2018年Jリーグは好調に推移しているものの、マクロ的な状況をみれば「限られた可処分時間・可処分所得を、他のエンタメと奪い合っている」という厳しい競争にさらされていることに変わりはありません。
 
Jリーグはすでにアドバイザーとして複数のトッププロと契約を結び、様々なアドバイスを受けています。そうした「他分野のプロの知見」は、Jリーグを発展させていくうえで欠かせないものとなるはずです。
 
そこで今回は、熱心な柏レイソルサポーターであり本業はコンサルタントでもある音楽ブロガー・レジー氏、その友人でありスポーツ社会学および余暇社会学を専攻する学者である笹生心太(ささお・しんた)氏に「余暇としてのJリーグ」をテーマに対談していただきました。

「コアファン以外蚊帳の外」という、どの業界にもある問題

―笹生さんはスポーツ社会学および余暇社会学を専攻する学者、つまりスポーツやレジャーをアカデミックに分析する立場でありつつ、Jリーグ開幕時からのJリーグファンでもあり、さらには東京都リーグ所属のDiavolo SPFCや宮城県選抜などで競技フットサルの選手としても活動してきたというバックグラウンドもあります。様々な角度からJリーグに接している中で、現状指摘すべき課題としてどういったものがあると思いますか?

笹生 競技志向でフットサルをやっていた立場からすると、そちらの週末の練習や試合とJリーグの試合がバッティングすることが多かったんですよね。この体験は個人的な話ではありますが、「Jリーグはあくまでも余暇の時間を取り合ういろいろな候補の1つにすぎない」「Jリーグを好きな人でも、それよりも優先度が高い用事が発生することは普通にある」というのはJリーグに関係している人たち全員が持つべき視点だと思っています。

レジー 確かに「Jリーグのことを第一に考えて週末の予定を組んでいる人」というのは少数である、というところから議論を始める必要がありますよね。

笹生 はい。一方で、僕は2010年から2015年まで仙台の大学で働いていて、ベガルタ仙台の試合をよく観に行っていたのですが、仙台では年配の方が観客もしくはボランティアとして日常的にスタジアムにいるという光景がたくさん見られます。おそらく都心部に比べて娯楽の選択肢が少ないので、だからこそ実現できている部分もあると思いますが、そうやって「必ずしもJリーグを最優先に考えているわけではない人が気軽にスタジアムに来ている」という状況をこの先どこまで作っていけるか、という問いはJリーグが今後一般的なレジャーとして定着していくかについて考えるうえでますます重要になってくるはずです。

―レジーさんはいかがでしょうか。様々な業界の事業について考える戦略コンサルタントでありつつ、ブロガー・ライターとして音楽業界への知見もあるわけですが、そういった立場から今のJリーグはどう見えていますか。

レジー 今話題に挙がったような「濃いJリーグ好きではない層」をとれているクラブとそうでないクラブの差が出つつあるような気がしています。たとえば僕が長年応援している柏レイソルは、「売上高の中から、少しでも多くの費用をチーム人件費に投入する」「売上が増えた分、更にチーム人件費を増やす」という方針、勝つことこそがファンサービスであるという考え方をサポーターズカンファレンスなどで明言していますが、そういったスタンスだと「狭い範囲のサッカー好き」以外にアピールするのはなかなか難しいような気もしますし、勝ち負けはもちろん重要ですが本来的には水物であるチームの成績にそこまで経営上の重きを置いてしまうのは結構危ういなあとも感じます。日立台のあの客席とピッチの距離を考えると「初めてJリーグを見るならまずは日立台で」というような認識が広まってもいいくらいなのに、なかなかそういうふうにはならない。

笹生 外から見ていると、川崎フロンターレはそのあたりとても上手いですよね。企画力もそうですが、それを自治体や周辺のプレーヤーを巻き込んで実現する実行力こそに凄みがあるのかなと。

