不倫露呈に右脚重傷
今回は3月27日に米フロリダ州ジュピターで自宅近くを運転中、トラックに接触して自身の車は横転した。目立った負傷はなく、捜査当局によると呼気検査でアルコールは検知されなかった。ただ、尿検査は拒否して逮捕。数時間後に釈放されたが、報告書によると、ポケットには麻薬性鎮痛薬の「ヒドロコドン」の錠剤が入っていた。公開された事故後の映像では、実際に逮捕されるスーパースターの姿が映し出され、波紋が広がった。
けちのつき始めは2009年11月下旬。午前2時半頃、自宅近くで運転する車が消火栓と木に衝突した。警察が到着したとき、道路に横たわって意識がもうろうとしていたという。この事故を発端に複数の女性との不倫疑惑が発覚し、一大スキャンダルに発展。翌2010年には妻との離婚を公表した。この年はプロ転向後初めて、米ツアーで優勝なしに終わった。2017年は道路脇に止めていた車の中で、エンジンやウインカーをつけたままで寝ているところを発見された。今回と同じようにアルコールまたは薬物の影響下で運転したとして逮捕。のちに有罪判決を受けた。2021年2月には単独事故で右脚を粉砕骨折。捜査当局によると、制限速度を大幅に上回るスピードが出ていたことが原因で、競技生活に多大な支障を来した。
4度目の今回、ウッズはX(旧ツイッター)で当面、活動を休止すると表明した。事情はどうであれ、危険な運転は他人を傷つけてしまう恐れがある。マスターズと全英オープン選手権を3度ずつ制したニック・ファルド氏(英国)はこう語った。「タイガーが常に苦痛の中で生きているのは気の毒だが、自業自得でもある。彼がやってしまったことは重大な問題で、説明責任がある。両手を広げて復帰を迎え入れるべきではない」と指摘。以前より風当たりが強くなっている様相を呈している。
タイガースラムからの暗転
将来的にPGAツアーであらゆる記録を塗り替え、50歳になって以降はシニアとしても活躍―。隆盛を誇った若い頃はそんな理想を抱かせていたが、かつての栄光からは想像できないような逆境に見舞われている。2001年のメジャー第1戦、マスターズ・トーナメントで優勝し、前年からメジャー大会4連勝。四大メジャー全制覇のグランドスラムとかけ合わせ「タイガースラム」と呼ばれる偉業を成し遂げた。その後も順調に勝利を重ね、ジャック・ニクラウス(米国)の持つ歴代最多記録、メジャー通算18勝を将来塗り替えるのは間違いないと目されていた。
しかしコース外のトラブルと軌を一にするようにペースダウン。ツアーで最後に輝いたのは2019年だった。4月にマスターズで5度目の制覇を果たし、11年ぶりとなるメジャー15勝目。同年10月には千葉県習志野CCで開催されたZOZOチャンピオンシップでPGAツアー通算82勝目を収め、サム・スニード(米国)のツアー最多記録に並んだ。この勝利を最後にツアー勝利から遠ざかっている。
2020年に新型コロナウイルス禍に突入して試合が減り、翌年に先述の交通事故で右脚を大けがした。昨年3月には、左アキレス腱を断裂して手術を受け、マスターズを欠場。昨秋には自身7度目という腰の手術など、年齢を重ねるごとに故障が露見。今年のマスターズには出場する意向も伝えられてきたが、事故で水泡に帰した。2年続けて、ジョージア州オーガスタ・ナショナルGCに詰めかけるパトロンたちを熱狂させることはできない。今後は治療に専念して健康を最優先させるとした上で、Xにこう記した。「人間的にも、プロとしても、より健康的で、より強く、より集中力のある状態で復帰できるよう、必要な時間をしっかりと確保することに努めます」。直近のツアー出場自体も2024年の全英オープン選手権が最後と寂しい状況が続く。
絶大な存在感とPGAの姿勢
昨年12月に50歳の節目を迎えた。近年は選手として精彩を欠く一方、プレー面以外で競技の普及、発展へ貢献が目立つ。例えば、屋内でシミュレーターを使ってチーム戦で争う「TGL」を創設してファンに新たな楽しみを提供し始めた。松山英樹も参戦し、昨年1月に開幕。ティーショットなどは巨大シミュレーターを使い、ホールに近づきショートゲームに移ると、実際のグリーンに舞台が変わる斬新な形態だ。
サウジアラビア政府系ファンドが支援する超高額賞金リーグ「LIVゴルフ」が2022年にスタートした際にも、反対の立場を鮮明にして、脚光を浴びた。ダスティン・ジョンソンやフィル・ミケルソン(ともに米国)ら名だたる強豪が続々とLIVに移籍したのとは対照的に、ウッズは7億~8億ドル(約1120億~約1280億円)の出場オファーを断っていたことが判明。巨額の誘いになびくことなく、PGAツアー残留を明確にした。その後、PGAツアーがLIVと和解し、事業統合を進めていく流れの中で、尽力していく姿勢を示した。
また、PGAツアーでは理事になり、将来的な競技モデルを検討する委員会の委員長に昨年就任した。絶大な存在感を誇るレジェンドなのは間違いない。今回の自動車事故に際し、同ツアーは次のような声明を発表した。「タイガー・ウッズは、コースでの功績をはるかに超えて影響力を及ぼすような伝説的存在です。しかし何よりも一人の人間であり、われわれが最も重視しているのは彼の健康と幸福。引き続き全面的に支援していきます」。ウッズを全力で支持するのも無理はない。
何度も交通事故を起こしていること自体、PGAツアーの要人として不安視されかねない。2005年マスターズの最終日、16番(パー3)で今でも語り継がれるチップインバーディーを決め、優勝につなげた。コース上で数々のミラクルを起こしてきたように、人生でも奇跡的なカムバックを期待されるのがウッズの宿命でもある。