文=VICTORY SPORTS編集部
主力を引き抜かれた昨シーズン王者
©Getty Imagesいよいよ29日に開幕する2年目のBリーグ。優勝予想の声の中で、昨シーズンに初代王者の栄冠に輝いた栃木ブレックスの名前が挙がらない。9月1日からの3日間で開催されたプレシーズン大会のアーリーカップでは、千葉ジェッツに32点差(56-88)の大敗。翌日の川崎ブレイブサンダース戦では持ち直したものの、71-79で敗れている。
栃木は昨シーズンのチャンピオンシップ(プレーオフ)の準々決勝で千葉を、決勝で川崎を撃破して優勝している。どちらも大きなスコアの差はなかったが、チームの総合力でライバルから一歩抜きん出ていたのは間違いなく、相手チームのファンをも納得させる堂々の勝ちっぷりでの戴冠だった。
あれから3カ月、栃木には大きな変化が起こっていた。ヘッドコーチの交代は前任者の任期満了に伴うもので、想定されていたこと。想定外だったのは主力選手を次々と引き抜かれたことだ。栃木の強さはベンチスタートのセカンドユニットにも質の高い選手を揃え、40分間を通してパフォーマンスを落とさない盤石性にあった。先のプレーオフでも、渡邉裕規、熊谷尚也、須田侑太郎といったベンチ組が日替わりでヒーローになった。この3人のうち、渡邉は現役引退を決断したが、熊谷は大阪エヴェッサに、須田は琉球ゴールデンキングスへと移籍した。栃木が優勝した結果、彼らの活躍がクローズアップされ、引き抜かれることになった。
さらにはスタメン組の古川孝敏も琉球ゴールデンキングスに移籍。「自分を成長させることを考えてベストの選択をしたい」と公言していた古川の流出は、戦力ダウンはもちろん、選手が成長するためにベストな環境だと自負していた栃木にとってショッキングな出来事となった。
田臥勇太、遠藤祐亮、古川孝敏、ジェフ・ギブス、ライアン・ロシター。スタメンが1人欠けただけと思えばダメージは少ないが、各ポジションを2人で回す10人のチームだと考えれば、4人が抜けたことになる。さらにギブスは昨シーズンのファイナルでアキレス腱断裂の重傷を負い、前半戦を欠場することが決まっている。
補強は行ったものの、昨シーズンほどのチームの結束力を発揮するまでには相応の時間を要するだろう。そして日本代表でも主力を担う古川の穴は埋まらない。栃木は万全とは言いづらい状況で開幕を迎えることになる。
さらに悪いことに、昨シーズンさえ激戦区と言われた東地区のレベルはさらに上がっている。降格した秋田ノーザンハピネッツと仙台89ERSに代わり編入されたのは川崎ブレイブサンダースとサンロッカーズ渋谷。旧NBLの強豪が加わった上に、当然どのチームも王者を警戒して栃木包囲網を築いてくる。栃木にとっては連覇どころかチャンピオンシップ出場すら危うい状況ができつつあるのだ。
結果が出なくても不変のスタイル
しかし、キャプテンの田臥勇太は落ち着いている。アーリーカップで思わぬ敗戦を喫した後も、いつもと変わらぬ表情。「全員で戦うのがこのチームの強さ。プレーヤーだけじゃなくファンも一緒に戦うのがブレックスの強さですから、今年も一緒に戦ってもらえるようにやっていきます」と話す。
そう、チームの陣容は大きく変わったが、田臥のスタイルは変わらない。キャプテンとしてチームの結束をうながし、熱いファンの声援も巻き込んで一丸となって戦う姿勢を作っていく。その中で熟練のポイントガードとしての能力をコート内で発揮する。
選手が入れ替わったことについても「新しいバスケットのスタイルにチャレンジできるので、引き出しを増やせるようやっていきたい。自分にとってもチームにとっても新しいチャレンジで、それが楽しみです」と話す。
開幕直後の10月5日に37歳となる田臥だが、バスケットボールに対する情熱に衰える気配はない。新たにヘッドコーチに就任したのは長谷川健志。昨年のリオオリンピック最終予選に向け、田臥に日本代表復帰を決断させた指揮官だ。就任会見の席で「田臥や竹内、代表でやった選手とクラブでやってみたかった」と語った長谷川。言葉には出さないにしても田臥としては「彼のために」という思いがあるに違いない。
1年目のBリーグは、田臥が優勝トロフィーを掲げるシーンで美しく締めくくられた。続く2年目、田臥と栃木ブレックスはリーグでどんな役割を演じるのか。そう考えるとチーム状況にかかわらず開幕は楽しみなものとなる。
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