連覇を目指すタレント集団・大阪桐蔭、優勝へのカギは
――今年の大阪桐蔭からは何人ドラフト1位が出るか?
そんな声も聞こえてくる今年の大阪桐蔭(大阪)。「平成高校野球界の横綱」と呼ぶにふさわしい全国大会実績とプロ輩出数を誇る名門に、今年は例年以上に逸材が集まっている。
身体能力が高く、投打に魅力を秘める根尾昂、高校屈指の快足を筆頭に総合力が高い外野手の藤原恭大が看板選手。他にも破壊力のある快速球と実戦での強さも身につけつつある右腕・柿木蓮、底知れない潜在能力を感じさせる大型左腕・横川凱、ツボにはまれば一発長打の魅力がある右打者・山田健太。この5人はドラフト候補と言っていいだろう。
さらに、高校生離れした対応力の打撃を見せる中川卓也、強肩捕手の小泉航平、2番打者ながら強いスイングが光る宮崎仁斗と能力が高い選手が揃っている。
根尾、藤原、柿木、横川、山田、中川、宮崎の7人は昨春のセンバツ優勝を経験しているメンバーで経験豊富。また、大阪桐蔭はプロ、社会人、大学へと巣立ったOBがグラウンドに顔を出して高い技能を見せつけ、選手たちは慢心することなく高みを目指す。
死角はないように思えるが、今春センバツで「優勝間違いなし」と太鼓判を押せるかといえばそこまでの底力はまだない。根尾も藤原も素材は超一級品ながら、毎試合高いパフォーマンスを発揮できるだけの安定感はまだなく、エース格の柿木も昨秋は体調が万全ではなかった。
また、過去の大阪桐蔭の全国優勝チームを振り返っても、「一球同心」のチームスローガンを体現するようなチームが結果を残している。今大会も結束を深められれば、優勝争いの先頭に立つのは間違いないだろう。大阪桐蔭の初戦は大会4日目、21世紀枠で選出された伊万里(佐賀)との戦いになる。
大阪桐蔭を追うのは、同じく近畿地区から選出され、タレント軍団である智辯和歌山(和歌山)だろう。昨夏の甲子園でも活躍した速球派右腕の平田龍輝に、逆方向へも強い打球を放つ驚異の2年生・黒川史陽。そして何より、右ヒジの疲労骨折から復帰するスラッガー・林晃汰はスカウト陣も注目する逸材だ。他にも文元洸成、冨田泰生といった右打者にもパワーがあり、全国有数の陣容を誇る。
近年の智辯和歌山は甲子園に出場してももろさが目立ち、甲子園通算最多勝利監督の高嶋仁監督も元気がないように見えた。だが、高嶋監督の教え子で元プロ選手の中谷仁コーチが2017年から指導陣に加わってから、息を吹き返した感がある。智辯和歌山の初戦は大会3日目、富山商(富山)との対決だ。
明徳義塾に挑む中央学院のエースで4番、大谷拓海
明徳義塾(高知)、東邦(愛知)、明秀学園日立(茨城)、東海大相模(神奈川)も有望選手を擁し、上位進出が期待されるチームだ。
明徳義塾は昨夏の甲子園でも実力を発揮した本格派サイドスロー・市川悠太を擁する。市川に試合をまとめる力があり、ある程度失点が計算できるのが明徳義塾の強みだ。野手も伝統的に試合巧者のくせ者が揃っており、昨秋の明治神宮大会では優勝を飾った。
東邦には大きな伸びしろを残す187センチ94キロの大型右腕・扇谷莉がいる。さらに愛知知多ボーイズ時代から将来を嘱望された2年生強打者・石川昂弥は、右方向にもスタンドインする能力を持っている。
明秀学園日立は初出場ながら、八戸学院光星を全国区のチームに育てた金沢成奉監督が率いる破壊力のあるチーム。二遊間を組む芳賀大成、増田陸の二人は打線でも中核を担い、特に遊撃手を守る増田は華のあるプレーで人を惹きつける。
伝統校・東海大相模には高校通算46本を放ち、総合力の高い外野手・森下翔太がいるものの、全体的には小粒感が否めない。昨秋の右手首骨折から復帰するエース・斎藤礼二ら、厚みのある投手陣を中心とした勝負強さで春の甲子園を勝ち抜きたい。
明徳義塾は大会3日目に中央学院(千葉)と、東邦は大会4日目に花巻東(岩手)と、明秀学園日立は大会初日に瀬戸内(広島)と、東海大相模は大会5日目に東筑(福岡)、聖光学院(福島)の勝者と対戦する。いずれも好カードだ。
特に明徳義塾が対戦する中央学院はエースで4番、投打に高い能力を誇る大谷拓海がいる。昨秋の明治神宮大会では3対5で明徳義塾に敗れたが、大谷は左打者ながら神宮球場のレフトスタンド中段に飛び込む特大弾を放ち、観衆の度肝を抜いた。
東邦と対戦する花巻東は、逸材候補と呼び声が高い2年生右腕・西舘勇陽に注目。腕の振りのしなやかさ、強さは一目で豊かな将来性を感じさせる。甲子園でその才能を見せつけられるか。
2年生にも好選手が揃う第90回記念大会