レジー SHISHAMOと良い関係を作れたのも、クラブとしての話題性や若年層へのリーチにいい影響を与えているように思います。ただ、「コアファン以外蚊帳の外」というのはどの業界でも程度の差はあれ発生している問題だと思うんですよね。たとえば音楽の世界にしても、いろいろな事情はあるにせよ、「平日の夜にお客さんを3時間近く立ちっぱなしにさせて、ご飯も出さずにライブを見せる」というライブハウスの運営スタイルが一般的であるという時点で、よほど音楽に関心のある人以外はそこに繰り返し足を運ぼうとは思わない気がします。外部からの視線というか、「当たり前を疑う」みたいなことをやったうえでそのエンタメのあり方を再構築するのはやっぱり難しいんですよね。

笹生 「当たり前を疑う」というのは、まさに社会学的な視点で、非常に重要な見方だと思います。川崎の取り組みももともとは天野春果さん個人の資質による部分が大きそうですし、V・ファーレン長崎の高田明社長がクラブのあり方をガラッと変えたことも含めて、最終的には「人」の問題に帰着する部分が大きそうですね。「サッカー馬鹿」的な視点から脱却できる人材をどれだけ確保できるかという。

レジー そうですね。そうなったときに、各所で指摘されている「給料が安くても、もっと言えばタダでもプロスポーツに関わりたいという人たち」の存在をどう考えるかという問題にぶち当たりますね。そういう人たちに甘える形でクラブスタッフの給与が高くならなければ、他業界の優秀な人材をとれるわけもないですし。ビズリーチの南社長が以前「スポーツに関わる全ての企業のみなさまにお願いしたいのは、スポーツ好きではなく、ぜひ真のビジネスパーソンをスポーツビジネスの世界に迎え入れてもらいたい」と話していたのが印象的です。

ビズリーチ・南壮一郎が語る人材育成。「スポーツ好きではなく、真のビジネスパーソンを」

さる7月5日、『プロスポーツビジネス 私たちの成功事例』(東邦出版)の出版を記念し、同書に登場するスポーツビジネスのキーマンが出演するイベントが行なわれた。モデレータとなったのは、UEFAチャンピオンズリーグに携わる初のアジア人として知られる岡部恭英氏。この記事では転職サイト「ビズリーチ」 (http://bizreach.jp)や求人検索エンジン「スタンバイ」(http://jp.stanby.com)などを運営する株式会社ビズリーチの代表取締役・南壮一郎のパートをほぼ全文お届けする。

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笹生 現状では「プロスポーツに関わりたければ、ある程度までは『やりがい搾取』を受け入れないといけない」というような構造がありますし、もう少し健全な形でいろいろな人の知見がJリーグに流れ込むような仕組みが必要ですよね。以前在籍していた仙台の大学では、ベガルタや楽天イーグルスなどの運営に関わることで単位が取得できるプログラムがありました。勉学の一環として学生がアイデアを出す、というのもいちユーザーの生の意見を反映させる取り組みとしては悪くないのかなと思います。

レジー 副業が今後一般的になっていくのであれば、別の仕事で生計を立てられるくらいの給与を得つつ、そこでの知見をプロスポーツクラブで活用する、というような流れもありえるかもしれないですね。もちろんクラブの収益性が高まって給与水準も上がるという状況を目指すのが本筋ではありますが。

©GettyImages

「理想のお客さん像」の再定義・発信が必要では

――「コアファン以外にも目を向けなくては」というお話がありましたが、ここまでのJリーグを支えてきたのが「サポーター」、つまりはJリーグの各クラブのコアファンである、ということは外してはいけない事実だと思います。

レジー それは間違いないと思います。「俺たちがクラブを支えている」というような自負を持った層はクラブ側にとっても必要だったはずですし、そういう人たちがJリーグやクラブの礎を築いたのは確かですよね。

