前回王者ドイツも着用するアディダス

FIFAワールドカップは“アディダスの大会”と言える。1970年メキシコ大会以降、アディダス社はW杯の公式スポンサーを務め続けている。大会の公式試合球をはじめ、レフェリーやボランティアスタッフのユニフォームなどにも同社製のものが使用され、大会MVPや得点王はそれぞれ「アディダス・ゴールデンボール」、「アディダス・ゴールデンブーツ」と称されている。FIFAとアディダス社との現行契約は2030年まで。サッカーグッズの分野ではナイキ社と激しいシェア争いを繰り広げているが、W杯がビッグイベントであり続ける限り、この契約は今後も更新し続けられるだろう。

そうは言っても、出場国のユニフォームまでアディダスで統一されるわけではない。各国のサッカー協会は、それぞれが各スポーツメーカーとサプライヤー契約を結んでいる。間もなく開幕するロシア大会に出場する32カ国のユニフォームサプライヤー事情はどうなっているのだろうか。

今大会でもアディダスとナイキが“2強”状態となっているが、この争いを制したのはアディダスだった。開催国ロシア、前回大会優勝国のドイツ、リオネル・メッシを擁するアルゼンチンなど、合計12カ国のサプライヤーを務めている。今大会は“復刻”を意識したデザインが多く、例えばドイツ代表は1990年イタリア大会で無敗優勝した西ドイツ代表のユニフォーム、スペインは1994年アメリカ大会のユニフォーム、ベルギーは1984年のユーロ84のユニフォームからインスパイアされたデザインを採用している。ロシアのユニフォームは旧ソ連時代のモデルに着想を得ているという。オールドファンにとってはどこか懐かしさを覚え、若いファンにとっては斬新で大胆に見えるデザインのものが多く、過去のユニフォームとの比較も楽しむことができるだろう。

我らが日本代表もアディダスのユニフォームを着用する。日本サッカー協会は1999年4月以降、アディダスと契約を更新し続けており、2015年4月に締結した現行契約のスポンサー料は8年総額250億円とも言われている。今回の日本代表のユニフォームは藍染をモチーフにした「勝色(かちいろ)」と呼ばれる濃いブルーに、刺し子柄をイメージした破線が目を引くデザインで、国内では「ジンベエザメみたい」、「キリトリセン」、「雑巾」などと揶揄する声も出ているが、イギリス『デイリー・ミラー』紙が実施したデザインランキングでは4位にランクインし、ファッション誌『GQ』イタリア版の「最も美しいユニフォームベスト5」でも紹介されるなど、海外では高い評価を得ている。

10チームのサプライヤーを務めるナイキ

ナイキは優勝候補のブラジルやユーロ2016王者ポルトガル、1998年フランス大会王者フランスなど、10チームのサプライヤーを務めている。こちらはブラジルやポルトガルのようにシンプルなデザインのものと、フランスやオーストラリア、ナイジェリアのように、従来よりも深い色を基調とし、肩から袖にかけて特徴的なグラフィックが施されたものもある。先の『デイリー・ミラー』のランキングではナイジェリアのユニフォームが1位になっているので、ぜひ本大会でご確認いただきたい。

アディダス、ナイキと“3強”状態だった時期もあったプーマは、ウルグアイ、スイス、セルビア、セネガルの4カ国のサプライヤーを務める。プーマとしては、現在の同ブランドの象徴的存在であるイタリアに加え、コートジボワールやガーナといったアフリカの強豪国が本大会出場を逃したのは痛手だった。2017年終了時点ではウルグアイ、スイスの2カ国だけという状況だったが、今年に入ってセルビア、セネガルとの契約締結に成功し、何とか“3番手”の地位を守る形となった。

2015年2月にサッカーに参入したニューバランスは、今大会で初めてW杯に参戦。コスタリカとパナマのサプライヤーを務める。この2国は、以前はイタリアのロット(Lotto)と契約しており、前回大会のコスタリカはロットのユニフォームだった。当時は胸のエンブレムを取り囲むように施された斜線のデザインが不評だったが、チームが勝ち進むにつれて人気が高まり、準々決勝でオランダと戦う頃には品薄で生産が追い付かない状況にまでなった。一方、今大会で着用するニューバランスのユニフォームも「デザインが簡素なくせに値段が高すぎる(国内価格101.64ドル=約1万1188円)」と、現時点では批判を集めている。確かにかなりシンプルなデザインで、ただのTシャツに見えなくもない。前回大会のようにチームが快進撃を見せれば人気も高まるだろうが、果たしてどうなるだろうか。

以上4つが複数のチームとサプライヤー契約を結ぶメーカーだ。そのほか、ドイツのウールシュポルト(Uhlsport)はチュニジア、イタリアのエレア(errea)はアイスランド、イギリスのアンブロはペルーのサプライヤーを務める。デンマークは母国のメーカーであるヒュンメルのユニフォームでW杯に臨む。この中にミズノやアシックスといった日本のメーカーが含まれていないのは、少し残念な気がしないでもない。

近年続いているジンクスは続くのか?

ところで、近年のW杯には「アディダスと契約するチームが有利で、ナイキと契約するチームは優勝できない」という、嘘か本当か分からない都市伝説のような噂が存在する。確かに過去の大会を振り返ると、ナイキ契約チームが最後に優勝したのは2002年日韓大会のブラジル(決勝の対戦相手はアディダスのドイツ)が最後。2006年ドイツ大会はプーマのイタリア(決勝の相手はアディダスのフランス)、2010年南アフリカ大会はアディダスのスペイン(決勝の相手はナイキのオランダ)が制し、2014年ブラジル大会に至ってはドイツとアルゼンチンの“アディダス対決”(優勝はドイツ)で、ブラジルがドイツに1-7の惨敗を喫した“ミネイロンの惨劇”は、ナイキにとっては屈辱以外の何物でもないだろう。

両メーカーの熾烈なシェア争いから派生した根拠のない噂話であり、過去3大会連続でナイキ契約チームが優勝できていないのも単なる偶然だと考えられるのだが、万が一ロシア大会でブラジルやポルトガルが惨敗を喫したり、決勝で“アディダス対決”が実現したりすれば、この話題が再び世間を騒がせることになるだろう。ロシア大会は、果たしてどのような結末を迎えるのだろうか。

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池田敏明

著者プロフィール 池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。