鎖骨スポンサーの広告効果は胸スポンサー以上?

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いよいよ2018シーズンのJリーグが開幕を迎える。昨シーズンはイギリスの国際スポーツメディア企業『パフォーム・グループ』との10年総額2100億円の放映権契約が大きな話題を呼んだ。今シーズンも、Jリーグは新たな試みに乗り出した。ユニフォームの鎖骨部分への企業広告掲載を解禁したのだ。

従来、ユニフォームの正面側は中央にスポンサーロゴが入り、胸の部分にクラブのエンブレムとサプライヤーのロゴが入るのが一般的だった。今シーズンからは、エンブレムとサプライヤーロゴの上、左右2カ所にもスポンサーのロゴを掲出できることになった。

メキシコやブラジル、フランスなどではすでに一般化している鎖骨スポンサーは、選手名鑑の写真や試合中継で選手の顔がアップになるシーンで画角に写り込む可能性が高いため、ある意味、胸部分のスポンサーロゴより大きな広告効果が期待できる。クラブにとってもそれなりの契約料を確保できるため、両者にとってメリットが大きい広告と言えるだろう。

開幕時点で、J1では7チーム、J2では11チーム、J3では8チームが鎖骨スポンサーを掲出している。J1で最初に鎖骨スポンサー契約を結んだのは鹿島アントラーズだ。チームのオフィシャルスポンサーであり、フリマアプリ「メルカリ」を運営する『株式会社メルカリ』と契約し、左右の鎖骨部分に「mercari」のロゴが掲出されることとなった。契約金は明らかにされていないが、一部では「1億円前後」とも報じられている。

FC東京は『株式会社ミクシィ』と鎖骨スポンサー契約を結び、同社でエンターテインメント事業を展開する「XFLAGスタジオ」のロゴがユニフォームに掲出されることになった。メルカリやミクシィのようなインターネット事業とのスポンサー契約は、今後さらに増えることが予想される。

柏レイソルは柏市に本社を置く『三協フロンテア株式会社』と鎖骨スポンサー契約を結んだ。同社は日立柏サッカー場のネーミングライツも取得し、同スタジアムは今年から「三協フロンテア柏スタジアム」と呼ばれることに。鎖骨スポンサー契約を結んだことにより、柏は地元企業とのより強い結びつきをアピールできることになった。

ヴィッセル神戸とバルセロナの胸には同じロゴが

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これまでに挙げたチームは1社のロゴを片方、あるいは両方の鎖骨部分に掲出しているパターンだが、北海道コンサドーレ札幌と名古屋グランパスは2社と契約し、左右の鎖骨部分に別々のロゴが掲出されている。札幌は『株式会社F-Power』、『トーホウリゾート株式会社』と契約を結んだ。名古屋のユニフォームには『公益財団法人スペシャルオリンピックス日本』、『東海東京証券株式会社』のロゴが掲出されているが、『スペシャルオリンピックス日本』については、今年9月に愛知県内各所で開催される「スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・愛知」の認知向上、理解促進に向けて、名古屋が鎖骨広告スペースを貸し出す形となっている。

柏と『三協フロンテア』のように、地元企業と鎖骨スポンサー契約を結ぶケースは、J2、J3になるとより顕著になる。例えばJ2に復帰した栃木SCは、『トヨタウッドユーホーム株式会社』と鎖骨スポンサー契約を結んだ。同社はその社名が示すとおりトヨタグループに属しているが、宇都宮市に本拠を置く地元企業だ。レノファ山口が契約を結んだ『株式会社エクスジール』も、本社は山口県宇部市。J3のグルージャ盛岡は『医療法人敬星会 二宮内科クリニック』という地元の病院を掲出。長野パルセイロの鎖骨に入る『栗田病院』は、パルセイロレディースやプロ野球独立リーグ・信濃グランセロースの選手が勤務している。

これらの企業にとって、Jクラブのユニフォームにロゴが掲出されることは、知名度が一気にアップする大チャンスだ。例えばJ2ヴァンフォーレ甲府の胸スポンサーになっている『株式会社はくばく』は山梨県に本社を置く食品メーカーだが、「はくばく」という平仮名のインパクトも相まって、多くのJリーグファンがその存在を知っているはずだ。浦和レッズの胸スポンサーである『ポラス株式会社』も、何の企業かは分からないがロゴマークは知っている、という人は多いはずだ(実際のところは埼玉県越谷市に本社を置くハウスメーカー)。今回、新たに鎖骨スポンサーとなった企業も、1年後にはJリーグファンの間ではかなり浸透しているだろう。

甲府や浦和の胸スポンサーに触れたので、ここで各クラブの胸スポンサーの傾向も見ていこう。J1で大勢を占めるのは「前身・グループ企業」系だ。柏レイソルの『HITACHI』、FC東京の『LIFEVAL(東京ガスライフバル)』、横浜FMの『NISSAN』、川崎Fの『Fujitsu』、ジュビロ磐田の『YAMAHA』、名古屋の『TOYOTA』、ガンバ大阪の『Panasonic』、セレッソ大阪の『YANMAR』、ヴィッセル神戸の『Rakuten』、V・ファーレン長崎の『Japanet』は、すべてクラブの前身の企業や同じ企業グループのロゴであり、結びつきの強さをうかがわせるものだ。J2では大宮アルディージャの『NTT docomo』、徳島ヴォルティスの『POCARI SWEAT』などがこれに該当する。神戸とバルセロナの胸に同じスポンサーロゴが入っているというのは、ある意味すごいことだ。

次に多いのは、地元の有名企業と契約を結んでいるケースだ。札幌の『白い恋人(石屋製菓)』や京都サンガの『KYOCERA(京セラ)』は誰もが知るところだと思うが、ベガルタ仙台の『IRIS OHYAMA(アイリスオーヤマ)』は仙台市に、水戸ホーリーホックの『ケーズデンキ』は水戸市に、松本山雅の『EPSON』は松本市にほど近い長野県諏訪市に、アルビレックス新潟の『亀田製菓』は新潟市に、サンフレッチェ広島の『EDION』は広島県廿日市市にそれぞれ本社があり、全国区の知名度を誇る企業だ。

J2、J3のその他のクラブは地元企業と胸スポンサーの契約を結んでいるケースが多く、地域密着を掲げるJリーグの理念に則していると言えるだろう。J1、J2では全クラブが胸にスポンサーロゴを入れているが、J3を見るとY.S.C.C.横浜とカターレ富山は胸スポンサー不在の状況となっている。クラブ運営の安定化のためにも、ぜひともスポンサーを見つけてほしいものだ。

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池田敏明

著者プロフィール 池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。