文=北條聡

2ステージ制をわずか2年で見切り

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 Jリーグは2017年度から1シーズン制に戻ることになった。何かと批判の多かった『2ステージ制+チャンピオンシップ(=CS)』という独特のシステムに見切りをつけた格好だ。

当初、Jリーグ側は2ステージ制の実施期間を「とりあえず5年」としてきたが、わずか2年での幕引きである。極めて筋の悪いシステムとの早期決別は英断と言えるが、向かう先が従来の1シーズン制への回帰だから、発展的解消とは違う。

 そもそも1シーズン制は観客動員数の減少に歯止めがかからず、増収が見込めないという苦境に直面し、何らかの打開策が必要との判断から取りやめたシステムだ。マスメディアへの露出、興行収益増、CSの放映権料、一般層への訴求力といったポストシーズン制のメリットが失われる、あるいは失われかねない。

 2ステージ制はやめるにしても、ポストシーズン制を生かす別のソリューションがあってもよかった。私案がある。いわゆる『カンファレンス制』の導入だ。

 プロ野球のように「セ・リーグ」「パ・リーグ」といった具合にトップリーグを二分する。分け方については、地域(東と西など)や前年度の順位、ランダム(抽選など)といった複数のアイディアから選べばいい。

 ともかく、AとB、2つのリーグに誕生した年間王者がポストシーズンで雌雄を決する。一般層にも分かりやすい仕組みだろう。2ステージ制とは違い、レギュラーシーズンで2位や3位に終わったクラブが「年間王者」になることもない。

 カンファレンス制の欠点の一つに、対戦機会の喪失がある。だが、発想を転換すれば、両リーグのクラブ間の「交流戦」に価値が生まれるわけだ。それをレギュラーシーズンに組み込む、あるいはルヴァンカップを交流戦の大会として、お色直ししてもいい。新たな魅力が加わり、注目度も高まるだろう。

J1とJ2という「格の壁」を壊す

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 レギュラーシーズンに交流戦を組み込むならば、AとB、両リーグのチーム構成は12。年間22試合で、これに12試合の交流戦を加えれば、現行と同じ年間34試合となる。交流戦をルヴァンカップの目玉とするならば、チーム構成は18。両リーグ合わせて全36チームだ。

 要するに、J2クラブの大半をプレミアリーグの一員として「格上げ」する。当然、対戦相手のランクも高くなるから短期的には興行収益のアップが見込める上に、スポンサー探しのハードルも下がるだろう。そこから先は自助努力にしても、新たに獲得した資金を元手に競争力を高めていける。

 トップリーグを二分して壁を築く一方、J1とJ2という「格の壁」を壊すわけだ。いまやJリーグもJ1からJ3まで全52クラブという大所帯。カンファレンス制の導入に伴う格上げは多くのクラブにとってメリットがあるのではないか。

 リーグ王者はもとより、レギュラーシーズンのMVPや得点王、ベストイレブンは「×2」である。露出度や関心度のみならず、2つのリーグをめぐる議論も活発になるかもしれない。互いのリーグが比較の対象になるからだ。いずれはプロ野球のように「両リーグ得点王」という経歴を持った選手も生まれてくるだろう。

 いったい、真の王者はどちらか――。両リーグの王者が激突するファイナル(ポストシーズン)は、一般層に極めて分かりやすい。また「決戦の日」が確定している分、マスメディアの取り扱いも容易だ。この一大イベントの前後に手の込んだ仕掛けができる。

 クライマックス(優勝決定試合)が事後的にしか分からないレギュラーシーズンの欠点を、ポストシーズンで補う。一般層へのアピールにまだまだ改善の余地があるJリーグの現状を考えれば、いま一度、リーグの在り方を見直してもいいのではないか。


北條聡

1968年、栃木県生まれ。早稲田大学卒業後、Jリーグが開幕した1993年に『週刊サッカーマガジン』編集部に配属。日本代表担当、『ワールドサッカーマガジン』編集長などを経て、2009年から2013年10月まで週刊サッカーマガジン編集長を務めた。現在はフリーとして活躍。