ロシアW杯、一番まずいグループに入った

――ロシアワールドカップメンバー発表まで、親善試合あと2試合を残すのみという段階になりました。お二人の2017年におけるハリルホジッチの評価について、改めて教えてください。
 
五百蔵 E-1の韓国戦でミソをつけてしまいましたが、僕は本番(W杯最終予選)のオーストラリア戦であれだけのものを見せてくれたので、本番も少なくともあのレベルまでは持っていくだろうと思ってます。ただ、組合せが一番まずいやつになったと……。
 
――コロンビア、セネガル、ポーランド。具体的にどの辺りですか。
 
五百蔵 基本的に、相手が日本と同じようなサッカーをやるだろうと。それぞれの国の立ち位置的に、格上に対してどのように守り、自分たちの強みで相手の弱い部分をどう叩くか、そういうサッカーをやらざるを得ない国ですから。
 
少なくともコロンビアとポーランドは、戦略的にハリルホジッチが困る手段をとることができるチーム。切り返しで日本の弱いところを刺せる駒を持っている。それは3チーム全部そう。「一番まずいグループに入ったな」っていう認識です。ドイツとかそういう強国が入ってればハリルホジッチの土俵に引きずり込んでやれると思うんだけど、駆け引きがすごく難しくなると思うんですよね。
 
――結城さんはいかがですか。
 
結城 私も、2017年9月のオーストラリア戦でのパフォーマンスというのは、今までの日本が苦手としていた可変式の守備、敵が狙っているところをふさいで、かつ試合の中でフェイズに分けて守備形態を変えることで相手の混乱を誘う、ということができた試合だったと思います。
 
当時は現在横浜・F・マリノスを指揮しているアンジェ・ポステコグルーとの駆け引きでしたが、3バックでのボール保持に舵を切ったオーストラリアの攻撃戦術を完璧に分析した結果でしたね。
 
これまでは「ポゼッション」であっても「守備」であっても、特定の戦略を徹底的に取り続けていた日本が、ああいった柔軟に守備を使い分けながら罠に追い込むようなゲーム運びが出来るようになったというのは、やはりハリルホジッチのウデを信頼してもいいんだろうなと。
 
先ほど五百蔵さんがおっしゃったように、相手側も格上との対戦に慣れていて、相手の弱みを徹底的に分析してくるようなチームが多いので、日本の親善試合も当然のように分析してくるだろうと。そういった相手に当たってしまったというところで、パフォーマンスが出せない危険性がより増えたかなと。そこが一番かなと思いますね。
 
五百蔵 それこそ相手がドイツやフランスならこちらが分析する側に立てるので、条件は別だったと思います。今は向こうが警戒している。その中でどう準備するかは難しいですね。
 
――ロジックで考えたらそういう結論になると思うんですよね。残念ながら、日本の報道はどういう理由か、必ずしもそうなっていないですが。
 
五百蔵 ワールドカップは自国開催のほか一回だけベスト16に行っただけの国が、なぜこんなにも強国幻想にあるのかということですね。
 
結城 良くも悪くも、盛り上げ過ぎてしまった感はありますよね。
 
――想像ですが、日本はいろいろなスポーツで金メダルを取っていますよね? かつ、サッカー日本代表は露出が大きい。「きっと(他のスポーツのように)強いだろう」「W杯も勝つだろう」という思い込みもあるのかも。
 
五百蔵 確かに国内のプレゼンスでいえば、金メダルを取れるほかのスポーツと並ぶかそれ以上のプレゼンスがあります。「こんなものじゃないはず」という感想が、一般的にあるのかもしれないですね。

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ハリルホジッチへの理解は一歩も進んでいない

結城 あとは「相手側の目線に立つ」という文化があまりないのかな、と。セネガル、ポーランド、コロンビアと見た時に「コロンビアとセネガルとポーランド相手だから、親善試合であまり手の内を明かすことはできないな」という見方がない。
 
――ほとんどないですね。
 
結城 結局は「日本がどういうパフォーマンスをするか」っていう、自分たち目線の話だけになってしまっている。サッカーというスポーツは相手ありきで成り立つ、という原則からズレてしまっている気がします。これは一部、バルセロナなどの影響もあるのかもしれませんが。
 
――バルセロナの場合ボールを失った瞬間のプログラミングをとても精密に設計されているチームでしたが、そこは見てないんですよね。
 
五百蔵 グアルディオラのバルセロナは、ボールを失ったあとのトランジション構造が最初からできていて。自分たちがボールを確実に回収し、延々と自分たちが持ち続けるというサイクルが出来上がっている。相手への対策も超一級品でしたし、衝撃でした。
 
