日本人初の9秒台は誰が出す?ひしめくトップ6
雨の中の死闘を制したのは、18歳のサニブラウン・ハキーム。日本人初の9秒台はならなかったが、優勝タイムはここに来て自己ベスト、大会タイ記録の10秒05。コンディションを加味すれば9秒台も時間の問題と思える快走だった。
日本の男子短距離人はかつてないほどの充実の陣容を誇っている。日本選手権で優勝したサニブラウンをはじめ、急成長を遂げこのレースで2位に割って入った多田修平(21=関学大)、3位のケンブリッジ飛鳥(24=ナイキ)、世界選手権の内定は逃したが、10秒01の日本歴代2位記録を持つ桐生祥秀(21=東洋大)、同4位となる10秒03のベストタイムを持つ山縣亮太(25=セイコーホールディングス)、さらに200mを専門とするリオ五輪リレー銀メンバーの飯塚翔太(26=ミズノ)までを加えた6人がしのぎを削っている。
これを機会に、9秒が期待される6人の記録を確認しておこう。
1998年、現在は日本陸連で強化委員長を務める伊藤浩司氏が10秒00の日本記録を出してから今年で19年。17歳、高校3年生の桐生が衝撃の10秒01を記録してから4年が経過している。伊東から朝原宣治、末續慎吾と「9秒台」への期待は常にあったが、今度こそ本当に「時間の問題」と言える状況ができあがった。
©VICTORY日本男子短距離人から目が離せない!
©Getty Images人類が電動計時での「10秒の壁」を最初に破ったのが1968年。1960年にアルミン・ハリー(西ドイツ)が10秒0を出してから、メキシコ五輪でジム・ハインズ(アメリカ)が9秒95を出すまでに要した時間は8年。その間「10秒の壁」がいつ破られるかは注目の的だったようだ。ハインズ以降、次の9秒台の登場は9年後の1977年なので、「10秒の壁」を破ることがたやすくないことは歴史が証明している。
その後トレーニングの進化などで、記録は大幅に更新されたが、日本人にとって9秒台はいまだ未知の領域だ。日本ではあまり語られないが、2010年にクリストフ・ルメートル(フランス)が9秒98を記録するまで、コーカソイドの9秒台は1人もおらず、モンゴロイドとなると2015年の蘇炳添(中国)が唯一の9秒台。人種分類については諸説あるが、事実として100m9秒台はネグロイドと呼ばれる、アメリカやジャマイカのアフリカ系選手たちに独占されてきた歴史がある。
「誰が10秒の壁を破るのか?」
追い風参考記録ではすでに桐生の9秒87(+3.3m)、多田の9秒94(+4.5m)と二つの記録が出ている。誰がいつ出してもおかしくない9秒台はいつになるのか? 8月にはロンドンでの世界陸上も開催される。日本男子短距離陣の動向に要注目だ。