笹生心太さんには、レジーさんとの対談「Jリーグは、「理想のお客さん像」の再定義が必要ではないか? レジー×笹生対談」にてVICTORYに初出演いただき、その高い知見が大きな評判となりました。

Jリーグは、「理想のお客さん像」の再定義が必要ではないか? レジー×笹生対談

2017シーズンのJリーグは過去最多の動員数を記録(J1の平均観客数は約5.1パーセント増)、今季は金曜開催を打ち出し2万人を動員する試合も出るなど好調に推移しています。一方で、まだまだ必要な打ち手を全クラブが打てているわけでは当然ありません。(構成・文:レジー、笹生心太)

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 上記対談は、「Jリーグが今後一般的なレジャーとして定着していくために」がテーマでした。今回ご紹介する笹生さんの単著は、題名通りスポーツとレジャーの狭間にあると言ってよいボウリングについてのものです。その中でも、今回取り上げる箇所は「沖縄県のボウリング事情」についてのものです。
 
 本土とは全く異なる、知られざる沖縄のボウリング事情。それは、例えばこういうものです。
 
●沖縄のボウリング場は、ほぼ例外なく飲酒が可能
●リーグでプレーする人が圧倒的に多い
●ほぼ夜間にリーグ戦が行なわれている
●その試合数は一週間に計20本にも及ぶ……
 
 なお、本文はPC・スマートフォン等での可読性を高めるため適宜改行を入れています。書籍版と異なる改行は、すべてVICTORY編集部によってなされたものです。予めご了承ください。

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<転載ここから>

 沖縄県のボウリング場は、〈スポーツ〉イメージと〈レジャー〉イメージのハイブリッドとも呼ぶべき状況となっている。この事例分析から期待されるのは、本土におけるボウリングのあり方を相対化することである。
 
 沖縄県のボウリングは、米国のボウリング文化の影響を強く受けている。県内のすべての米軍基地内には、米兵用の娯楽施設としてボウリング場が設置されている。そこでプレーしていた米兵たちが基地の外のボウリング場でもプレーするようになり、人々の間に米国式のボウリングが広まっていった。
 
 また、2001年の米国同時多発テロ事件までは比較的容易に日本人も米軍基地内のボウリング場でプレーをすることができ、現在でも米軍関係者のエスコートがあればそれは可能である。このように、米兵経由で米国式のボウリングのあり方が伝わった沖縄県では、本土とは全く異なる形でボウリングが普及していった。その特徴は、飲酒とリーグ文化が密接に関わっている点に集約される。
 
 すでに述べたように、特に本土における流行期のボウリング関連団体は、〈スポーツ〉としてのイメージを高めるための施策の1つとして、アルコール販売の自粛を各ボウリング場に求めていた。近年ではそうしたアルコール販売に関する締め付けは緩んでいるが、それでもアマチュアやプロの大会を実施する際には、アルコール販売は禁止されている。
 
 このように、〈スポーツ〉イメージを獲得するための重要な手段の1つが、アルコールの販売禁止措置なのである。ところが沖縄県では、ほぼ例外なくすべてのボウリング場でアルコールが販売され、また多くの人々はアルコールを持ち込んで飲みながらプレーしている。それは、JBCの大会を主催するようなボウリング場でも例外ではない。
 
 また、本土における〈スポーツ〉イメージのボウリング場は、固定客を獲得するためにリーグを編成することが一般的になっているが、それでも依然としてオープンボウラーが客の大半を占めているのが現状である。一方の沖縄県のボウリング場では、基本的にリーグでプレーする人が圧倒的に多い。各ボウリング場では、ほぼ毎日、夜間にリーグ戦が行われている。
 
 例えばドラゴンボウルでは、平日は毎日夜間にリーグ戦が実施され、それらは1週間に計20本にも上るが、それほどまでに沖縄県では「リーグボウラー需要がすさまじい」(ドラゴンボウルT氏)ものである。リーグには個人戦とチーム戦があるが、チーム戦が主で、チーム内でユニフォームを揃えることも珍しくない。
 
 各チームは3名から5名で構成されており、それぞれの合計得点で勝敗を決める。毎週1節ずつ試合をこなし、だいたい20週前後かけて総当たりで対戦するのが一般的である。こうしたリーグ編成は、ボウリング場側にとっては長期的な収入の見通しが付きやすく、経営を安定化させるために不可欠である。この点は、本土のボウリング場と変わらない。
  