ただ、最初の何年かは「美しいサッカー」ということだけが持ち上げられて。だんだん守備面のすごさも議論の表側に出てくるようになってはきたけど、具体的にどうすごいかはあまり論じられてこなかった。その間、ヨーロッパの人たちはガンガン分解して、イタリアのナポリのような完成度の高いチームができちゃうくらいにノウハウが分解、共有されてしまっているという……。
 
結城 同様にハリルホジッチについても、やはり表層的な理解に留まっているのが一番の問題ですね。攻撃的・守備的・魅力的・つまらない……サッカーというスポーツの歴史が浅いことはあるとは思うのですが、表層的で曖昧な表現に終止してしまう。それが問題の源泉かなと。結局は、文化として根付いていないということなのかもしれませんが。野球では小技を絡める緻密な野球が評価される土壌があっても、サッカーでは緻密な戦術は評価されにくい。
 
五百蔵 格上のチームや、対応の難しいチームとやることを念頭において、相手がこうだからこうすべき、いやああすべき、ああでもないこうでもないと議論するならわかる。ですが、日本において代表をめぐる議論は一貫して「面白い、つまらない」「アジア相手にこの体たらく」「世界では大丈夫か」ということを繰り返していて。
 
ハリルホジッチは、いろんなことを事前にわかっているんですね。例えば、日本人選手が緻密なゾーンディフェンスができないだろうことも最初から知っている。この国のサッカー批評の文化だと「自分のサッカーは、守備的だと指弾されるであろう」ということも恐らくわかっていて。
 
最初の会見の時から「自分は攻撃が大好きで、攻撃のためにサッカーをやっていて、ゴールを決めるのが大好きだ」ということを言ってるんです。多分そこの時点から、ハリルホジッチへの理解はこの2,3年間一歩も進んでないなと思います。
 
そういうところを拾っておけば、記者会見でハリルホジッチとやりあわなくても、メディアが発表する批評や報道でハリルホジッチとコミュニケーションをとることはできるはずなんです。最初守備的に見えたけど、彼の言ってる攻撃的というのは、僕たちが思っている「本田や香川がボールを持って躍動する」というイメージとは違うということがわかってくるはず。
 
ハリルホジッチのほうは会見を通じて結構発信してるんだけど、僕らの側が最初の印象のままずっと来ていると思います。で、E-1の韓国戦ではそれが爆発したんだろうなと。オーストラリア戦くらいの成果があっても、それが払拭できないんです。ハリルホジッチが言ってる攻撃的というのは、僕たちが思ってるそれとは違う意味で言ってるらしいぞ、というラインがないから、オーストラリア戦を見ても「これが彼の言ってる<攻撃的>ってことなんだ」っていうことが理解できなくて、そういう成果の上での議論が主流にはならない。
 
多分、簡単な解決方法はあると思うんです。韓国戦の後か前かな、Twitterでレスをいただいた中で面白い提案があって。僕らの社会はすでに解決法を持っていると。企業の炎上対策を代表監督を最初から課せばいいと。韓国に負けたら試合後会見で皆で立って、韓国に負けて申し訳ございませんでした! って言って、みんなで90度で頭下げて、リスクマネージメントするという。そういう形で織り込めばいいんですよ、と。なるほどなと思いました(笑)。
 
――タイトルは「ハリルホジッチよ、炎上対策せよ」にしましょうか(笑)。

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逆に、誰だったら信頼できるんですか?

結城 難しいのは言語ですよね。ハリルホジッチの話す言葉は翻訳を通って、かつメディアに切り取られて、その状態で出てくるものに対する反応でしかないっていう。本人がどういう意図で話しているかは伝わりづらく、当然のことですが翻訳によって意味が変わっちゃうことってあると思います。そこで熱くなってしまうというのはどうしても難しいのかなという気はしますね。原文を読めば批判的ではないコメントが、メディアを通すと批判的な意味合いに受け取られていたり。メディア側での誤訳もありました。
 
