この試合が注目されたのは挑戦者のロドリゲスがここまで23戦全勝(16KO)のスター選手であることに加えて、あの井上尚弥(大橋)へのチャレンジも取りざたされているからだ。日本のファンが大いに気になるのも当然。

階級の常識を覆す──“バム”が刻んだ異例の「逆2階級制覇」

 “バム”ことロドリゲスは2017年、17歳でプロに転向。ミニマム級でスタートして、スーパーフライ級(2022年)、フライ級(2023年)の順で世界王座の“逆2階級制覇”を達成した。そしてその翌年(2024年)にはスーパーフライ級王座に復帰した。

 この間のレジュメは見事なものだ。カルロス・クアドラス(メキシコ)、シーサケット・ソールンビサイ(タイ)、フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)ら、かつてのスーパーフライ級の強豪を立て続けに撃破した。クアドラスをダウンさせて明白勝ちした最初の戴冠試合はセンセーショナルだったが、当時はフライ級が本来の階級だったためUターンしたのである。スーパーフライ級にとどまれば、やはり世界チャンピオンの兄ジョシュア・フランコ(井岡一翔と2戦)とバッティングしてしまうというのも理由だった。

 フライ級では2試合だけだったが、まずWBO(世界ボクシング機構)王座を獲り、続いてIBF(国際ボクシング連盟)チャンピオンのサニー・エドワーズ(イギリス)と統一戦を実現させてTKO勝ちしている。

 2024年、スーパーフライ級に舞い戻ったロドリゲスはすっかり一流チャンピオンの雰囲気を漂わせていた。挑戦者として臨んだ前述のエストラーダ戦がそれで、ダウン応酬の激闘の末、7ラウンドに得意のボディーショットでメキシコの闘鶏に初のテンカウントを聞かせる堂々の勝ちっぷり。

 その後はこの階級の4団体王座統一にまい進した。プメレレ・カフ(南アフリカ)、フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)と他団体の無敗チャンピオンを連続KO(TKO)で退け、残すはIBFタイトルのみの状況だった。しかし早期の統一戦は叶わず、ならばとバンタム級に上げることにしたものだ。

バンタム級初戦で直面した「壁」と、モンスターへの距離

 さて、バルガスに挑んだ一戦は戦前の予想からして優位だった。19勝11KO1敗1分1無判定試合のバルガスはWBAがチャンピオン堤聖也(角海老宝石)の負傷をたてに「休養王者」から「レギュラー王者」に昇格させた選手だった。元オリンピアンだが、プロのチャンピオンとしての実績に乏しく、まずは順当な予想と言えた。

 結果はロドリゲスが6ラウンドKO勝ちで3階級制覇を達成した。しかしながら「階級の壁」について疑念が残った。いつものように右ジャブと多彩なポジショニングからの攻めで飛ばしたロドリゲスだが、体格を活かしたバルガスの手数に押される場面があった。それでも死角から飛び込む左フックで鮮やかに仕留めたところはさすがだったが。

 試合後、さっそく「井上挑戦」の話題で騒がしくなったが、井上が君臨するのはさらにもうひとつ重いスーパーバンタム級。ロドリゲス陣営は拙速を避けていま一度この階級で試合を希望している様子だ。確実なステップアップのためにも賢明な選択だろう。同じWBAの休養王者に堤、WBC(世界ボクシング評議会)に井上拓真(大橋)、IBFにホセ・サラス・レイジェス(メキシコ)、WBOにクリスチャン・メディナ(メキシコ)の対立チャンピオンがおり、いずれもバムとの統一戦は興味深い。現時点ではWBO王者メディナとの統一戦が第一候補のようだ。

 まだ26歳のバムが世界有数のボクサーとして評価されているのは、それだけの相手に勝ってきた実績からだ。そして、今後よりビッグな存在になるために欠かせない一戦が、モンスターへの挑戦であるのは間違いないが——。


VictorySportsNews編集部

著者プロフィール VictorySportsNews編集部