本田圭佑が一発回答! メキシコへの適応示すミドルでデビュー戦初ゴール
日本代表MF本田圭佑が22日、メキシコリーグ第6節のヴェラクルス戦に途中出場し、同リーグデビューを果たした。パチューカの補強の目玉とされながらも、開幕から負傷が続き、批判も受けていた本田だが、デビュー戦でしっかりと結果を残して自身の価値をアピールしている。
文=VICTORY SPORTS編集部
逆境をチャンスに変えてきたこれまでのキャリア
どこまでも逆境に強い男だ。22日、メキシコリーグ第6節のヴェラクルス戦に途中出場した日本代表MF本田圭佑は、後半13分に途中出場してメキシコリーグデビューを果たすと、そのわずか15分後には、初ゴールを記録した。
本田がパチューカに移籍することが発表されたのは、7月14日のことだった。新シーズンの目玉としてメキシコ王者に加わった本田だが、推定4億円以上というクラブトップの金額を受け取りながらも、右足ふくらはぎの肉離れで出遅れてしまう。クラブが前期リーグの開幕戦から3連敗を喫したときには、ファン・サポーターから「いつになったらプレーをするんだ?」という不満の声があがり始め、地元紙には「多くの選手たちの怒りを買っている上に、ドレッシングルームに異変を巻き起こしている」と、糾弾するコラムまで掲載された。
その後、チームはリーグ戦で2連勝を収めたが、負傷の完治を目指していた本田はベンチ外が続いていた。このデビュー戦まで本田は逆境に身を置いていたが、しっかりと自らの価値を証明する形となった。現地メディアも「パチューカの新たなアイドルにふさわしい存在だと証明した」「チームメイトやファンとの絆を確固たるものとした」と、それまでの評価を覆してみせた。
これまでのキャリアを振り返っても、本田は逆境で結果を残してきた。記憶に新しいのが、昨シーズンのことだ。若手への切り替えを進めたミランにあって、ほとんど出場機会を与えられていなかった本田だが、第37節のボローニャ戦の後半13分に途中出場すると流れをミランに引き寄せた。そしてチームが先制点を挙げた4分後には、直接FKからセリエAでは実に462日ぶりとなるゴールを決めて見せたのだ。この試合に3-0で勝利したミランは2017-18シーズンのヨーロッパリーグ出場権を獲得。本田は4シーズンぶりとなる欧州カップ戦の出場権を置き土産に、ミランを去ったのだ。
2010年の南アフリカ・ワールドカップでも、逆風の中で結果を残している。壮行試合で日本は、韓国代表に0-2で敗れるなど、低調な試合が続き、勝つこともできずに苦しんでいた。そんな中で迎えた初戦のカメルーン戦で、本田は日本代表を救う働きを見せる。本来とは異なる1トップに入った本田は、先制ゴールを決めて1-0での勝利の立役者になった。さらにグループステージ第3戦のデンマーク戦でも直接FKを叩き込み、FW岡崎慎司のダメ押しゴールもアシスト。3-1の勝利の立役者となった。その活躍もあり、前評判の低かった日本はベスト16進出を果たしたのだった。
さらに遡ると大きな期待を集めた北京オリンピックは、3戦全敗に終わった。フル代表デビューを果たしていた本田は、中心選手として期待されたが、結果を残せなかった。さらに、2008年1月に移籍したオランダのVVVフェンロでも、低迷するチームを浮上させることはできずに、チームは2部に降格してしまう。キャリアのどん底と言える状況に陥ったが、オランダ2部リーグで本田はプレースタイルを大きく変えて、ゴールを取らせる選手から、ゴールを奪う選手へと変貌していった。結果、36試合に出場して16ゴール、13アシストを記録。チームはオランダ2部リーグを優勝して1シーズンで1部リーグに復帰、自身も同リーグの年間最優秀選手に輝いている。
シーズン開幕直後に結果を残してきた本田圭佑
©Getty Imagesなぜ本田は、逆境をチャンスに変えて飛躍できたのだろうか。これまでのシーズンを振り返ると、そのヒントが浮かんでくる。
まずはフェンロ時代の09-10シーズン、本田は強豪PSVとのエールディビジ開幕戦でシーズン初ゴールとアシストを記録(△3-3)。CSKAモスクワに移籍した2010年も、ロシアリーグの開幕戦となったアムカル戦でゴールを決め、1-0の勝利に貢献した。12-13シーズンは第2節のアムカル戦で1ゴールを記録(●1-3)。CSKAモスクワでのラストシーズンとなった2013年には、シーズン最初のロシアスーパーカップでゼニトを相手に2ゴールを決めて、タイトルをもたらす。ミランに移籍してからも14-15シーズンの開幕戦でラツィオを相手に1得点を決め(〇3-1)、15-16シーズンもシーズン最初の試合となった国内杯ペルージャ戦で1得点1アシスト(〇2-0)という結果を残している。欧州で10シーズンを過ごした本田だが、ほとんどのシーズンで初戦から得点に絡んでいたのだ。
シーズン開幕から結果を出せる。これはオフの期間もしっかりと準備ができているからに他ならない。その姿勢はメキシコに渡っても変わらなかった。ヴェラクルス戦に途中出場した本田は、出場直後にミドルシュートを放っている。スタジアムが高地にあり、ボールの変化が激しくなるメキシコリーグでは、距離のある位置からのシュートが有効だ。出場できなかった時期も、しっかりと環境への適応を怠らずに、自身の武器を磨いていたからこそ、デビュー戦で初ゴールを挙げられたのだろう。
24日には、W杯アジア最終予選を戦う日本代表メンバーが発表されるが、メキシコで負傷から復帰した本田は確実に招集されるだろう。本田が招集されれば、25日に敵地で行われるティフアナ戦後に帰国して、日本代表に合流する。26日、27日に試合を控える選手が多く、特に欧州組の合流は31日のオーストラリア戦直前になることが濃厚だ。6大会連続のW杯出場権のかかった重要な試合を前に、また一つ逆境を乗り越え、一足早く帰国できる本田にかかる期待は自然と高まっている。