ただのイメージで、アルジェリア代表は「アフリカ系のチームだから個人能力が高い選手が多く、日本代表とは異なっている」というような論調もありますが、試合を見るとそんなことはない。前線のスリマニなんかは、ハードワークで中盤まで戻って守備組織を支えました。ハリルホジッチは、トップレベルで競り合った時に1人でドリブルしてがつがつ点を取れるという選手がアルジェリアには足りていない状況で、ドイツを組織的に追い詰めることを可能にするチームを作っています。本当に彼が日本代表の問題に気付かずに放置して、今後ワールドカップに期待するべきではないのか。過去の試合をどれだけ深くまで、遠くまで見るか、というのが監督の力量を計る為に最も重要だと思っているので、日本代表の数試合だけを見て「日本に合わないよ」っていう結論を出すのは早計というか、判断が早いなと思います。
 
五百蔵 アルジェリア代表の試合をきちんと分析をして発信している方はいるんですが、そういうちゃんと見てる人達が、議論を広げて説明できる状況に持って行けてないというのもあるかなと思うんですよ。ハリルホジッチの試合はかなり分析的なゲームなので、それをちゃんとブレークダウンして、一般の人たちに興味を持てるようにするにはどうすればいいか、そういう方向で議論できたらなって。
 
ハリルホジッチが、けして戦力的に恵まれてはいなかったアルジェリア代表を率いて、いかにベルギーを追いつめ、ドイツを追いつめたかっていうこと。日本でも、最終予選に入る前に着任してから、格下のチーム相手すらも基本的には同じことをやってきた。選手たちもいろいろ文句を言っていたけど、基本的には彼らも「監督が言ったのと同じことがずっとピッチで起きてきた」と思ってると思うんですよ。
 
だから、オーストラリア戦ではあれほど機能するチームになれたのかなと。あの試合も、すべてが監督の言った通りになった試合だと選手達は思ってるんじゃないかなあ。ブラジルW杯でアルジェリアがベルギーとやった時も、見事でした。ヴィルモッツのベルギー代表は多くのタレントを揃えつつその実、コンパニで跳ね返してカウンターするチームだったんですけど、彼らが一番頼りにしているコンパニが実は弱点だと。コンパニを横に引き出したらもう守るやつがいなくなる、という構造上の穴があると。そこを徹底的に叩いて、縦に引き出し横に引き出し、自分たちはずっとサイドから攻めてひたすら殴り続けた。
 
それ以降ずっと同じような「このチームはここが甘い、自分たちの強みを使ってここを叩けば勝てる」ということをずっとやってて。戦いの原則に極めて忠実な監督ですよね。僕とか結城さんとかもそうですが、そういうところを見ている人はいると思う。以前の監督の時にはできないことをこの監督はずっとやってくれていると。だから本戦でもやってくれるんじゃないかと思ってるんですけど……。
 
結城 アルジェリアにしてみたら、アジアの韓国なんてそれこそ日本と変わらない小国で、「ある程度普通にやれば勝てる」というところもあったと思うんです。けど、そこでも全く分析を怠らず、違ったスタイルをチームに植え付けて遂行させる。これをできる監督が、ワールドカップを見回したらどれだけいたか。こういったことができる監督を信頼できないなら、「逆に誰だったら信頼できるんですか」っていう話になると思うんですね。
 
――そのへんも含めて、出されたものに文句言ってるだけっていうのはいろんなところに共通しますね。
 
五百蔵 ハリルホジッチがどういう監督なのかというところを、一般的にもちゃんと噛み砕いて伝えたら面白いと思うんですよ。むしろ日本人が好きなところもあると。相手のここが弱いからここを集中して攻撃するというのはみんな好きだと思うんですよ。
 
――実際、五百蔵さんの記事が爆発的に読まれましたけど、あれってまさにそういう話ですよね。いいタイミングですぱっとはまったところはありますね。
 
五百蔵 これが彼の基本的な状態で、常にどういう条件下でもこれはできるということを伝えられてないということがかなり大きいと思います。

ハリルの残したものを、繋げていけるのか?

結城 僕はすごい寓話的だなって思ってる話がちょっとあって。ヒディンクが韓国代表に就任したとき、彼は「個人の力が足りない、もっとがつがつ筋トレやるべきだ」っていうことを言ったんですよね。そうしたら韓国のメディアは、「いやいや、それは俊敏な韓国人の良さを消すよ。筋トレなんてやってる場合じゃないだろ」って猛反発。
 
ただ、結果的にヒディンクが率いた韓国代表は歴史に残る結果を残した。そういう、過去に同じようなことがアジアの国で起きている。同様の事例から学ばないといけないんじゃないかと思います。でも、日本でも全く同じように「デュエルなんて、日本人の良さを消すよ」という方向で批判されている。
 
