文=松原孝臣

バレーと卓球も新リーグ発足予定

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 2016年はバスケットボールの新リーグ「Bリーグ」がスタートした年だが、他の競技でも新リーグ創設の動きが活発化している。バレーボールは昨年9月、プロ化を目指しての新リーグ立ち上げの構想が発表された。結論は今春をめどに出されることになる。また、卓球も2018年秋に新リーグをスタートさせようとしている。停滞を打破したい、ここでステップアップしたいといったように、それぞれに意図は異なっても、競技の未来を見据えていることに変わりはない。

 懸念はある。果たしてプロ化できるのか、運営はうまくいくのか。さまざまな競技で新リーグが始まったとき、観客の奪い合いが起きるのではないかという声も聞く。
 
 一方で、これらのリーグのスタートを、「好機」と捉える人たちもいる。その説明の前に、バレーボールの新リーグ構想の理由を見ておきたい。その中には、次の要素があった。

「体育館確保における競合激化と大会開催の困難化」
 
 Bリーグが始まったことで、各地の試合会場を奪い合う不安も構想の一因だった。困難になっていくであろう会場確保を見越して、ということは、見方を変えれば、会場となる施設にとっては活性化のチャンスということになる。

 体育館をはじめとするスポーツ施設の中には運営に苦しむところも少なくない。立派な設備があっても試合で利用される回数があまりなく、収益が上がらない。先行きが危ぶまれるところもある。

競技施設にとってのメリットを考える

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 そこに降って湧いたのが、種々スポーツの新リーグだ。もし、開催会場として引っ張りだこになるようなことがあれば、それは明らかにメリットとなる。もし、あるチームのホーム会場に選ばれれば、ファンが試合がなくても通いたくなる展示であったり、イベントを仕掛けることもできる。ホーム会場とはならなくても定期的に試合が行なわれるようになれば、同じような仕掛けは可能だ。収益の安定を含め、今後の運営のためのさまざまなアイデアが生まれてくるはずだ。

 むろん、ただ待ち受けているだけではチャンスは作れない。ゲームを引き込み、チームの拠点としてもらえるよう誘致するなど、努力は欠かせない。さらに積極的な動きも考えられる。異なる競技の定期的な試合会場となれば、それらの競技の交流の場ともなりえる。会場確保においてライバルだと認識している競技団体同士の、友好的な接点としての役割も担える可能性があり、そうしたレベルまで能動的に動くことで、施設を中心に地域スポーツの活性化へとつなげることもできるかもしれない。

 新リーグの立ち上げそのものは、競技団体が主となって進めるものだ。それを見守るだけでなく、「利用してもらえればこういうメリットがありますよ」「一緒に発展できれば」と積極的にかかわることで、競技施設の将来も変わってくる。そう考えると、新リーグの今後は競技施設の関係者にとっても真剣に見守る必要がある。


松原孝臣

1967年、東京都生まれ。大学を卒業後、出版社勤務を経て『Sports Graphic Number』の編集に10年携わりフリーに。スポーツでは五輪競技を中心に取材活動を続け、夏季は2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオ、冬季は2002年ソルトレイクシティ、2006年トリノ、 2010年バンクーバー、2014年ソチと現地で取材にあたる。