一方で、最近は2014年の浦和の無観客試合のきっかけとなった出来事のように、サポーターが先鋭化することの弊害も目立ってきているように感じます。このタイミングで、「ゴール裏で上半身裸になってジャンプすること」が「一番熱意のあるサッカーの楽しみ方」なのか、ということについて改めて考えてもいいのかもしれない。

笹生 海外から見ると日本のサッカースタジアムの良さは「家族連れでも安心して観戦できる」というところにあるはずですが、Jリーグのサポーターの中にはいわゆる「ウルトラ」的なもの、それこそスタンドで発煙筒を炊いているのがかっこいい、というような価値観を潜在的にでも持っている人が一定数いそうですよね。そういう考え方も個人的にはわからなくもないですが、時流には合わなくなっている部分もあるのかなと。

レジー Jリーグとしても、「理想のお客さん像」を再定義したり、それを発信したりする必要があるのかもしれないですね。「サポーターの進化版」というか。どんなジャンルでも何かを突き詰めて好きな人は少数なわけで、その周りにいる人たち、超ディープではないけどその対象に対して確かな好意を持っている人だったり、よくわからないけど何となく楽しそうだなと思っている人だったり、そんな人たちを排除せずにちゃんと取り込めるか。この問題を解決できた娯楽が「定番レジャー」としての地位を確立していくのだと思います。

笹生 「濃いサポーター」と「無関心層」の間に、「ゆるいファン」というか、毎週スタジアムに来るわけではないけどJリーグに対して好意を持っている層がいるわけですよね。その層が確実に育っていけば、「無関心層」にとっては「濃いサポーター」よりもJリーグのことを自分ごと化しやすくなるのかもしれないですね。

レジー その層を獲得・育成するにあたってはサッカー以外の領域にいろいろなヒントがあると思います。

僕は『夏フェス革命』の中で、「ディープに音楽が好きではない層」をフェスが取り込めた理由として、食事やトイレといった会場インフラの整備や、インスタスポットに代表されるSNSとの親和性の強化を挙げています。また、笹生さんの著書『ボウリングの社会学』には、ラウンドワンにおけるボウリング以外の設備の強化や、ボウリングブーム時代において重要な要素だった「見せびらかし」の性格など、レジャーとしてボウリングをたしなむ層を取り込むにあたって何が有効に機能したかがまとめられています。

「メインコンテンツ以外のプラスアルファ」「周囲から見られることの重要性」といったあたりはフェス、ボウリング双方の「レジャー化」に大きく寄与しているように思いますが、こういった部分はJリーグとしても参考にできるのではないでしょうか。

笹生 競技の周辺にどういう価値を付与するかは大事なポイントになりますよね。ひとつのチームを応援することには楽しさと同じくらい、もしかしたら楽しさ以上にしんどいことがついて回るわけじゃないですか。

レジー サッカー観戦というもの自体、「何を売っているのか?」といえば「苦痛を売っている」というような感じもしますよね。

笹生 (笑)。それに快感を覚えてくれる人はもちろん歓迎だとして、それ以外の楽しみ方の回路も用意しておく必要があるのかなと。

――今お話を聞きながら自分がツイッターでフォローしている各チームのサポーターのことを思い出していたんですが、確かにみんな「幸せ一色」ではないような気もします(笑)。「しんどい状況を楽しむこと」以外にもJリーグの楽しみ方があるべきでは?ということですよね。

笹生 そうですね。それこそユアテックスタジアムにいた年配の方々、特にサッカーに詳しいわけではなさそうだけど地元のチームだからという理由で足を運んでくれているような人たち、ああいう層がコアサポーターと共存しながらより楽しく過ごせる空間ができあがれば、Jリーグのスタジアムは様々な人たちにとっての貴重な居場所になりうるはずですよね。

レジー そんなゴールイメージをステークホルダー全体で共有するのが大事そうですね。濃いサポーターの方々のJリーグへのロイヤリティは本当に高いものがありますし、そういう人たちは最低限の節度を守ればどんな取り組みを行ったとしてもスタジアムに来てくれると信じて大丈夫だと思います。そういった方々への敬意と配慮は忘れないようにしつつ、「そこまで熱狂的ではないけど…」というくらいの人たちが足を運びたくなるような施策にも思い切って投資してほしいですね。