――ラグビーのエディーさんもまさにそうでしたね。足りていないのはスピードだと。
 
五百蔵 ラグビーって、サッカーと違って重要な試合がたくさんあるんです。ワールドカップだけが本番じゃない。エディ・ジョーンズは今イングランド代表を率いていますが、そういう試合もことごとく負けてない。彼が日本代表を率いた時に、「君たちはテクニックとか敏捷性だとか言うけど、現実を見なさい。フィジカルで負けちゃったらテクニックも敏捷性も発揮する前につぶされるんだ」と。
 
彼が特別なのは、それでずっと結果を出してるんですね。内容もよくて、着実にこのままいけば絶対に本番で何らかの結果を残せるだろうというところまで。誰も文句を言えないレベルで。ハリルホジッチとエディは似ているところがかなりあると思いますが、ハリルホジッチはエディーのような周りを黙らせる、ぐうの音も出させない内容と結果を出し続けることをプランニングしていない。基本的にW杯本戦と、そこにつながる決定的な試合に向けてプランニングをしている。だからいろいろ言われるんだと思います。
 
結城 あとは、日本サッカー界はちょっと外から指摘されることに耐性がない気はしますね。日本全体の文化的なところもあるのかもしれませんが。グローバル化の中で、どうしても外からの指摘や競争からは逃れられなくなっていくのですが。
 
――聞くのは、批判記事を書いた書き手に対して「同じサッカーファミリーなのになんだ」的な反応があったり。
 
五百蔵 ハリルホジッチも言われてるほど、悪いことは言ってないですよね。日本のサッカーに対して。会見とか全部総ざらいしてみると、おだててくれるようなことは言わないけど……。

結城 各選手に対する事実は言いますし、ここが伸びる、ここを伸ばさないといけないとハッキリ言いますよね。いろんな選手を招集して、日本サッカーが強くなるために必死になっている。そういう監督に対して、今の日本がとっている態度は微妙な感じがしますけど。Jリーグも、しっかりと視察していますしね。選ばなかった選手にも、真摯に理由を説明している。
 
五百蔵 内部ではもっともっと厳しいらしいですが、メディアに向けた発言としては貶めるような言葉とかは全然なくて、韓国戦なんかでも「謝らない」なんて批判がありましたが、実は謝ってるんですよね。こういうパフォーマンスで大変申し訳なく思っていると言ってる。けど、全体的な印象がどこから生じているのかわかりませんけど、「日本を下に見ている」という風に言われてますね。褒めてくれないから下に見られている、と感じているのかな。

――ハリルホジッチは結局外国人で、W杯終わったら帰っちゃうので批判されても別にどうとはない部分もあると思うんです。でも、日本サッカーは彼が去った後も残り続けるわけで。発展の機会を、自ら潰しても意味がないなと思います。
 
結城 大きなチャンスだと思うんですけど、そういう風に見られていないっていうのはもったいない。次の監督が来たら今までの課題はすべて忘れて、リセットしてしまう流れになっていることを感じます。継続的な強化から離れてしまってることが大きな問題だなと。本当はハリルホジッチが結果を出す出さないにかかわらず、彼が残したものをベースに次の四年間につなげていくべき。けど、なかなかそういう風になっていかないのが難しいと思いますね。

本当にフラットに評価できているのか?

――文化がないというのは、言葉がないと結構イコールだと思っていて、テキストにして残さないと後世の人たちが参照にできないので、じゃあ言葉を残すのはだれかといったらメディアですよね。継続性が乏しい責任は、一つはメディアにもあると思っています。

五百蔵 ある意味、トルシエのときより状況はひどいと思います。当時の既存のメディアは、トルシエのやってるサッカーがわかっていなかったけれど、これまでの加茂さんとかとは違うことをやってるぞっていう人たちが逃げ込んで知見を積み重ねる場所があった。それが『ルモンド・トルシエ』とか『バラエティ・フットボール』だったんです。そこで日々議論を、まあ間違ってる部分もあったでしょうけど積み上げていって、イタリアサッカー、欧州サッカーの戦術的な流れを参照しながら、「トルシエがやってることは大体こういうことだ」と解説されていた。
 
でも今は、ハリルホジッチが何をやってるかということを継続的に読んでいけるものがない。かなり後退した状態だと思います。たぶん一般的にはそう捉えられてないと思うんですが、ちょうどここ5、6年間くらい、奇跡的に日本代表の強化方針は、戦略レベルでは世界のサッカーとちゃんと方向性を一致させられているんですよ。結構奇跡的な瞬間なんです。これから勝っていくために何が必要かっていうのが実は合ってるんですよ。
 
