守備の要であり、精神的な柱でもあるオランダのファンダイクはリバプール(イングランド)で遠藤航とチームメイトだ。そして、そのリバプールにはアタッカーのガクボ、中盤のフラフェンベルクもおり、日本のサッカーファンにもなじみの名前が並ぶ。約半年後のF組第1戦は、日本にとっての大会の流れを左右する大一番でもある。これまで日本が出場した7大会で、初戦で勝ち点を取った4大会はいずれも決勝トーナメントに進んでいる(2002年日韓大会はベルギーと2―2、2010年南アフリカ大会はカメルーンに1―0、2018年ロシア大会はコロンビアに2―1、2022年カタール大会はドイツに2―1)のに対し、初戦を落とした3大会では1次リーグで敗退している(1998年フランス大会はアルゼンチンに0―1、2006年ドイツ大会はオーストラリアに1―3、2014年大会ブラジル大会はコートジボワールに1―2)。
32チーム出場でベスト16が勝ち上がっていた前回までから、48チーム出場でベスト32による決勝トーナメントとなる今回は大会フォーマットが大きく変わっているため、各組3位でも勝ち上がれる可能性はある。それでも、日本は優勝という高い目標を掲げているだけに、オランダが相手といえども勝ち点を是非とも挙げたいところだ。
日本の中心選手である南野拓実(モナコ)が左膝の前十字靱帯断裂の重傷を負ってしまったように、ここからの半年で選手には何が起こるか分からない。怪我の不安は常につきまとうし、めきめきと自信をつけて大化けする選手もいるかもしれない。大会中にラッキーボーイが現れるかどうかも、チームが波に乗れるかどうかに大きく関わってくる。
今季、遠藤やファンダイクのいるリバプールは開幕直後こそ5連勝スタートでプレミアリーグの首位に立っていたが、その後はまさかの不振にあえいでいる。その後に4連敗を喫するなど、足踏みが続いて12月21日現在では、首位アーセナルと勝ち点10差の5位にとどまっている。その間、スロット監督とエジプト代表FWサラーの不仲が表面化するなど、チームを取り巻く空気も穏やかではない。2018/19年シーズン以来となる頂点を目指す欧州チャンピオンズリーグ(CL)は1次リーグで6試合を終えて4勝2敗の9位。残りは2試合で、自動的にベスト16による決勝トーナメント進出となる8位以内の確保も安穏とはしていられない。
ただ、このリバプールの思わぬ不振が、W杯での日本に「向かい風」となる可能性がある。
プレミアリーグは五大リーグでも、ラ・リーガ(スペイン)、セリエA(イタリア)と並んで最も遅い5月24日まで行われ、欧州CLの決勝は5月31日に予定されている。タイトルを懸けたヒリヒリするような戦いをシーズンの最終盤まで続ければ、自ずと6月11日開幕のワールドカップ(W杯)までの休養期間はなくなる。長いシーズンの疲労を引きずったまま、あるいは多少の無理をしてでもプレーを続けた体を十分にいたわる間もないまま、W杯に突入せざるを得ないのである。
つまり、もし欧州CLで早々と敗退すれば、皮肉にも週2試合といったハードスケジュールからは解放されて、W杯を前にした怪我のリスクや、疲労の蓄積というマイナス要素が軽減されるという側面があるのである。
欧州サッカー連盟(UEFA)によると、同じ年に欧州CLとW杯の両方の決勝でピッチに立ち、優勝した選手は過去に9人しかいない。そのうち6人はベッケンバウアーやゲルト・ミュラーら1974年のバイエルン・ミュンヘンと西ドイツのメンバーで、当時は欧州チャンピオンズカップ(欧州CL改編前)だった。近年となると、1998年のカランブー(レアル・マドリード、フランス)と、2002年のロベルトカルロス(レアル・マドリード、ブラジル)、そして2018年のバラン(レアル・マドリード、フランス)の3選手のみとなる。過酷な両大会でともにプレーを続けながら、「ダブル」を達成することがいかに難しいかは一目瞭然だろう。タイトルに届かずとも、クラブと代表の世界最高峰の戦いを勝ち抜くのが計り知れない重圧との戦いの連続なのは、この少ない達成者の数からも容易に想像がつく。(開催時期が通常の6~7月ではなく11~12月にずれていた2022年カタール大会は、2022/23年シーズンにアルバレスがマンチェスター・シティーで欧州CLを制している)
例えば、リーグ戦で絶好調のままW杯に突入する選手もいるだろう。怪我が癒えて、最高の舞台に間に合う経験豊富なベテランもいるかもしれない。W杯を迎える状況は、それぞれである。ただ、所属クラブの好調がそのまま代表へのプラスになるとは限らない。思わぬ不振が予期せぬ方向に作用することも、頭の片隅に入れておいていいかもしれない。
オレンジ軍団・オランダとの初戦 リバプールの不振は日本に不利?
サッカーのワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会が行われる2026年がまもなくやってくる。12月5日(日本時間6日)にアメリカ合衆国の首都ワシントンDCで行われた組み合わせ抽選会。日本は1次リーグF組に入り、オランダとチュニジア、そして欧州プレーオフ(ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニア)の勝者と対戦することが決まった。もちろん、一番の強敵がW杯で準優勝3度の実績を誇る「オレンジ軍団」のオランダなのは間違いないだろう。
FIFA公式HPより