文=池田敏明

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平日開催の試合でいかに集客するか

 スポーツ観戦に行くとしたら、ほとんどの人が仕事や学校が休みになる週末を選択するだろう。しかし、試合が行われるのは週末だけではない。プロ野球は火曜日から金曜日にも行われるし、サッカーでは週の半ばにYBCルヴァンカップや天皇杯の試合が行われる。

 平日の試合は、週末に比べて集客が難しい。仕事や学校が終わった後にスタジアムに行き、試合が終わるのは夜9時過ぎ。帰って寝るのは12時近くになってしまう。翌朝、早く起きなければならないことを考えると、よほどのメリットがなければ球場やスタジアムに足は向かわないだろう。

 規模の小さいサッカースタジアムならそれなりにスタンドが埋まるかもしれないが、概ね3万人以上を収容する球場、そして埼玉スタジアムや味の素スタジアム、日産スタジアムといった5万人以上を収容するスタジアムの場合、観客が少ないとかなり寂しい雰囲気の中で試合が行われることになる。具体名を挙げるのは忍びないが、最近では中日ドラゴンズの本拠地であるナゴヤドームでその傾向が顕著なようだ。

12球団の中で、前年比でもっとも数字を減らしたのは巨人(9・3%減)の1試合平均3万9862人(14試合)。中日は11位の7・3%減(2万7531人、15試合)だった。巨人は収容人員の少ない地方球場(熊本、鹿児島)での日程が組まれていたから、実質的には中日がワーストだ。
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 スタンドがガラガラだと、選手たちのモチベーションも上がらない。その結果、競技レベルが低下し、さらに客足が遠のく、という悪循環に陥る可能性もある。主催する球団やクラブとしては集客のための努力をしなければならないが、常識の範囲内でやっていると、どうしても限界にぶち当たってしまうだろう。そこで、筆者が実際に中南米で目の当たりにした集客プランをいくつか紹介しよう。

2×1、3×1

 これは「2人で1人分」、「3人で1人分」という意味。つまり、チケット1枚ぶんの値段で2人ないしは3人まで一緒に入場できるという意味だ。指定席だといろいろ難しいかもしれないが、自由席なら日本でも実施可能だろう。たとえば自由席が1万席あって、前売りの段階でチケットが3000枚しか売れなかったとする。チケット1枚につき1人なら3000席しか埋まらないが、「2×1」なら最大6000席、「3×1」なら最大9000席が埋まることになるし、当日券の頑張り次第では満席に近い状況を作り出すことも可能だ。

男性1人につき、女性1人が無料

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「2×1」と似たような形だが、いわゆるレディースデーのような扱いになる。夫婦や親子など、様々な形の組み合わせが想定できるし、男性諸君にとっては「興味がないかもしれないけど、一緒に行けば無料になるから」と、女性を誘う口実になるかもしれない。もちろん、「女性1人につき、男性1人が無料」でもいいだろう。

大人1人につき、子ども1人が無料

 日本では未就学児を膝上に抱えての観戦のみ無料、という会場が多いが、スタンドがガラガラなのに膝の上に乗せて観戦するなどナンセンスだ。また、小中高生は自由席でも1000円から1500円の入場料が必要になるのだが、たとえば両親と子供2人の4人でスポーツ観戦に行こうとすると、入場料だけで1万円に迫ってしまう。そこで、子どもの範囲を「小学生以下」とし、大人と一緒に入場する場合に限り、1人まで無料にする。これなら「無料だから一緒に行こうか」と親が子どもを誘いやすくなるだろうし、「僕は無料だから連れて行って」と子どもが親におねだりしやすくなる。

 日本では入場料収入を増やすことを考えると思うが、これらのチケットは「スタンドの空席を少しでも減らすこと」が第一に考えられている。また、入場料が無料になれば、そのぶんグッズやスタジアムグルメへの購買意欲も上がるだろうし(動員が増えるので単純に売り上げも伸びるはず)、無料で入ったライト層の観客がその試合で大きな感動を味わい、その後、足しげく通ってくれるようにもなるかもしれない。

 そして、最後の「大人1人につき、子ども1人まで無料」のチケットでは「一緒に入場する大人と子どもの間に血縁関係は必要ない」という点がキモとなる。筆者自身、ペルーではあるスタジアムに入場しようとした際、地元の子どもに「一緒に入っていい?」と頼まれたことがあるし、コスタリカで息子2人を連れて行って、入り口で「大人1人につき子ども1人までです」と止められた際には、通りかかった見ず知らずの青年が「俺が1人受け持つよ」と言って一緒に入ってくれたことがある。

 たとえば試合を見に行くファンが、仕事で行かれない知り合いの子を預かって連れて行ってもいいし、私自身のコスタリカでのケースのように、子ども2人を連れて行って、現地で一緒に入ってくれる人を探してもいい。そうやってファン同士の交流が生まれること、人の優しさに触れることにも、価値はあるのではないだろうか。


池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。