ラガーマンの逞しい腕元に馴染む、パネライの造形美

 五郎丸氏はこの日、新作「ルミノール PAM01735」を腕に合わせたシックな装いでステージに現れた。特筆すべきは、ラグビーという過酷なスポーツで鍛え上げられた同氏のがっしりとした体躯と、太く逞しい腕元に、47mmというパネライ特有の大型ケースが驚くほど自然に馴染んでいたことだ。

 かつて世界の強豪を相手に激しいコンタクトプレーを繰り返してきた五郎丸氏のラグビー人生は、常に肉体と精神の限界への挑戦だった。2015年のワールドカップで見せたあの静謐なプレースキックの儀式から、爆発的なパワーを解き放つ瞬間まで、彼の身体には過酷な現場で戦い抜いてきた男の厚みが刻まれている。その逞しい腕は、軍用時計をルーツに持つパネライの力強い造形美を最大限に引き立て、まさに「強き者のための時計」であることを、その存在感だけで体現していた。

 五郎丸氏は新作の印象について、その重厚な見た目から想像される重さを感じさせない、非常に品があるデザインで素敵だと話し、快適な着け心地に納得の表情を見せた 。1960年代のモデルに着想を得た47mmのスティールケースや、経年変化を再現した「トロピカルダイヤル」を採用したこのモデルは、パネライの伝統的な機能美を現代に再解釈した一品である。

アクセサリーではなく「装備」であるという信念

 トークセッションにおいて、五郎丸氏が語った言葉には、プロのアスリートとして極限の勝負の世界を歩んできた同氏ならではの重みがあった。記者から「時計はアクセサリーか、それとも装備か」と問われると、同氏は即座に「アクセサリーというより、“装備”に近い」と回答した。

 ラグビーというスポーツは、80分間という限られた時間の中で、一瞬の判断や正確なタイムマネジメントが勝敗を分かつ。フィールド上で常に自分を律し、一秒の重みを感じながら戦ってきた五郎丸氏にとって、時計は単なるファッションの一部としての装飾品ではない。正確な時間を把握し、時間を意識しながら行動するためのツールであり、日々のパフォーマンスや自身の姿勢を支える不可欠な実用的ツールとしての意味合いが強いのだ。

日焼けの跡が物語る、現場主義の愛着

 五郎丸氏のパネライへのこだわりは、単なる愛好家の域を超え、ラグビー引退後の現在も、現場主義を貫くライフスタイルそのものに深く根付いている。同氏は、海での釣りや子供たちとの遊び、さらには次世代にラグビーを指導する現場など、あらゆる日常のシーンでパネライを着用し続けていることを明かした。

 「本当に一年中着けていて、外すと日焼け跡が残って真っ白になるくらい」というエピソードは、現役時代から変わらぬ、物事に対して真摯に向き合う同氏の姿勢を象徴している。さらに、入浴時ですら着用したままであるという徹底した愛用ぶりを語り、ブランドへの深い愛着を披露した。過酷な水中任務のために生まれたパネライの堅牢性は、ラグビーの現場や自然の中での活動など、五郎丸氏のタフな日常においても完璧な「装備」として機能していることが伺える。

普遍的な価値への共鳴

 また、五郎丸氏はパネライの「変わらない価値」についても言及した。どの時代のモデルも一貫したデザインコードを保っているため、いつ着用しても時代に溶け込み、古さを感じさせない点に魅力を感じているという。「どのデザインも昔から変わってないという部分がすごく素敵。新しいものを買わないと溶け込まないみたいなことがないところも素敵」と語る同氏の美学は、流行を追い求めるのではなく、本質的で普遍的な価値を持つものを長く使い続けるという、大人の男性としての落ち着いた姿勢を示していた。

 この考え方は、かつてイタリア海軍の軍事機密として門外不出とされてきたパネライの歴史とも重なる。実戦の現場で求められる性能のみを追求し続けた結果として生まれたデザインだからこそ、時代を超えても色褪せない強さを持っているのだ。

時の深淵に触れる特別な体験

 今回の特別展「The Depths of Time 時の深淵」は、2025年9月にフィレンツェで初公開され、世界を巡回してきた国際的な展示会である。会場には、ヴィンテージの計器や貴重なアーカイブ資料が厳選して並び、水中ミッションや軍事機密と深く関わってきたパネライの歩みを、これまでにない形で紐解く構成となっている。

 かつて暗い海の中で兵士たちの命を支えた精密機器。そして現代において、常に自分を律し、次世代へその背中を見せ続ける五郎丸歩氏のような男の腕を支える「装備」。五郎丸氏の逞しい腕元で刻まれる時間は、パネライというブランドが持つ揺るぎない本質を、どんな言葉よりも雄弁に物語っていた。


VictorySportsNews編集部

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