瀬戸内の主砲・門叶直己は、昨秋の中国大会で1試合4本塁打という戦慄の離れ業をやってのけた長距離砲。春は実戦で目が慣れていない打者よりも投手が有利という定説があるが、強列なスイングを売りにする明秀学園日立との対決は目を引くだろう。
東海大相模と対戦するのは、東筑と聖光学院の勝者になる。2年時から甲子園で活躍する強打者・矢吹栄希を中心にした福島の常勝軍団・聖光学院が有利に見えるかもしれない。だが、東筑もサイドハンド右腕・石田旭昇が本領発揮してロースコアの展開になれば、勝負はわからない。
また、昨秋の明治神宮大会に出場した創成館(長崎)、日本航空石川(石川)、静岡(静岡)も地区チャンピオンにふさわしい実力校。創成館はスケールのある大型左腕・川原陸だけでなく、伊藤大和ら実戦で力を発揮できる投手を複数抱える。昨秋の明治神宮大会では準決勝で大阪桐蔭を破り、準優勝に輝いている。
日本航空石川は初出場だが、巨漢スラッガー・上田優弥らとにかくバットがよく振れる強打線が魅力。昨秋に才能の一端を見せた2年生右腕・重吉翼の成長も楽しみだ。
静岡は2年連続明治神宮大会、春のセンバツと出場することになり、中心選手の村松開人、成瀬和人ら経験豊富なメンバーがいるのは頼もしい。創成館は大会4日目に下関国際(山口)と、日本航空石川は大会2日目に21世紀枠の膳所(滋賀)と、静岡は大会2日目に同じく明治神宮大会出場組で試合運びのうまい駒大苫小牧(北海道)と対戦する。
個人に目を向けると、投手では土居豪人(松山聖陵・愛媛)、沢田龍太(富山商・富山)、定本拓真(三重・三重)といった本格派右腕、野手では遊撃手を守る小幡竜平(延岡学園)の評判が高い。
また、2年生にも好選手が多いのが今大会の特徴で、前出の黒川(智辯和歌山)、石川(東邦)、西舘(花巻東)、重吉(日本航空石川)以外にも、投手なら井上広輝(日大三・東京)、奥川恭伸(星稜・石川)、黒河竜司(英明・香川)、遠藤成(東海大相模)といった本格派右腕、捕手にも渡部雅也(日大山形・山形)という好素材がいる。
「高校生は冬場に化ける」と言われる。本稿で紹介した選手以外から、意外なスターが誕生する可能性も大いにある。その答えは、23日からはじまる第90回記念選抜高校野球大会で明らかになる。
1位には名門3校が並ぶ! 過去10年出身高別プロ野球選手輩出ランキング
3月のコラムで掲載した「高校別プロ野球選手輩出ランキング」。これはあくまで現役選手に限ったものだった。より直近の勢力図を見るために、今回は過去10年間にプロ(NPB)に入団した選手の出身校をランキング化することにした。なお、社会人と独立リーグについては複数のチームを経てNPB入りしている選手もいるが、そのようなケースは各カテゴリーの中でドラフト指名時に所属していたチームのみをカウントした。また、育成選手としての入団も対象としており、指名を拒否して入団しなかったケースは対象外としている。
高校野球を蝕む過激な「食トレ」は、なぜなくならないのか?
近年、加速度的に進む高校野球界の「打高投低」の陰には、一つの潮流が存在する。「食トレ」――。アスリートにとって食事が大事であることは、今さら言うまでもないが、近年の高校野球ではとにかく「体を大きくすること」を重視するあまり、極端なノルマを課している例も少なくないという。そこで今回は、昨今行われている「食トレ」の是非を考察していきたい。(文=花田雪)
野球のトレーニングに「走り込み」は必要なのか? vol.1
日々、進化し続けるスポーツのトレーニング事情。近年、とりわけ話題になっているのが「走り込み」と「ウェイト・トレーニング」の是非をめぐる問題だ。野球という競技において「走り込み」はそれほど効果がなく、「ウェイト・トレーニング」にもっとしっかり取り組むべき、という考え方が広まってきている。
「わからない」も立派な正解。しつもんメンタルトレーニング前編
30年ぶりに連勝記録を更新した将棋界の新鋭、14歳の藤井聡太四段。スポーツの世界でも卓球の張本智和(13歳)、平野美宇(17歳)をはじめ、10代選手の活躍が報じられている。彼らのような天才少年・少女が登場する度に話題になるのが、彼らはいかにして育ったのか?という疑問だ。
「この練習、本当に必要?」 非効率で形骸化する日本のキャンプの現状を考える
プロ野球の春季キャンプが大詰めを迎えている。新シーズンへ向けたチームづくりを進めるうえで欠かすことのできないこの時期の風物詩となっているが、その中には、選手が何の目的かわからないままなんとなくやっているという練習メニューもたびたび見られる。はたして、現状のキャンプの仕組みはこれが“正解”といえるのだろうか――?(文=花田雪) ※画像はイメージです。