は.250の巨人)、66盗塁、出塁率.303がリーグ3位(1位は100盗塁、.313の阪神)と軒並み高水準の打撃成績を残した。防御率もリーグ2位の2.94と全体では上位だったものの、阪神の2.21には大きく差を引つけられた形。やはり25年もチームカラー通り、強力な打線を武器に阪神以外の他チームを上回ったことでリーグ2位につけたといえるだろう。
もちろん、リーグVにはバウアー、ジャクソン、ケイの3人が抜ける先発をはじめ、投手陣の再整備が必要なことは明らか。ただ、この強力な打線を維持し、効率的に高い得点力を生み出すことも当然重要なテーマとなる。65試合で11本塁打を放ったオースティンがメジャーに復帰し、106試合に出場して打率.284をマークした桑原が西武にFAで移籍した中、効果的なオーダーを見出すことが求められる。
三浦監督のもとでコーチとして作戦面などを支えてきた相川監督は、就任会見で「セイバーメトリクスの統計学はかなり浸透している」と話し、ベイスターズが推進するデータ野球への造詣の深さをのぞかせた。打順構想についても「いいバッターは、たくさん打席に立ってほしい」との方針を示すなど、よりデータ面を重視した論理的な采配が見られそうな“相川ベイ” 。そこで今回は25年の客観的な打撃データを抽出し、現状での最適解を導き出す。
まず、改めて考えたいのが打順の考え方だ。米大リーグ、ドジャースで大谷が1番や2番に入るのも、セイバーメトリクスが浸透するメジャーならでは。セイバーメトリクスでは主に以下のような打順のセオリーがある。
① 打力上位3人が「1、2、4番」
② 「1番」は出塁重視で走力不問
③ 「4番」は長打重視
④ 「2番」は併殺を回避できる走力があるとベター
⑤ 打力4位が「5番」
⑥ 打力5位は「3番」
⑦ 「6番」以降は打力順
初回に2死走者なしで回りやすい「3番」が上位の中では重視されていないところなど、日本の“常識”では意外な部分もある。そして、ポイントは「打力」をどう判断するか。打者の力量を考える上でよく使われる指標が「OPS」,「RC27」「wOBA」だ。
「OPS」は「On Plus Slugging」の略で、長打率と出塁率を足し合わせた数値。選手がチームの得点にどれくらい貢献できているかを表すもので、日本でも基本の指標の一つとしてみられるようになっている。25年シーズンのベイスターズで150打席以上に立った選手の数字は以下の通りだ。(数値の目安:1.00=MVP級 900=ベストナイン級 .800=オールスター級 平均は.700前後 ドジャース・大谷は1.014)
《OPSランキング》
① .876 筒香
② .800 牧
③ .775 蝦名
④ .727 佐野
⑤ .725 宮崎
⑥ .664 山本
⑦ .662 石上
⑧ .662 度会
⑨ .640 松尾
⑩ .620 梶原
⑪ .615 林
⑫ .555 三森
⑬ .532 京田
※オースティンは.834、桑原は729
※規定打席以上での12球団トップは阪神・佐藤輝の.924、パトップは日本ハム・レイエスの.861
「RC27」は、ある打者1人で打線を組んだ場合に1試合27アウトを取られるまで挙げられる得点数を表す指標。『「1番」から「9番」まで全員が牧だったら何点取れるか』といった仮定による数値だ。RCは「Runs Created」の略で、出塁能力と進塁能力を一定の指数から割り出し、RC27は「RC÷(打数-安打+犠打+犠飛+併殺打+盗塁死)×27」で計算。DeNAで150打席以上に立った選手の値は以下のようになっている。(数値の目安:9.0=MVP級 7.0=ベストナイン級 6.0=オールスター級 平均は5.0前後、ドジャース・大谷は8.6)
《RC27ランキング》
① 5.84 筒香
② 5.51 牧
③ 5.43 蝦名
④ 4.57 佐野
⑤ 4.28 宮崎
⑥ 3.88 山本
⑦ 3.70 石上
⑧ 3.65 度会
⑨ 3.26 林
⑩ 3.19 梶原
⑪ 2.80 三森
⑫ 2.19 京田
※オースティンは5.46、桑原は5.09
※規定打席以上での12球団トップは阪神・佐藤輝の7.27、パトップは日本ハム・レイエスの6.38
最後の「wOBA」は「weighted On Base Average」の略で、打者が1打席あたりにどれだけチームの得点増加に貢献したかを示し、総合的な打撃力を表すとされる。計算式は「敬遠を除く四球」「死球」「失策出塁」「単打」「二塁打」「三塁打」「本塁打」に指数をかけて「打数+四球–敬遠+犠飛+死球」で割るというもの。指数によって誤差があるものの、ベイスターズで150打席以上に立った選手の順位は筒香、牧、蝦名、宮崎、佐野でほぼ共通している。