 また、沖縄県にはコマーシャルリーグや職域リーグなどと呼ばれるリーグもある。これは、チーム名に地域の企業名が冠されており、そのチームには従業員が参加する場合や、例えばその飲食店の客が参加する場合もあり、後者の場合には客同士の交流の場という意味合いを持つ。これらのリーグの場合には、企業が参加費を負担したり、参加者への飲食物の差し入れをする場合もある。 
 以上のように、沖縄県のボウリングはリーグが中心である。リーグ自体は本土にもあるものだが、その内実は本土のものと全く異なる。図34は、宜野湾市にあるギノワンボウルにおけるリーグ戦の様子である。

図34 沖縄県のボウリング場におけるリーグの風景(出典:笹生心太)

 注目すべきは、カウンターに並べられた大量の飲食物である。地元のビールや泡盛、そして手作りのオードブルが並べられている。これらは場内で購入したものではなく、参加者たちが各自で持ち込んだものがほとんどである。
 
 参加者たちは競技開始30分ほど前に集合する。持ち物は、ボールの入ったバッグに加え、ビール、泡盛、コーヒー、ウーロン茶、オードブルなどの入ったビニール袋、そして人によっては氷の入ったクーラーボックスなどである。競技が開始されると、1フレーム投げるごとにカウンターに戻り、そこで飲食を行いながらチームメイトの投球を眺める。
 
 また、リーグ参加者の家族も帯同する場合が多く、それらの人々はカウンター備え付けの椅子に着席して飲食を行いながら他の参加者やその家族と交流している。こうした光景は、県内のラウンドワンを除いたほぼすべてのボウリング場に共通のものである。
  
 場内への飲食物の持ち込みは、禁止しているボウリング場とそうでないボウリング場がある。第2章第3節にて米国のボウリング場について考察した際に述べたように、リーグは時間をかけて行われるため、設備の回転率が鈍化する。実際、沖縄県のリーグでは、3ゲームでの対戦を3~4時間程度かけてプレーすることが一般的である。
 
 米国のボウリング場では飲食物を販売し、その売り上げが設備の回転率鈍化分の減益を補っている。こうした理屈で考えれば、沖縄県の各ボウリング場でも飲食物持ち込みを禁じ、場内でのみ販売することが当然と考えられるが、現実的にはそうなっていないボウリング場が多い。筆者の調査範囲内では、人口の少ない地域には飲食物持ち込みを禁じ、場内の設備で購入することを呼び掛けるボウリング場が多かった。しかし人口密集地域では、持ち込みを認めているか、それを黙認しているボウリング場がほとんどであった。
  
 こうした違いは、周辺地域に他の娯楽があるかどうかによるところが大きい。この点について、マチナトボウルM氏は以下のように述べる。

前はですね、センターの中で販売をしていたんです。で、お客さんに…まあ[飲食物持ち込みを]やらないでって言われても、みんなやりますから。[中略]そのへんは承諾しないと商売にならないですから。 (調査者:持ち込みを認めることが商売になる?) みんな好きなものを作って…「一品持ち寄り会」のような感じですね。もしここでだめだったら持ち寄れるところに集まってくるっていう影響が出てきます。[中略]自分たちのところに留めておきたいっていうのはありますね。この辺は近隣[のボウリング場]が多いですから。

 すなわち、人口が少なく他の娯楽が少ない地域では、飲食物持ち込みを禁止しても客はやって来るし、そこで飲食物を購入する。ところが人口が多く、またボウリング場が密集しているような地域では、1ヶ所が飲食物持ち込みを禁止しても、客が他のボウリング場に流れるだけなのだ。
  
 また、サザンヒルS氏によれば、1990年代後半には、全県的にボウリング場への飲食物持ち込みを禁止する動きがあったという。この時期は、バブル経済の崩壊に伴って県民の可処分所得が減少した時期でもあった。その時期にボウリング場への飲食物持ち込みが禁じられると、人々はボウリング場でも居酒屋でもなく、費用のあまりかからない各家庭での飲み会を行うようになった。その結果、ボウリング場に賑わいがなくなってしまった。
 
 そこでサザンヒルは、1997年の開業当初から真っ先にこの持ち込み禁止措置を破るようになった。つまり、「お金をどうやって落としに出てきてもらうか…だよね。おうちで家飲みしてもらうくらいだったら、家飲みをここでしてってこと」(玉城氏)というように、何よりボウリング場に来てもらうことが重要となり、そこで飲食物の持ち込みが行われてもよいと考えている。なお、サザンヒルは沖縄県ボウリング場協会の事務局が設置されている、県内でもっとも〈スポーツ〉イメージの強いボウリング場の1つである。結局、近隣の他のボウリング場もそれに追従し、周辺のボウリング場では飲食物持ち込みが再度認められるようになった。
 
