Mastercardが東京マラソンのパートナーになった理由
──親しげにお話されていますが、おふたりが初めてお会いしたのはいつ頃ですか?
朴 東京マラソンのパートナーシップを検討していた時だったので、2023年の11月です。ニューヨークシティマラソン会場のラウンジでお会いしました。パートナーになりたいという強い想いを持っていたので、現地で初めてご挨拶しました。Mastercardアメリカがニューヨークシティマラソンのパートナーになっていたこともあり、どうやって関係性を築いたのか、現地法人からもヒアリングをしたんです。
──そして2024年9月、Mastercardは一般財団法人東京マラソン財団とオフィシャルパートナー契約を締結しました。その背景や経緯を詳しく教えてください。
朴 スポーツ関連のイベントには以前から関心があり、良い大会があれば、マーケティング戦略の一環としてパートナーになりたいと考えていました。Mastercardはグローバル企業である一方で、日本でローカルビジネスも展開しています。日本においてどのようなスポーツイベントが適しているのかを検討したとき、ランニングは日本人に最も好まれているスポーツだと考えました。特別な道具も必要とせず、自分の身体ひとつで、誰もができる。なかでも一番象徴的な大会は何かと調べるうちに、東京マラソンという素晴らしい大会に出会いました。42.195㎞を走るという体験には、素晴らしいジャーニー(過程)が入っています。そのなかで皆さまが持つ根気やパッションが、Mastercardのブランドメッセージである「Priceless」という考え方とつながる。双方にシナジーがあると考え、お声がけしました。
早野 Mastercardといえば、「Priceless」という言葉がCMでもおなじみです。我々の大会も、「きつい思いをして何がいいの?」と思われることもありますが、その体験はお金で買えるものではありません。そうした点に共通する価値があると感じていますし、個人的にも「Priceless」という言葉が凄く好きです。東京マラソンは1日、レースでいえば2~7時間で終わってしまいます。でも、その他の364日を積み上げていった先に、ハレの日があるんです。東京マラソンに出場される約3万9000人のランナーの皆さんは、シューズを買えば、ご飯も食べて、旅行もする。カードを使うという行為は、日々のライフスタイルのなかにもありますし、そうした意味でも良いパートナーになっていただけると考えています。
社内外からの反応とリアルな声
──Mastercard は2025大会から東京マラソンのパートナーとなりました。その効果と反響はいかがでしょうか?
朴 2024年から準備を始めて、2025大会で初めてパートナーとして参加させていただきましたが、初年度から反響は素晴らしかったと思います。レースではMastercardの会員・非会員に関わらず、多くのタッチポイントを設けました。その結果、何千人もの方々に体験していただき、「助かりました」「楽しく応援ができました」といった声が届いています。ランナーの方からも、「自分の準備してきたペースで安心して走ることができた」というフィードバックをいただきました。こうした取り組みを積み重ねていくことで、本当に意味のあるパートナーになれると確信しています。
弊社の従業員も、東京マラソンのスローガンである「東京がひとつになる日。」にMastercardというブランドが活躍しているシーンを見て、凄く誇りを感じているようでした。またグローバルでいうと、今まで接点が少なかった東ヨーロッパの従業員からも、多くの声をかけていただき、東京マラソンが象徴的なスポーツイベントになっていることも改めて実感しました。私たちの商品は、消費者と大会をつなぐ役割を果たすことで、ビジネスとしての関連性もあると感じています。
早野 Mastercardさんと東京マラソンだけでなく、他のパートナーさんとのBtoBも生まれてくると思います。すべてのパートナーさんが中心にいるランナーや観衆など、いろんな人たちを巻き込むなかで、誇りに思っていただいていることをうれしく思いますし、私も誇りに感じます。「東京がひとつになる日。」が本当に素晴らしい一日だったと言っていただける、その体験の中にMastercardというブランドが自然に存在している。そんな形で我々も貢献していけるよう、これからも取り組んでいきたいと考えています。
東京マラソンEXPO 2026 Mastercardブース ©︎東京マラソン財団グローバル視点から見た東京マラソン
──世界から注目を集めていると伺いましたが、数ある世界のスポーツイベントの中で、東京マラソンならではの特徴や魅力をどのように感じていますか?
朴 コロナ禍以降のデータでは、日本はこれまでアジア太平洋地域でナンバーワンの海外旅行先でしたが、昨年からは世界で最も人気のある旅行先になっています。東京マラソンはその人気にも大きく貢献しています。Abbottワールドマラソンメジャーズの中でアジア唯一の大会であり、実際に参加したランナーからの評価も非常に高いのです。
東京マラソンの出場を目的に、日本を訪問したいという人たちも増えました。大会参加者の決済行動は、旅行を考えるところから発生します。例えば東京マラソンに申し込みをしたら、フライトを探して、ホテルを予約する。日本に着いたら、レストランなどで食事もします。日本の素晴らしいスポーツブランドのウエアを購入するなどのデータもあります。東京マラソン期間中に、こうした決済が大きく増加しているという事実もありますし、マラソン大会を通して、多様なライフスタイルを持つ外国の方々を日本に誘うことができているのがわかりました。東京はモダンで伝統も息づく都市で、なおかつそれが文化的に交差していると思います。
早野 近年は東京を訪れるインバウンドの方々が増えています。彼らはご飯が美味しくて、街が綺麗で、道にゴミが落ちていない。チップの文化がないのに、どのレストランでもスタッフが丁寧に接してくれる。その体験に感動して、「また東京に行きたい」と思ってくださる方が多いと聞きます。東京マラソン2024のポスターは、「Tokyo, My favorite place...」というコピーで、フィニッシュしたランナーの後ろ姿をメインビジュアルにしました。走り終えたランナーが、帰り道に何を思うのか——その余韻や感情を表現したものです。東京マラソンは大きな経済効果を生むイベントでもあり、パートナー企業にとっても価値のある存在です。だからこそ私たちは、発信する言葉やビジュアル一つひとつを戦略的に設計してきました。
「<後編>東京マラソン財団とMastercardが描く、東京マラソンの近未来」へ続く