日本中の職場にプロ野球観戦を促す優秀な営業マンがいる

――Jリーグが「レジャー」として定着していくには、コアファンのみならず、「そこまで熱狂的ではないけど好意を持っている層」をいかに獲得していくかが重要なのではないかというお話がありました。そういった観点でJリーグの隣接分野を見たときに、何か注視すべき動きはありますか?
 
レジー プロ野球はそのあたりの循環が上手く作れているように思います。以前勤めていた会社では、神宮球場や東京ドームに連れ立って野球を見に行くことが仕事後のレクリエーションとして定着していました。都心の会社だとそういうところも多いのではないでしょうか。
 
それに参加する人たちの全員が熱狂的な野球好きというわけではもちろんないですし、「飲み会感覚で球場に足を運ぶ」というあの敷居の低さはJリーグにとっても参考になる部分があると思います。もちろんプロ野球とJリーグでは開催頻度や競技の特性、野球は多少ダラダラしていても観戦に支障をきたさないというようなところで大きな違いがあるので、一概に全部まねしようということにはならないと思いますが。
 
笹生 プロ野球とJリーグがそれぞれを仮想敵として見る時代はもう終わったような気もしているんですが、双方が刺激を受けあう形でいいところを取り入れていけばいいですよね。もしかしたら川崎フロンターレとかの取り組みがプロ野球の各チームに集客に対しての危機感を抱かせた、みたいな流れもあるのかなと思いますし、Jリーグもプロ野球側でやっていることに学んでいけばいい。あるいはBリーグなどにも学ぶべき点はたくさんあります。
 
今のレジーさんの話でいうと、日本中の職場にプロ野球観戦を促す優秀な営業マンがいるっていうことですよね。歴史が違うのでJリーグが一朝一夕にそういう状況を作るのは難しいかもしれませんが、ひとつの目指す姿にはなるのかなと思います。
 
レジー 金曜日開催を上手く使えばそういう流れができるかもしれないですね。
 
笹生 そうですね。金曜日開催には可能性を感じています。以前Fリーグの府中アスレチックFCが金曜日の夜に府中の体育館で試合をしていたんですが、そのときの雰囲気の良さがすごく印象に残っていて。選手がコーチとして教えている子供たちとか、あとはステテコ姿のおじさんとか(笑)、いろいろな層が混ざり合っていい空気を作っていたんですよね。狭い体育館なので、会場の臨場感による部分も大きいと思いますが、平日だからこそああいう生活と地続きの感じが出たのかなと。
 
――レジーさんから出た「飲み会感覚」というのは考え方としてわかりやすいですね。
 
レジー 自分がお酒を飲むからというのも大きいと思いますが、アルコールを要素のひとつとしてうまく組み込めるかというのは重要なポイントのような気もします。フェスに行く人たちがよく使う言葉として、「乾杯しよう」というのがあるんですよね。
 
「同じフェスに行くなら、会場のどこかでタイミングが合えば落ち合って一杯やりましょう」みたいな挨拶代わりの言葉で、フェスが音楽を楽しむこと以上に友人同士の親交を深める場として機能していることを示すわかりやすい例だと思います。この言葉は「フェスあるある」的に揶揄されたりすることもありますし(笑)、個人的には「音楽より乾杯の方が大事なの?」と思わなくもないんですが、少なくともそれによっていろいろな人が気軽にフェスに行きやすい構造ができているのはあるのかなと。
 
笹生 ボウリングでも最近は「お酒飲んじゃっていいですよ」とか「飲み会の帰りにどうぞ」みたいな風潮は強くなっている感じがしますね。そういう形で敷居を下げている。ちなみに沖縄のボウリング場では、アルコール販売をするのはもちろん、お客さんがアルコールやオードブルを外から持ち込んで、自分が投げているとき以外は他の人の投球を見ながらみんなで盛大に飲んでいます。沖縄のボウリングはレベルが高いので「素面の状態でパーフェクト(300点)を出しても二流」とさえ言われています(笑)。
 