ザッケローニもポゼッションサッカーをしていたわけではなくて、ラインを高くして相手陣内に早く攻め入るっていうサッカーで、それをやり切るには戦術的にも個としても強度が求められるという方向性。ハリルホジッチもミドルゾーンで勝負するサッカーを継承しつつ、ザック期の反省を活かしそれだけではなくあらゆるゾーンで戦えるようにする、ということで招聘されていて、そういうサッカーをやっている。さらに、現代サッカーでは戦術の外側で勝負を決めなきゃいけないという局面が逆説的に起きるので、そこで勝負を決めたり決められなかったりっていうデュエルの力が必要だ、と、ハリルホジッチは言い、実践しようとしている。これらは世界のサッカーの趨勢に合致しています。
 
そういう戦略的に一貫性をもって監督を選んできたけれども、ザッケローニの失敗によって「一つのことしかできないというチームじゃ困る」ということが分かった。その戦略は維持しつつ、いろんな事をやれる監督を連れてこないとダメだ。ってことになってハリルホジッチという流れになった。僕はこれ、すごいことだと思ってます。トップレベルのサッカーを相手に、基盤となる方向性は共有して同じ土俵で戦いつつ、相手をちゃんと丸裸にして様々な手段を持っていて、弱点を叩けるというようなことを普通にできないとやっていけない。ハリルホジッチはまさにそういう監督だと思います。
 
そこをちゃんと評価できないと、「あんなつまんないことばっかりやってる監督はダメだ」「ほら見ろ失敗したじゃないか」みたいなことになっちゃったら、この流れが途切れてしまいます。また巻き戻っちゃうんですよね。一貫性の無い、よくわからないあの時代に。
 
結城 バルセロナの表層をすくった時代に戻っていくと。似非ポゼッションサッカーでは、残念ながら何も得られない。
  
五百蔵 ヤバいんですよ本当に。まずハリルホジッチが何をやっているのか、戦略レベルではきちんとセッティングできてるよってことと、だからちゃんと勝ってもらうっていうように可視化してもらわないと。

結城 結果はどうであろうと、プロセスを分析していくという文化は日本サッカーの文化にはないんでしょうね。ハリルホジッチも結局、韓国戦ばかりを取り上げて叩かれていて。じゃあオーストラリア戦までどういうプロセスで、かつアギーレが途中でいなくなるっていう状況で、準備期間が足りない中でも、結果を出さなきゃならなかった。そこ含めて本当にフラットに評価できてるのか、って考えるとかなり危ういと思いますね。
 
<了>

ハリルホジッチの解任を叫ぶ前に、最低でも考えてほしい3つの事柄

難敵オーストラリアを抑え、アジア最終予選を1位で通過しロシアW杯への出場権を得たハリルホジッチ。にも関わらず、メディアには厳しい声があふれている。アルジェリア代表時代も厳しい批判に晒されながら、ブラジルW杯ではドイツを追い詰めた。そんな指揮官を解任したいなら、最低でも以下の事柄を踏まえてほしい。(文:結城康平)

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【全文】緊急会見のハリル監督が日本への愛情を語る「私から辞めることはない」

サッカー日本代表は31日に行われたワールドカップ・アジア最終予選のオーストラリア戦に2-0で勝利し、6大会連続のワールドカップ出場を決めた。その試合後の公式会見で、「プライベートで大きな問題があった」と明かしながらも、質疑応答を避けたヴァイド・ハリルホジッチ監督が、1日にあらためて会見を行った。そこで語られたこととは――。(文:VICTORY SPORTS編集部)

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10月10日のハイチ戦は、3-3と打ち合いの末引き分け。「相手がブラジルなら10失点している」と、ヴァイド・ハリルホジッチ監督も落胆を隠せない様子でした。試合内容を見ると、レギュラーの選手が出場しないと途端に約束事が見えづらくなり、適切なタイミングで適切なプレーができないシーンが散見されました。本対談で五百蔵容(いほろい・ただし)氏と結城康平氏が述べた「蓄積するヨーロッパと、そうでない日本」という趣旨の箇所は、はからずもハイチ戦で露呈してしまったようにも見えます。キーワードは「抽象化」です。(語り手:五百蔵容・結城康平 編集:澤山大輔[VICTORY編集部])

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豪を破壊した、ハリルの「開始30秒」。徹底分析・オーストラリア戦

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VictorySportsNews編集部