これらの数字で牧が上位に来るのは例年通りだが、25年シーズンで際立つのが筒香と蝦名の2人だ。24年シーズン途中に米球界から復帰し、思うような結果を残せずにいた筒香だが、昨季は2度の2軍再調整を経て8月7日に1軍昇格を果たすと、そこから爆発。8月以降はポストシーズンを含めて打率.318(107打数34安打)、16本塁打、 36打点、出塁率.425、OPS1.238という圧巻の成績を残し、完全復活を印象付けた。この状態を今年も維持できれば、オースティンの不在を埋める以上の存在となるのは間違いない。
蝦名も夏場に“覚醒”した一人だ。8月に打率.344を記録し、「1番」に定着すると、連続試合出塁を「33」に伸ばしたままレギュラーシーズンを終了。さらなる活躍を予感させる。
この筒香、蝦名に、昨季は故障離脱があった牧の3人が、セイバーメトリクスの観点からもベイスターズの打力上位で、「1番」「2番」「4番」に置くべき選手となることに疑いの余地はない。この3人はセ・リーグ全体でもトップ12に入る実力の持ち主で、「1番」が出塁率、「4番」が長打力を重視するとの定義を当てはめると、出塁率が.355でトップの蝦名が「1番」、長打率が.549でトップの筒香が「4番」、筒香より走力のある牧は「2番」が適任といえる。3人に数値上で続く佐野が「5番」、宮﨑が「3番」。6番以降は打力順に山本、石上、度会、林、梶原、三森、京田。総合すると、導き出される打順は次のようになる。
① 中堅・蝦名 打率.284 8本塁打 41打点
② 二塁・牧 打率.277 16本塁打 49打点
③ 三塁・宮﨑 打率.277 6本塁打 39打点 (小田)
④ 左翼・筒香 打率.228 20本塁打 43打点
⑤ 一塁・佐野 打率.274 15本塁打 70打点
⑥ 捕手・山本 打率.262 3本塁打 41打点
⑦ 右翼・ヒュンメル 打率.262 3本塁打 41打点 (度会、梶原)
⑧ 遊撃・石上 打率.241 2本塁打 16打点 (林)
⑨ 投手
(参考:2025年10月17日クライマックスシリーズ第3戦スタメン)
① 右翼・蝦名
② 中堅・桑原
③ 一塁・佐野
④ 三塁・筒香
⑤ 二塁・牧
⑥ 捕手・松尾
⑦ 遊撃・林
⑧ 左翼・度会
⑨ 投手
25年シーズンは牧の離脱後、二塁と遊撃をそれぞれ林、石上が入って存在感を見せ、2位でのフィニッシュに大きく貢献した。二塁に不動の牧がいることを考えると、2人は遊撃の定位置を争う可能性が高い。数字上の打力では石上、守備重視なら林の選択となるが、林は昨季終盤に粘って出塁する場面が目立つなど打撃面でも持ち味を出し始めており、僅差の勝負になるとみられる。
「7番」には、昨年末に獲得が発表されたヒュンメルを置いた。米球界での数値は期待感を抱かせる。メジャーでは通算119試合で打率.163、6本塁打、24打点と結果を残せていないが、マイナー通算では692試合で打率.268、79本塁打、360打点を記録し、出塁率.405と高い選球眼を持つことがうかがえる。25年シーズンのAAAでは30試合で打率.297、13本塁打、35打点、出塁率.439、OPS1.074、wOBA.459とハイレベルな数字をたたき出している。このAAAでの圧倒的な数字はNPBでの成功を後押しするもの。もちろん、新外国人がどれだけ活躍できるかは未知数だけに、控えめに「7番」としたが、中軸を務められるだけの力を示せば大きなプラスになり、期待通りとはいかない場合は度会、梶原、昨季途中加入のビシエドあたりの起用を考えることになりそうだ。
また、もう一人このオーダー に一石を投じる可能性があるとしたらドラフト1位で入団する青山学院大の小田だろう。広角に打ち分けられるバットコントロールが武器。身長173センチと大柄ではないものの長打力を秘め、大学の先輩・吉田正尚(現レッドソックス)をほうふつさせる。4年春の東都大学リーグでは本塁打、打点の2冠を獲得。一塁、三塁、外野を高いレベルでこなすユーティリティー性も魅力で、年齢的にフル出場が厳しい宮崎のバックアップとしてはもちろん、一気のレギュラー獲得にも期待が高まる。
今回導き出した“ベスト布陣”は、あくまで昨季のデータによるもの。キャンプやオープン戦を経て、相川監督が最終的にどのような結論を下すのか、注目される。
日本一早い? 横浜DeNAベイスターズの2026年スタメン予想 セイバーメトリクスでベスト布陣を考察
横浜DeNAベイスターズは、2025年シーズンをセ・リーグ2位で終えた。前年にリーグ3位からの日本一の下剋上を成し遂げ、1998年以来のリーグ制覇を目指したが果たせず。三浦大輔前監督からバトンを託された相川亮二新監督のもと、26年は改めて“完全優勝”を期すシーズンとなる。VICTORYでは、昨年に続いて新年早々にセイバーメトリクスの観点から日本一早く(?)開幕スタメンを予想。28年ぶりの悲願達成へ、“最強布陣”を考察する。
本塁打を放つ筒香 (C)共同通信