レジー アルコール一辺倒の訴求をしても一部の人にしか響かないとは思いますが、プラスアルファの要素としては大きいですよね。
 
笹生 メジャーリーグのスタジアムでもみんなビールばかり飲んでいますしね。アメリカでは、州の法律で屋外での飲酒が禁止されているところも多いですし、だからこそ「スタジアムでビールを飲む」こと自体が娯楽としての価値を持つんだと思いますが。
 
レジー アルコールを介してそこにいる人たちの社交が生まれる、そういう場として浸透すると一気に間口が広がるんですよね。こういう考え方を導入しすぎると、もともとそのエンタメが好きな人たちが嫌な思いをすることにもつながるのでどのレベルまで進めるかは慎重になるべきだとは思いますが、Jリーグのスタジアムに社交の要素を入れ込むとすると何ができるか、というのは考える余地があるかもしれない。
 
笹生 そのうえで、それぞれの層がいかに共存できるかという観点での線引きも大事ですよね。ボウリングの事例を挙げると、大抵のボウリング場では普段から競技志向の層とレジャー層のレーンを分けていて、前者のレーンについてはメンテナンスの頻度を高くするといった配慮をしています。
 
また、ラウンドワンでは「ムーンライトストライク」といってレーン全体を暗くして、ブラックライトをつけてボールを投げるアトラクションがあるんですが、このときには当然、競技志向層のレーンの明かりも消す必要がある。そういうレジャー色の強い施策をやるにあたって、競技志向のボウラーには他の形で様々なサービスを提供することで妥協をお願いしているようです。コアに好きでいてくれる人たちと気軽に楽しみに来てくれる人たち、どちらも大事であることに変わりはないので、それぞれにとってのケアが必要になるのかなと。
 
レジー こういう話をすると冒頭の「人が足りない」という問題提起に戻ってしまうかもしれませんね。もちろん何でもかんでもやるのは無理だと思うんですが、「もしかしたら好きになってくれるかもしれない層に対して、サッカー以外のコンテンツも絡めた施策でアプローチする」ということはJリーグにせよ各クラブにせよ現状のリソースをやりくりして取り組んだほうがいいんじゃないかなと感じます。中の事情は詳しくわかりませんが、「人がいない、だから新しいことをしなくても良い」という言い訳的な構造があるのだとするとあまりよろしくないなとは思います。

熱狂的なゴール裏のサポーターを目指す必要はない

笹生 『夏フェス革命』を読んで興味深かったのが、フェスを主催している人たちの柔軟性ですね。本来なら「音楽とはこういうものだ!」という想いがあると思うのですが、フェスに来ている人たちが勝手に酔っぱらったりSNS映えを気にするようになったりするのを見て、それを受け入れている。「参加者ファースト」ではないですが、音楽とは関係のない要素を上手く取り込みながらイベントを大きくして、「音楽ファンではなくても来れば楽しい空間」というのを作り上げたというのは、あらゆる産業が羨ましがるような現象だと思います。

レジー 主催者の柔軟性やビジネスセンスももちろん大きいとは思うんですけど、もしかしたら音楽というものの特性がそうさせている部分もあるのかもしれないです。音楽はBGMという形でどんな空間にも入り込めるから、「音楽が主役ではない」という状況を誰もが自然と受け入れられるのかな、とか。そこに「主役は参加者です」というテーゼだったり、SNSの浸透だったりが組み合わさって、一気にフェスというものの形が変わっていったということなのかなと。

