ネガティブなイメージが先行した加入直後

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本田圭佑がメキシコの古豪パチューカに加入してから、約3カ月が経過した。加入直後に右足のケガで戦列を離れたこと、そして推定400万ドル(約4億4500万円)というメキシコリーグ最高クラスの高額年俸が報じられたこともあり、当初は「高額投資の損失をどうやって埋め合わせるつもりだ?」、「彼に何が起こっている? プレーしないつもりなのか」とファンからも批判の声が巻き起こり、現地メディアでも「本田はクラブから特別扱いを受け、チームメートたちから怒りを買っている」と報じられるなど、ネガティブなイメージが先行していた。

しかし3カ月が経過し、彼を取り巻く状況は大きく変化している。戦線復帰して以降、彼は着実に結果を残し、評価を一気に高めているのだ。

本田にとってのメキシコリーグデビュー戦となった8月22日の第6節ベラクルス戦で移籍後初ゴールを挙げると、第11節クルス・アスル戦でもカウンターから40メートル近くを独走してゴールを決める。10月25日にはコパMXのサカテペク(メキシコ2部)戦で2ゴールを挙げ、続く29日のリーグ戦第15節サントス・ラグーナ戦でも“2試合連発弾”を記録。ゴールという目に見える結果を残し続けているため、ファンや地元メディアの評価もポジティブなものへと変わっている。

ここまでに挙げた5つのゴールはいずれも素晴らしいものだが、特にサカテペク戦の1ゴール目は圧巻だった。右サイドでボールを受けると、マイナス気味にカットインし、体を大きくひねりながら左足を一閃してファーサイドに鋭いボールを突き刺した。このゴールに、地元のサッカー情報サイト「SOCCERMANIA」は「本田圭佑、オリベル・アトムのようなゴラッソ(スーパーゴール)を決める」という見出しの記事で、「本田圭佑は、サカテペク戦で『Supercampeones(スーペルカンペオーネス)』で見られるような正真正銘のゴラッソを決めた」と伝えた。『スーペルカンペオーネス』とは、世界中で大人気のサッカー漫画『キャプテン翼』のスペイン語版のタイトルで、「オリベル・アトム」はその主人公、大空翼のスペイン語圏での呼び名である。確かにこのゴールは、翼君のドライブシュートを彷彿させるものだった。

試合後、ディエゴ・アロンソ監督は本田について「試合を重ねるごとに状態は良くなっている」と語るとともに、様々なポジションをこなせる本田のポリバレント性を高く評価。「本田自身のプレーも、チームも、これからさらに良くなっていくだろう」とコメントしている。

また、サカテペク戦の後、『MARCA』のメキシコ版は「本田がゴールを決めると、パチューカは大量得点を奪う」という見出しの記事を配信。ベラクルス戦4-1、クルス・アスル戦4-0、サカテペク戦5-0と、本田が得点を記録したすべての試合で大量ゴールが生まれている事実を紹介した。続くサントス・ラグーナ戦は2-2の引き分けに終わり、パチューカの大量得点とはいかなかったが、両チーム合わせて4ゴールが生まれたことを考えると、「大量得点が生まれた試合」と表現できないこともない。

複数のポジションで先発し、ゴールも量産

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そのサントス・ラグーナ戦のゴールも特筆に値すべきものだった。ビクトル・グスマンが右サイドから入れたグラウンダーのクロスを中央でフランコ・ハラが落とし、そこに走り込んだ本田が左足で合わせて決めている。得意の左足で軽く合わせ、コースを突いた見事な一撃だったことに加え、カウンターや個人技で奪ったこれまでのゴールと違い、チームメートとの連係から生まれた得点であることにも価値を見いだせる。「ここまで本田のゴールはすべてがゴラッソ」、「クラブW杯でも決めてくれ」と、ファンの評価も上々だ。

また、この試合ではサカテペク戦の1点目と似たような角度から果敢にミドルシュートを狙ったり、ハラに決定的なスルーパスを通したり、中央からサイドに大きく展開した後、再びボールを受けるためにゴール前に走り込んだりと、得点シーン以外にも本田らしいプレーを随所に見せている。復帰直後の鈍重さがなくなり、判断スピードや動きのキレ、精度を取り戻しつつある印象を受けた。得点後にチームメートと喜びを分かち合ったり、キックオフ前に言葉を交わしたりといったシーンを見ていると、「チームメートたちから怒りを買っている」という当初の報道はもはや杞憂だろう。

ちなみに、本田は10月上旬、チームのヨーロッパ遠征の直前に地元メディアの取材を受け、次のように語っている。さすがにスペイン語はまだ話せないようで、すべて英語でのコメントだ。

「(自分のプレーには)まだ満足していない。シーズン開幕時にケガをしてしまい、良いプレーができなかった。今はコンディションを取り戻しつつあり、パフォーマンスも良くなっている。プレーをするたびに自信を深めている。僕はFWじゃないので、ゴールを決めることは重要視していない。最も大切なのは、チームとして勝たなければならないということ。チームのために常にベストを尽くしている」

ケガからの復帰当初こそベンチスタートだったが、最近の試合ではボランチや右ウイング、センターフォワードなど、様々なポジションで先発出場している。そして本田の復調とともにチームも少しずつ調子を上げてきたが、一方で厳しい状況にも直面している。パチューカは第15節終了時点でリーグ戦10位につけている。リギージャ(上位8チームによる決勝トーナメント)出場圏内の8位クルス・アスルとの勝ち点差は3ポイントだが、17年前期リーグは残り2試合で、この3ポイント差を逆転するのは難しいこともあり、スポーツ情報サイト『Mediotiempo』は「リギージャ進出は絶望的」、「クラブW杯に頭を切り替えるべき」と論じている。

リギージャ進出を逃してしまうと、リーグ戦は11月17日で終了する。パチューカにとってのクラブW杯の初戦は12月9日。つまり、3週間以上も実戦から遠ざかった状態でクラブ世界一を決める大会に挑まなければならなくなる。「クラブW杯に切り替えるべき」だとしても、リギージャに進んで実戦感覚を維持することは必要不可欠なのだ。

これまで数々の逆境に立ち向かい、それを乗り越えてきた本田。日本代表の欧州遠征メンバーからも外れた今、パチューカを大逆転でのリギージャ進出に導き、自らの評価をさらに高めることはできるだろうか。

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池田敏明

著者プロフィール 池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。