ハリルホジッチ監督時代に招集される可能性が低かった選手が、サプライズで選ばれるという可能性もあるでしょう。今回は、テレビ朝日「激レアさんを連れてきた。」で大きな話題をさらった丸山龍也さんに、プレーヤー目線からみてサプライズ招集を期待する3選手をチョイスいただきました。

何かポジティブな要素を探していくしかない

まさに青天の霹靂、ハリルホジッチ監督が4月9日に解任された。解任となった以上、既に肩書は元監督。今後はハリルホジッチ氏やハリルさんと呼ぶことになるだろう。 自分自身、本大会での躍進を期待していただけに非常に残念だが、これはこれで切り替えて、何かポジティブな要素を探していくしかない。

ひとつ言えるのは、ハリルホジッチ監督では全くお眼鏡にかなわなかったが、西野朗新監督になることで、新たにメンバー入りの可能性が出てくる選手もいるのではないか? ということ。例えばG大阪・遠藤保仁選手は西野監督と共にリーグ優勝の経験もあり、招集が期待される。加えて、新監督が“縦に速いサッカー"や“デュエル"と言ったテーマを引き継がないのではあれば、キャップ数歴代最多のベテランを切り札として起用することは十分に考えられる。

一方で、全くの新戦力にも門戸は広がった。技術委員長を務めていた西野新監督は、当然Jリーグもチェックしているはず。もともとJリーグのレベルを十分に理解している監督だけに、要素によっては前任者以上に国内組を評価することもあるだろう。 今回は、そんな「サプライズ招集」を期待したい3選手を挙げたい。

©Masashi Hara/GettyImages

山中亮輔(横浜Fマリノス)

従来左サイドが主戦場の宇賀神友弥(浦和)を右サイドでテストするなど、サイドバックのバックアップに不安があったハリルジャパン。監督が変わってもその課題は大きく変わらないはずで、西野新監督も少なからず物足りなさを感じているだろう。

車屋紳太郎(川崎)、室屋成(FC東京)といった若手選手以外にも、内田篤人(鹿島)らビッグネームも選出レースに加わってくるが、ここで推したいのが山中亮輔(横浜FM)。今Jリーグで輝きを増している選手の1人だ。

マリノスの今季初得点となった開幕ゴールを皮切りに、アシストも量産中。ポステコグルー監督が落とし込む新戦術では、中央に絞ってボランチのようにビルドアップに参加し、戦術的キーマンでありながらも、従来持っている自分自身のパフォーマンスもきっちり発揮。

外を走らせても良し、中に切り込ませても良しで、長友佑都(ガラタサライ)とは全く違うスタイルの選手で、代表に新しいアクセントを加えられることは間違いなく、チームの主戦術にしろオプションにしろ、ボールをポゼッションすることが必要となれば活躍は大いに期待できる。

加えて1列前でも起用できるポリバレント性も短期決戦では重要で、まだ代表デビューを果たしていなければ世界大会の経験もないことは、逆に対戦相手からすれば不気味。西野ジャパンの秘密兵器的存在にもなり得るだろう。

リオデジャネイロ五輪では、レギュラーとして予選を戦うチームを支えながらも、直前の怪我で惜しくも本戦を逃した。故に、世界大会への懸ける想いは並々ならぬものがあるはずで、Jリーグの舞台では継続して成長を重ね、ここにきて脂が乗ってきた。
 
とはいえハイパフォーマンスを続けてはいるが、恐らくこのままでは厳しいのも事実。メンバー決定までのリーグ戦数試合でわかりやすい結果を残し続けて欲しい。

©Etsuo Hara/GettyImages

鈴木大輔(ヒムナスティック・タラゴナ/スペイン)

先の欧州遠征でテストしてほしかった選手のひとりが鈴木大輔(ヒムナスティック)。2部リーグながらスペインの地で活躍を続け、インテンシティの高いゲームを続けている。

ヨーロッパとJリーグではゴール前の迫力に大きな差があり、それは全ての関係者が理解している共通の課題。プレミアリーグで世界のトップスコアラーと凌ぎを削っている吉田麻也(サウサンプトン)はレギュラー当確として、吉田の参謀に誰が相応しいかはハッキリしていないのが現状だ。