笹生 音楽特有の事情は差し引いて考えるべきなのかもしれないですが、じゃあスポーツで同じことができるのかと言われると、なかなか難しいと思うんですよね。「スポーツ振興イデオロギー」とでも言えると思うんですけど、「スポーツとはこういうものだ、スポーツたるものこうしなければならない」みたいな空気がいたるところでものすごく強いんですよね。もともとはストリート発祥の文化だったフットサルですら、いざちゃんと試合をやろうとなると、やれユニフォームの色が何だ、ビブスの色が何だと制約がものすごく多い。裾野を広げることよりも「このスポーツとはこういうものであるべき」というものすごく狭い価値観を守ることにばかり意識がいってしまう。

レジー なるほど。まあ音楽の世界にもそういう風潮は強く存在しているような気もしますが…そういうものから自由になったからこそ一部のフェスはここまで大きくなった、ということなのかもしれないですね。フェスの柔軟性とは少し違うかもしれないですが、『ボウリングの社会学』には沖縄のボウリング上で模合(もあい)と呼ばれる仲間内でのお金の貸し借りが行われているという話が出てきますよね。あれはとても衝撃でした。もはや社交とかそういうレベルじゃない(笑)。

笹生 先ほどアルコールの話でも触れましたが、沖縄のボウリング場はちょっと異質なんですよね(笑)。ただ、それだけボウリング場は生活に根付いている、コミュニティ作りにとっての大事な場所になっている、ということだと思います。

レジー フェスにせよボウリングにせよ、メインのコンテンツについて「極める」「通になる」というような楽しみ方をしていなくても、その場にいることを肯定してくれるエンタメに今はなっているんですよね。Jリーグも、別にスタジアムでお金の貸し借りを推奨する必要はないと思いますけど(笑)、「サッカーを見に来る」以上の価値をどれだけ提供できるか、ということについてはしっかり考えるタイミングに来ているのかなと。

笹生 ちょうどDAZNがスマホでいつでもどこでも試合が見られる、しかも価格もそこまで高くない、という形でハードルを下げてくれているわけですよね。今の時期に長年のコアファン以外の層を獲得できるかというのはとても重要ですね。

レジー そうやって入ってきてくれた人は、必ずしも熱狂的なゴール裏のサポーターを目指す必要はないんですよね。何となく友達と会ってお酒を飲むためにスタジアムに来てもいいし、家族でのんびりしてもいいし、そうやっていろいろな楽しみ方をしている中で、一部の人がそこからサッカーにはまって毎年残留争いのストレスに苦しみながらもスタジアムに通うようになるかもしれない。そのくらいの構えで、新たにJリーグに興味を持った人たちを迎え入れるべきなんじゃないのかなと。もちろん個別にはそういった施策も行われていると思いますが、その努力がディープなJリーグ好きの外までにはまだ波及していっていないように感じます。いきなりサポーターへの道を見せてそれに馴染めない人はもう足を運ばなくなるということではなくて、様々なタイプの人たちの思い思いの楽しみ方がちゃんと尊重されている。各地にあるJリーグのスタジアムがそういう場所になるといいなと思います。

<了>

■レジー
1981年生まれ。大学卒業後から現在に至るまで、メーカーのマーケティング部門およびコンサルティングファームにて事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業開発、新商品開発などに従事。会社勤務と並行して、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が話題となり、2013年春頃から外部媒体への寄稿を開始。主な寄稿媒体は「Real Sound」「MUSICA」「M-ON! MUSIC」など。著書に『夏フェス革命 -音楽が変わる、社会が変わる-』(blueprint)がある。

■笹生心太
1981年埼玉県入間市生まれ。日本におけるボウリング産業の展開を主な研究テーマとし、一橋大学大学院にて博士(社会学)を取得。仙台大学講師を経て、現在、東京女子体育大学講師。研究活動を行う傍ら、競技志向でフットサルに取り組み、宮城県選抜の一員として全国選抜フットサル大会東北大会に3度優勝経験あり。著書に『ボウリングの社会学ー<スポーツ>と<レジャー>の狭間でー』(青弓社)がある。

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