 このように、沖縄県のボウリング場のうち、特に人口密集地域のボウリング場では、ボウリング場側と参加者側の間に、飲食物の持ち込みをめぐったある種の緊張関係がある。
 
 それを如実に表しているのが、ボールキャスターという、車輪の付いたバッグを利用する客の多さである。さくらボウルの事例にて述べたように、本土のボウリング場では、固定客は貸ロッカーにボールを置いていくケースが多い。しかし沖縄県のボウリング場では、リーグ参加者の多くがボールキャスターを引いてボウリング場にやって来る。
 
 つまり、固定客であってもボールを貸ロッカーに置いていくのではなく、都度ボールを持ち帰っているのである。このことは、ある意味では、いつでも他のボウリング場に移ることができるという姿勢の現れと見ることもできるだろう。それに対して、ボウリング場側は貸ロッカーを使って「一般客の足を止めさせ」(ドラゴンボウルT氏)たいと考えている。ボウリング場側としては、貸ロッカーを利用してもらうことは収入が入ること以上に、そのボウラーが他のボウリング場に流れていかないということを意味するのである。そのために、ボウリング場側は貸ロッカーを大量に設置している。
 
 以上のように、飲食を行いながらプレーするリーグは、沖縄県の人々にとっての重要なコミュニケーションの場となっている。サザンヒルS氏は、同施設を「大きなコミュニティの場にしたい」と話す。実際、筆者は夜間のリーグ時間帯に同施設を訪れたが、大人たちが飲み食いをしながらボウリングをプレーする傍らで、それら参加者の子供と思しき小学生たちが、ゲームをしたり、ボウリングをするなどの交流を重ねていた。その中にはS氏の子供もおり、彼らはボウリング自体に興味があるというよりも、友達同士の遊び場としてボウリング場に来ているという。
 
 また、沖縄県の人々にとってボウリング場が重要なコミュニケーションの場となっていることを示す例として、ボウリング場が模合(もあい)で集まる場になっていることが挙げられる。模合とは、他の地方では無尽講(むじんこう)や頼母子講(たのもしこう)などと呼ばれる場合もある、数人の仲間同士での金銭の貸し借りのことである。
 
 具体的には、例えば10名で模合を行う場合、各人が毎月1万円ずつ持ち寄り、毎月1名が、全員の合計10万円を受け取ることができる。毎月異なる1名が10万円を受け取っていき、10ヶ月で1周することとなる。こうした模合に参加する人々は、毎月少額の金銭を支払う代わりに、一度にまとまった金銭を得ることができるのである。これによって、自動車購入代金や子供の進学費用などに充てることができる。
 
 一見、ただの金銭の貸し借りに見えるが、例えば上記のような高額の金銭が必要になった際に高利貸しに頼らずに済むなど、沖縄県の人々にとっては生活を安定化するための重要な仕組みである。
  
 あるボウリング場のリーグに参加しているシンザトさんは、現在4つの模合に参加しており、そのうちの1つがボウリングのリーグの仲間同士のものだという。また玉城氏も、プロとなって本土に転戦するようになる以前は、ボウリング関係の仲間と作る複数の模合に参加していた。
 
 ボウリング場は居酒屋と並んで模合に適した場所である。なぜなら、玉城氏が「友達が集まる場だからということですね、ボウリングは関係なくね。[中略]親密になれるっていう…そういうのもあるんじゃないですかね」とするように、ボウリング場は親密感を生む、人々が集まりやすい場だからである。地域の青年会などがなくなりつつある今、模合という人々の生活に直結する重要な営みを行うための場として、ボウリング場が重要となっているのだ。
 
(転載ここまで)

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Jリーグは、「理想のお客さん像」の再定義が必要ではないか? レジー×笹生対談

2017シーズンのJリーグは過去最多の動員数を記録(J1の平均観客数は約5.1パーセント増)、今季は金曜開催を打ち出し2万人を動員する試合も出るなど好調に推移しています。一方で、まだまだ必要な打ち手を全クラブが打てているわけでは当然ありません。(構成・文:レジー、笹生心太)

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ビズリーチ・南壮一郎が語る人材育成。「スポーツ好きではなく、真のビジネスパーソンを」

さる7月5日、『プロスポーツビジネス 私たちの成功事例』(東邦出版)の出版を記念し、同書に登場するスポーツビジネスのキーマンが出演するイベントが行なわれた。モデレータとなったのは、UEFAチャンピオンズリーグに携わる初のアジア人として知られる岡部恭英氏。この記事では転職サイト「ビズリーチ」 (http://bizreach.jp)や求人検索エンジン「スタンバイ」(http://jp.stanby.com)などを運営する株式会社ビズリーチの代表取締役・南壮一郎のパートをほぼ全文お届けする。

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