恐らく23人中、センターバックは4枚。ギリギリの戦いの中、相手がパワープレイに出てくることも想定内で、ディフェンスの枚数を増やして対応せざるを得ない時間帯もあるだろう。本大会は何が起こるかわからないし、グループを勝ち抜けば4試合、5試合とゲームは続いていくわけで、そういったケースに備えることも必要なマネジメントだ。

鈴木の代表キャップ数は僅かに2試合、しかも若手主体で臨んだ実質Bチームでの東アジア選手権の出場のみで、フル代表での経験が足りないことは明白だ。

とはいえ、スペインで大きく成長したヨーロッパ仕様のパフォーマンスに疑う余地はなく、忘れてほしくないのはロンドン五輪でチームをベスト4に導いたのは吉田麻也&鈴木大輔のコンビだということ。もし代表に選ばれたとして、吉田との連携を取り戻すのに多くの時間はかからないだろう。

2010年の南アフリカW杯では、同じくキャップ数2試合の岩政大樹(当時鹿島)が代表メンバーに滑り込んだ。岩政は直前の強化試合では招集すらされていなかったが、本大会での様々なシミュレーションを行った結果、当時の岡田監督がメンバー入りを決定。結局出番はなかったが、例えばあのパラグアイとの延長戦に日本がリードを奪い、相手がパワープレイを仕掛けてきたら…3枚目の交替枠で起用されていたかもしれないし、パワープレイ対策が準備できているとパラグアイが分析すれば、その選択自体を行なってこないかもしれない。

南アの例はたらればになってしまうかもしれないが、同じことがロシアで展開される可能性は十分にあり、そうなれば控えとしても鈴木の存在は貴重。最終テストとなるガーナ戦での招集を期待したい。

©Masashi Hara/GettyImages

久保建英 (FC東京)

小野伸二がフランスワールドカップのメンバー入りを果たしたのは、弱冠18歳でのこと。その後10年近く代表を牽引し、今もなおJリーグ屈指のテクニシャンとして活躍し続けていることを考えると、「若い才能をワールドカップに連れて行くこと」は非常にリターンの大きな投資だといえる。
今後の日本サッカーの未来を考え、成熟しきっていない若いタレントに1枠使うことは悪いことではなく、大会直前で監督が変わり、一切の積み重ねがないままロシアを終えることも否定できなくなった現段階においては、投資どころか“保険"にもなりえる選択かもしれない。

過度な期待は禁物・・・メディアが騒ぎ立てるのを横目に、そう心配する関係者は少なくないが、期待をフルでかけても良いだけのポテンシャルを、既にピッチの上で示している。それが久保建英だ。

正直、総合力では代表レベルと言えないだろう。ようやくJ1の舞台でフル出場がチラホラ、というタイミングで、ワールドカップの舞台に彼を連れて行くのは時期尚早といえるかもしれない。

ただ、今後10年、下手すれば20年もの間、青いユニフォームを着続けて日の丸を引っ張っていくであろう彼に、世界最高峰の空気感や国を背負う緊張感を感じさせ、これで最後になるであろうベテラン選手の背中を見てもらうことは、長い目で見たらメリットしかない。

しかも、短い時間であれば、フル代表選手に見劣りしないパフォーマンスは出せる。第1戦、第2戦で攻撃がうまく機能せず、ちぐはぐなままグループ最終戦を迎えるような展開になれば、久保が雰囲気をガラリと変えてくれないかと誰もが自ずと期待するだろう。それだけのサッカー観と技術は既に備わっているし、狭いエリアでボールを受け、ハイレベルにゴールへ直結させるプレーは何度も披露してきた。次にそれを見るのがロシアのピッチで、何が悪い。ワンダーボーイに期待大、だ。


ワールドカップのメンバー選考は、常に世間を騒がせてきた。それは日本だけでなく、いつだって世界の各地で大論争が巻き起こってきたが、ほとんど全てがビッグネームの落選によるものだろう。しかし、大御所が落選したその裏腹に、多くの無名選手が滑り込みを果たし、本大会でチームを支え名を挙げていったわけで、閉塞感のある日本代表にそういった選手は必ず必要になる。

「もう冷めた」「負けたほうが良い」ハリルホジッチ解任の一報と同時に、悲観的な言葉が日本サッカー全体を包んでいくが、そんなムードを吹き払う刺激的なメンバー選考を楽しみにしたい。
諦めるのは、とりあえずメンバーを見てからでいいのではないだろうか。

<了>

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VictorySportsNews編集部